神の戯言 壱
「神は何が得られる?」
疑問があった。
次代の神を決めること、つまりは世の理と為すと同義ではないか。
それを神自身ではなく、他人に委ねるなど到底承服できる話ではない。
ならば、このゲームが容認されるには何があるか。
「神はエゴの塊だし、排他的で悠久に身を置く存在であるが故に退屈を嫌う、そんな奴らが適当なもので納得いくかよ」
「…それは…」
言葉に詰まるヘスティアの反応を見れば何かあるのは容易に判断できる。
「周りくどいゲームはなんのためだ?そこまでして神が望むものはなんだ⁉︎」
「それは…」
「それは?」
「………」
「それはねぇ【神の頂】を得るためだよ、転生者くん」
背後で声がした。
ソッと俺様の首筋に冷たいモノが巻きつく。
尋常でない殺気と共に。
「!!!?」
突然のことで、声にならなかったが、背後の何かに向けて全力で拳を振るうが、既に何もいない。
ヘスティアに問いただそうと、視線を戻すと異様な光景が広がっていた。
先程まではただ、だだっ広い白い空間があっただけだったが、ほんの一瞬視線を外しただけで、白の空間は変容し、重厚で高級感たっぷりの椅子と長方形型の机が現れ、それぞれの席には老若男女様々な者達が座っていた。
ヘスティアは長方形の短い辺側に座っていたが、俯き身体を縮めている、天敵を前にした小動物みたいだ。
「オイ、落ちこぼれ」
長方形の長い辺に座っている者の内、1人の男が声を上げる。
野太く低い声は身体が揺れるように思えた。
実際にヘスティアは椅子から少し浮き上がったしな。
「ソレがお前の駒か」
男は続けて言い放つ、俺様を指差して。
「…ぁぁえぇっとぉ…ぉ」
どもるヘスティア。完全に萎縮してしまっている。
「ぇぇっとぉ駒と言いますかぁ、現在進行形で交渉してるって言いますかぁ…」
「ハッキリしゃべらんかぁ!」
「すいませんすいませんすいませんすいません」
けたたましい怒鳴り声を上げる男に低頭平身、ひたすらに頭を振り続けるヘスティア。
こんなオモチャあったな。
そのやり取りを見て他の者達は嘲笑を上げる。
その内の1人、怒鳴る男の対面に座る女が声をかける 。
「ダメょ弱いモノイジメしちゃあ。ねぇ」
ゆったりと優しい口調でヘスティアに声をかけるが、その実は口調ほど優しくはないな。
目が虫でも見るかのようだ。
クスクスと嘲笑に混じり、やれ、出来損ないだの、恥さらしだのといった声が聞こえるが、何故にヘスティアはここまでボロクソに言われるかな。
「ヘスティアよ」
ふと頭を下げるしかできない神の名が呼ばれる。
するとどうだ、今まで煩さかった嘲笑の類がピタリと収まる。
静寂が白の空間に広がり誰も言葉を発せなかった。
当の呼ばれた本人は全身から滝の汗を流し、地面とキスするぐらい顔面を下げながら、ひっひっと妙な息づかいで膠着していた。
誰も何も話さないのがどれくらい続いただろうか、いっそ誰かの頭を叩いてやったら空気変わるかな、とか考えていると、
「…ヘスティアよ…」
同じ声である。先程と違い少し疲れた、イヤ、呆れたような声音であった。
声の主は長机の先、ヘスティアの対面に位置する場所にあった。
おそらく上座に位置するのだろうから、少しは上の神族であるのかな。
上座には3つ席があり、人影は2つ。
向かって右側の席だけが空席となっていた。
声の主は中央に位置するところにいた。
黒髪のドレッドに紫色の肌、黒い大きな四つ目、端正な面持ちにも見えなくはないが、筋骨隆々な肉体に肩とは別に背中背中から伸びる丸太のような上腕4本が威圧感を与える。
「お前に課した期日よもや忘れておらぬだろうな」
「もももももモチロンです。ニュークリア様」
では、とニュークリアと呼ばれた紫色の神は言葉を繋げる。
「集まったのだな?神々の遊戯の選定者が」
ん?
「それはぁ…そのぉ…期日はあと18時間ほど余裕があったと記憶しておるのですが…」
「黙れ!出来損ないが!」
先程俺様を駒扱いした男が怒鳴り声を上げる。
本当にうるさいなコイツ。
「大した神威もなくこの席にあるのも忌々しい!貴様があるだけで誉れ高き選定が遅れているのを理解しておるのか!」
遅れ?
…なるほど。合点がいった。
つまりこのヘボ神が原因で神々の遊戯を始められないから非難轟々、ということか。
まぁなんともしょうもない。
「なあ少しいいか」
怒号と嘲笑が鳴り止み、一斉に俺様に視線が集まる。
ヘボ神が一斉攻撃される理由はある程度わかった。
しかし、俺様は疑問をそのままにしておけない性質なんだ。
「【神の頂き】とはなんだ?」




