王の終わり
はじめての創作です。
あぁ…ここまでか
力強く突き立てられた一撃を胸に、そんな事を考えていた。
「見事」
俺様は、身を預けるよう剣を突き立てる男に短く言う。
男は頭を上げ俺様と目が合う。
よく見知った顔である。
幼さの残る愛嬌がある面持ちで人に可愛がられる少年だ。
しかし、今はカチカチと歯を鳴らし、獣のように血走ってその面影はない。
「ぼ、僕は…」
「勇者よ。そしてその一行よ…」
少年、勇者が何か言いかけたが、知らん。
今は、この時は、俺様の舞台である。
胸の剣と共に勇者をグッと押し出す。
勇者はその場に力なく座り込む。
勇者の後方には10数名の人影。
先程まで死線を演じた勇者の一行である、各々武器を携え、未だ臨戦を解いてはいない。
しかしその表情は呆気にとられ、鳩が豆鉄砲食らったような面だ。
信じられないと言ったところか?情けない
しかし…
「見事である。若き勇者、英傑よ!」
胸の傷から血が止まらない。
痛みもあるが、知らぬ!
「誇れ!胸を張れ!勝ち鬨を上げよ!貴様らは今、時代に終止符を穿ったのだ!」
身体の内から血が逆流し、口から出るの堪え、出来るだけ高らかに叫ぶ。
頭が痛い、膝が笑い、足元がおぼつかない、演舞でもするかのように大仰に腕を振れば、痛みも紛らわせるかと思ったが、それほど効果はないようだな…
「数多の勇者が成し得なかった大魔王討伐…その先に何を得て、何を見るか」
全身を刺す痛みが次第に収まっていく。
流れ出る多量の血が床一面に広がったかたと思うと、力も抜けていく。
…まだだ!!
ドサッと玉座に腰掛けた時には、衝撃で気を失いそうになったが、立っている時よりは少しは楽になった。
「これで終わりではないぞ…俺様を…魔王の屍を超え次なる道標に歩みだせ」
どいつもこいつも、なんて顔をしている。
目の前にいる者たち、歴戦の戦士なんかではない。
先の勇者と同様あどけなさの残る少年少女たちである。
そのほとんどが頬に涙を流し、泣きじゃくる者や、その場に座り込む者もいた。
しかし、全員が俺様を見ている。
俺様の、大魔王の最後を…
「その身に降りかかる全ての困難、罪悪を振り払い、自身の信を刻んで進め!」
玉座に身を預け、胸を張って出来るだけ、本当に出来るだけ自身を大きく見せろ。
目が霞む。
あと少し、まだ言いたいことはあるが、ここまでだ。最後はどうする?
断末魔でも恨みの呪文でも奏でようか?
いや、これだな…
「…さらばだ!」
短く言った、これでもかという、笑みを浮かべて。
その直後、身体が崩れたのだろう。
視界が一気に消え、身体の感覚も失せた。
俺様の高笑いでよく分からなかったが、あいつら何か言っていたな。
…よく聞こえなかったが、大したことではない。
永らく続いた俺様の覇道も潰えた。
あとはこのまま無に帰えろう。
まあ、ソコソコに充実した一生であった。
戦いと喧騒の人生?の後に、漂いながら消えていくのもオツなものだ。
視界は無くなったが、スッと目を閉じるように闇に精神を委ねる。
あとは塵芥が霧散する如く消えゆくのを待つだけ。




