神の戯言 弐
神の頂きとはなんだ
俺様の問いには誰も答えない。
この神々の遊戯とかなんとかの取り決めは大体わかった。
1 次代の主神格を決める代理戦争
2 代理人として、別次元や別世界で死んだ、若しくは それと同意義の人間が選別される
3 参加する候補者(神)は10神、代理人は1神につき3人迄
4 代理人にはそれぞれの神から、神に由来する加護が与えられ、さらに、特殊技能が1つ与えられる
5 めでたく優勝した神には【神の頂き】が与えられる
今まで聞いた話では、大体こんなもんか。
しかし、【神の頂き】これが引っかかる。
聞き慣れてないだけではない。
先程、俺様の背後からの声が言った単語。
言葉云々よりあの殺気交じりの声が印象に残ってる。
しかも、今この場に声の主はいない。
頂きということは、頂点になるということか?
次代の神となるのであればそれ自体が頂点であると言えるのてはないか。
改めて神の頂きと命名するのは何故だろうか。
特別な意味があるのだろう。
「誰か。知っているなら教えよ」
やはり誰も答えない。
意図的に無視されているのだろうか、ヘスティアも答えようとせず、頭を下げ顔も合わせないようにしている。
「おい…無視はひどいぞ…」
「黙れ!」
ドンっと机を叩き雷鳴が如く怒鳴り声が響く。
「矮小なこま風情が我々の域に踏み込むでないわ!」
声の主は先程ヘスティアを怒鳴った神である。
金色の髪を逆立て、威嚇する様は獣のようである。
身体の周りにバチバチと稲光のようなものが発現するに、雷神の類であろうか。
いや、そんなことより今コイツなんと言った?
矮小とな?
誰が?俺様のことか?
ほうほうほうほう…
三千世界にその名を轟かせ、世に一切の敵なし、万夫不当、不倶戴天の敵と恐れ慄かれたこの俺様が、言うに事欠いて矮小と
「生まれて数百年程度の弱小神が…モノの見方と口の利き方を知らんらしいなぁ」
一瞬にして場が凍りつくのを感じた。
全員の視線が集まる。
「なんだと?」
若い雷神がワナワナと身を震わせる?
「貴様、今…何と言った…」
言葉に明らかな怒気を含ませ詰め寄ってくる雷神。
俺様よりふた回り以上あると思われる身体をぐぐぃっと丸め見下ろしてくる。
顎を上げ、見上げる俺様と鼻先が触れ、今にも噛み付いてくるような迫力があったが、
「ほほぅ…若いくせに耳まで不能なのだなぁ…」
ことさらに癪に触る声音で、瞳に憐憫の情を含ませ、極めて挑発的な笑みを浮かべてやる。
視界の端に青ざめたヘスティアや、豆鉄砲喰らった鳩みたいな顔で固まる神々が見えたが、問題ない。
バチバチッと雷神の周りで稲光が弾ける。
「きっっさまぁぁぁっっ!!」
稲光を纏いつつ、丸めた身体の半身を仰け反らせ、振り上げた腕が丸太の如く膨張する。
この程度で激昂するとは、この世界の神は辛抱が足りんな。
「やめなさいタケミカヅチ!神自身が手を出しては資格を失うわ」
そう言って静止するは先程、ヘスティアを初めて嘲笑った金髪の女神である。
「神々の遊戯の掟。それを破るのは貴方の本意ではないはずよ」
女神の言葉に一瞬動きを止めるタケミカヅチと呼ばれた雷神。
意外と冷静なんだなあ。とか思ったりしたが、
「なんだ。女の犬か。情けない」
バチバチバチバチバチッッッ!!
爆発音にも似た轟音が轟き、タケミカヅチと呼ばれた神がその大柄な体躯を俺様目掛けて弾丸の如く勢いで迫ってきた。
余程頭にきたのか、全身に稲光を纏う様は荒ぶる雷神に相応しい姿であるな。
雷を纏った砲弾が迫って来る。
ヘスティアは、もう何というか、青ざめるというより土色の顔をして、もうダメだと何度も呟いていた。
ふと、着弾の瞬間手を前に出す。
「バカがぁ!そんなことで!」
タケミカヅチが叫ぶ。
そして、着弾。
俺様の身体が吹っ飛び、きりもみ回転しながら、何度も地面を跳ね飛んで行き、衝撃の余波がヘスティアをも巻き込んで、絶命………………………するはずないだろう。
「な!」
な!とか言ってるのは、俺様が両手でタケミカヅチの身体を掴んでいるからである。
目を見開いて信じられないと言った感じだろうか、タケミカヅチと呼ばれた雷神は元より他の神達も同じ表情している。
「どうしたぁ?」
俺様より何倍も膨れ上がった神が放った一撃を微動だにせず受け止める姿は異様映っているのだろう。
ヘスティアなんかは脳の処理が追いついていないのか、パクパクと魚みたいなことしているし。
「な、なぜだぁぁ!」
「わからんのか?貴様本当に神族か?」
吠える雷神に憐れみさえ覚えてきたな。
この程度のことが理解できんか。
「貴様、俺様の身体が小さいからと侮っていただろう?そもそも、この空間、神族や魔族にとって肉体的な力量より重要なことがあるだろうよ」
掴まれた身体を押したり引いたりしようとする雷神だが、そもそも俺様が掴んでいるのはコイツの肉体ではない、コイツを構成する精神体なのだ。
「だからといって…俺の…神の精神体を掴むなぞ、人間程度の魔力でぇ…」
フゥと溜め息が思わず出てしまう。
理解に乏しいのを相手にするのは疲れるな…ここは分かりやすいのが一番だな
「魔力感知が苦手かな?若造、その目にも映るようにしてやろう!」
ゴウッ!
俺様の身体から吹き出す魔力の奔流が轟音と共に溢れ出す。
抑えていた、いや、出す必要もなかったのだが、虚無に呑まれていなかった魔力の半分ほどの魔力だが、コイツらには十分だったな。
ほとんどの者が椅子や机にしがみついている。
奥に座っている2人は流石に別格か、険しい顔で此方を伺っているな。
動く気は無いのか?
「で、どうする?若造」
すっかり萎縮するタケミカヅチに我ながら意地の悪い問いかけをする。
先程まで威厳と畏怖の象徴のような姿はなく、小さく身を屈め、嵐に怯える子どものようだ。
「続きをやっても構わんが、さてさてどうしたものかなぁ」
いかんな。ついつい意地が悪くなってしまう。
性分みたいなものなので許してもらいたいものだ。
さて、どうこうするつもりはないが、随分と言いたい放題だった分を返して差し上げてもいいしな。
「おや?どうしたんだ、そんなに震えて」
いやはや、本当に我ながら大人げないな。
若者の安い挑発など軽く受け流せばよいとはわかっているのだが、生前から勘違いした輩や身の丈に合わない輩なんかを見ると無性におちょくりたくなったもんだ。
「どうした、今更になって力量の差に気付いたのか?神なんだろう。超上の存在なんだろう」
本当に悪い癖だ、どうしてもこう鼻っ柱の強そうなのを屈服させたくなる。
戦意喪失し、今にも泣きそうな顔をみるとこうなんと言うか…
「んんっっ?」張り合いのない奴だなぁ。それでも神か。自分より弱い者にしか威を示せんか」
「そこまでだよ。転生者くん。」
今にも泣きだしそうになっている若い雷神にトドめを刺してやろうとするのを遮るのは、先程の声。
そう、先刻ヘスティアと対話している折に聞いた声。
尋常でない圧力と共に聞いた声が、再び背後から聞こえた。




