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プロローグ カオスなパーティ

 夜の酒場は騒がしい。


「あーらヤダ奥さん!オーホホホホ!」


 おばさんっぽい会話が聞こえる。


「やぁ!そこの可愛い仔猫ちゃん☆今から僕とスッウィートでクウゥーーールな夜を過ごさなーい?」


 ちょっと何言ってるか分かんない声もする。


「お前らちゃんと話聞けよ⋯⋯」


 呆れた声もする。


 そして俺。


「帰りたい⋯⋯」


 因みにこれ全部、うちのパーティのメンバーだ。




 ☆




 勇者。

 それが俺たちの職業だ。

 強大な力を持つもの達。それは世界でも有数で、今いる俺も含めてこの五人。そして世界を旅して更に仲間を増やし、最終的には魔王を倒すことが最終目標。


 なんだけど⋯⋯


「なんなんだこの纏まりの無さは⋯⋯」

「いつも通りなんだけどな」

「リネ」


 苦笑しながら話しかけてきたのはリネ=レミグランス。髪を動きやすく束ね、端正に整った顔立ちをした、


「リネ、今日も男前だな」

「アユム、もう一回言ったら殺すからな?」


 女の子である。

 何故こんなに怒っているかというと、本人は可愛い喋り方に可愛い髪をしたいと思っているからだ。


「ははは、オーイ、皆集合!」

「今話そらしただろ?」


 リネがムスッとした顔を近づけてくる。いくら男っぽいとはいえ、近くで見るとやっぱり可愛い普通の女の子だ、と思ってしまう。


「ん?なんだ、顔が赤いぞ?」

「ははは、そのイケメンな顔に嫉妬してしまったのか「灼熱(ファイアー)」かとが燃えるように痛いいいぃぃぃ!!」

「ふん、⋯⋯いい気味だ」

「うぅ⋯⋯」


 リネに魔法をかかとにぶつけられた。痛い。


「あらん、どーしたのん?」

「ゴリウス。リネにまたやられたんだよ⋯⋯」

「あら、アユムちゃん、そんな呼び方ダ、メ、ヨ☆ちゃーんとリッちゃんって呼んでくれないと。寂しくなっちゃうわよん☆」

「お、おう。すまないリッちゃん⋯⋯」

「分かればいーのよん☆そうそう、リネちゃんもダメよ?次にアユムちゃんをいじめたりしたらチューしちゃうからねん☆」


 ゾゾゾ、とリネに鳥肌が立のが分かった。

 ゴリウス=タロス。リネとは逆で、見ての通りオカマだ。しかもゴリマッチョの。自称チャームポイントは、頭の上でモッサモサしたアフロらしい。ところで、男のような女の子と女のような男がチューをする、というのは絵柄的にどうなんだろうか。個人的にはあまりしてほしくは無いけど。


「そ、それで、カイは?」


 リネが冷や汗を足らしたまま、さっきの俺のように話を変える。

 自分のことは棚に上げるスタイル⋯⋯はっきり言って共感が持てる。


「カイならほら、また女の子を口説いてるわよん」


 ゴリウスが指差した方向を見ると、カイ―――カイ=ラフォイが女の子に何か喋りかけているのが分かる。


「ねーねー、別にいいでしょー?ちょこっとだけ、ホントちょこっとだけでいいから僕とデートしようよ、ね?」

「カイ、もうその辺でやめとけよ。また昔みたいに殴られるぞ」


 リネが注意すると、カイは渋々諦める。カイは、美男子だ。髪は金、背はスラッと高く、黙っていればカッコいい。


 そう、黙ってさえいれば。

 昔、カイとリネが初めて出会った頃。リネはその時たまたま髪をおろしていた。それでカイはリネを女だと認識し、「ヘイヘェーイそこの彼女ぉ!」と言った後、「ちょっと僕とお茶しならぶごふぁっっっ!!」と言いながら殴り飛ばされていた。いやー、リネは身体能力も高いなー(棒)と思ったものだ。


 それはさておき。


「よし、皆揃ったな?では、作戦会議を始める」

「ちょっとちょっと!女の子逃げていっちゃったじゃん!あともうちょっとでオトせそ「カイ、黙れ」⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯アユムはカイに厳しいな」

「あらん、カイちゃんの方がモテモテだから嫉妬してるんじゃないの?」

「あ、なるほどね」


 何を言うか。そんな気持ちは1/500000000くらいしかないぞ。


「ゴフンゲフンッ!⋯⋯先週、西の都オーボエに勇者の力を持つものが現れたらしい」

「話変えたわね」

「変えたな」

「アユム、すまないねー。ボクの方がほら、顔が整っちゃってるか「黙れカイ」⋯⋯⋯」

「それで、今回はどんな事件があったのかしらん?」

「あぁ。なんでも、食べ物が町から消えていくらしい」

「食べ物?」

「そう、食べ物だ。露店、酒場、食べ歩き⋯⋯さまざまな所から食べ物が幻のように消えるらしい。それも、甘い物に限り、だ」

「ふむ。つまりはその泥棒を捕まえて私たちの仲間に引き入れようってことだな?」

「その通り。仲間を増やすのは俺達の目的の1つでもあるからな」

「またキャラの濃い仲間が増えそうねん☆」

「「「お前が言うな!」」」


 俺、リネ、カイの三人でツッコむ。もしリッちゃんよりキャラの濃い仲間がまた増えたらカオスとかそんな次元じゃ無くなるだろう。それだけは絶対に避けたい。


「夜に出現するってことは、今から行けばすぐに会えるんじゃない?さっすがボク。やっぱり頭が冴えて「⋯⋯」⋯⋯」

「じゃあ、早速移動するか。皆こっちに来い。⋯⋯『ワープ:テレポートの窓』!」


 リネが呪文を唱えた瞬間、四角い空間が俺達の目の前に浮かび上がった。そこを覗くと、この酒場とは違う景色が見えている。

 さっきも使っていたが、リネは魔法使いだ。勇者だから使えるというわけではない。一般人でも使える。けど、俺達勇者はとある『呪い』を受けたことで、それぞれの力が上がっているのだ。


 呪い。それには軽い呪いや、重い呪いがある。その呪いの種類も様々で、軽い呪いなら髪の毛が赤くなったり、重い呪いだと右手を失うなんてこともある。

 因みにリネの呪いは軽い方で、『自分で可愛い態度や格好が出来ない』、だ。

 自分でリボンやモコモコの服を着ようとすると、手が拒絶反応を起こすらしい。

 だからいつも男っぽい服を着ているというわけだ。


 しかし、美人が男装。 ⋯⋯嫌いじゃない。


 因みに他の人が協力して可愛い服を着せてあげるというのは大丈夫らしい。呪い、ナイスじゃないっすか。

 ⋯⋯。


「アユム、何をニヤニヤした後急にしょげてるんだ?置いていくぞ?」

「あ、あぁ、ゴメンゴメン」


 見ると、リっちゃんとカイはもう窓から転移しているようだった。

 テレポートの窓に手をかけながらもう一度、リネを見る。


「男装⋯⋯プラスで巨乳属性もついてたらn「殺ぉす!!」」


 リネがテレポートの窓と2重で爆発魔法を展開した瞬間、俺は転移した。


 ⋯⋯酒場、消し飛んだりしてないよな?



 ☆



「ずびばぜぇんでじだぁ」

「次、私の体について何かいじってみろ?『ピー』を『自主規制』して『自重中』の後『ピーーーーー!!』、だからな?」

「ばい、ずびばぜぇんでじだぁ」


 俺が転移した後遅れてやってきたリネは、拘束魔法で俺を縛り上げた後、気がすむまでボコボコにしてきた。まったく、自分の胸をいじられたからってそんなに怒ることないじゃないか。


「⋯⋯ばか」

「ん?何か行ったか?」


 リネが何か呟いたみたいだが、俺にはよく聞き取れなかった。

 代わりにリっちゃんとカイがニヤニヤしていた。なんだこいつらは。人がボコボコにされているのを楽しむようなSなのか?そっちがそう来るなら俺も新しい性癖に目覚めちゃうぞ?


「まあ、それはともかく。ここがオーボエね。綺麗な町ね」

「ああ、そうだな」


 辺りと見渡すと、街灯が灯っていた。道は石畳で出来ており、どことなくお洒落な雰囲気だ。


「じゃあまずは情報収集だな。班分けはいつも道理でいいだろう。俺とリネ、リっちゃんとカイだ」

「えー、またボクがゴリ「ジロッ」っちゃんとでヨカッター、ウレシイナー」


 カイの文句が一瞬でリっちゃんに抑えられた。

 ⋯⋯素のリっちゃん。たまに出るけどかなり恐い。


「じゃあ、散策開始だ。まずは聞き込み。そして目的の人物ともし接触できればそのままスカウトだ。解散!」


 こうして俺達は、新たな仲間を探しに行くのだった。


 ⋯⋯これがまた、俺達に新たな問題を増やすことになるとは知らずに。

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