魔王の気まぐれ 2
「まずは数々の御無礼をお赦しいただきたい。ヘスティア神」
恭しく頭を下げ、泣き腫らしグズグズの女神の前で跪いてみせる。
「御身に宿る広大で神々しい神気が、あまりにも大きく、私ごときではその神気に包まれ気づくことが遅れてしまいました。」
「さらに、御身がその力をあえて振るわずに、小さき神の末端を演じ、いらぬ喧騒を起こさぬ配慮には大海原が如く広大な母性と慈悲の心であると心得ております。」
「また、その頂の志に私、誠に感銘を受けますること相成りまして、微力ながら御身の使徒の末席に加えていただきたく存じ奉りますこと、ここにお願い致したく」
大きな声で仰々しく、大袈裟な身振り手振りを加え、さながら歌劇のごとく囀って見せる。
周囲の神たちの鳩が豆鉄砲喰らった表情、受肉してから何回見ただろうか…
置かれた状況が理解できず、正座のまま微動だにしない我が君に対して、こっそり頭突きをお見舞いする。
「…痛いよ」
額を抑えながら涙目で訴える我が君。
さっさと立つよう促し、耳打ちする。
呆けた顔をしていた、言われたセリフの意味をよくわかってない様子だ。
いいから言えと目で訴える。
ヘスティアに焦りの色が見えたが、長いこと続けられるものでもない。
ヘスティアの服の腕を掴み、腰を抱き寄せ、演舞を再会させる。
「あぁ、誉高き奇跡の女神よ。貴女の尊き神格にて、我が身を導きたもうたり」
「しからば恐れ多くも我が身、貴女様に捧げたり」
謁見する神々の間を時にワルツで、時にロンドで、時にサンバで。
激しく、静かに、高々と、流々と、軽快に、重厚に魅せて回って廻った。
そして、フィナーレ。
いつのまにかそこにあった、金色の玉座。
ヘスティア神は王が如き出立ちで、玉座に座す。
その御身を包む衣の裾をソッと手にし、跪いて口付けをする。
視線のみを上げ、様子を伺う。
「大義である。我が心願成就にその身をささげよ」
我が意を汲んだか、興奮しすぎて悦に入ったかはわからんが、とてもよろしい。
神の顔も様になってるではないか…
「……では、改めて。ヘスティア神の代理人としてか神々の遊戯に参加させてもらおうか」
さて、これから色々やらねばならんからな。
茶番はこれぐらいでよかろう。
「これで晴れて、候補者となり得たわけだ。さっさとはじめようではないか。」
悦に入るダメ神を置いて、呆然とする神々に向き直る。
これから詳しいルール説明的な流れだろうから、少しは話を聞いてやる素振りをしておかないとな。
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誰も話さない?どうした?
もしかして、もう始まっているのか?
いや、違うな。
これは、戸惑い?
「転生者よ。始めるとはどういうことだ。」
先ほどのドレッド神、ニュークリアだったか?重い声音を発した。
「どういうこととは?候補者が揃ったのだろう?ならばさっさと遊戯とやらを開始したらどうだ」
呆れたものだ、自分たちがここにいる理由も忘れたか。
しかし、俺様の言葉に答える者はおらず、変わりに神々の嘲笑が木霊した。
何がおかしいと、俺様の問いに神々が思い思いに口を開く。
「候補者は1人しかおらぬではないか」
「あと2人」「3人おらねば」「よもや、あの若輩者、最低限のルールも把握しておらなんだか」
「どうするどうする」「あと数刻で2人が集まるかな」
「奇跡の神だ。なんとかなるかもな」「祈ってみてわいかがかなぁ」
なるほど。
候補者の数が足らないと。
あと、2人を見つけてこいと。
なるほどなるほど……全くもってくだらんなぁ神というものは!
ネチネチネチネチと。
「もういいか?」




