夢遊病
誰もいない静かな学校。
そのとある廊下に響いた言葉。
「夢遊病」
直緒ははっきりそう呟いた。
でも、僕はその言葉の意味が分からなかった。
初めて耳にする言葉だった。
「夢」に「遊ぶ」「病」と書いて「夢遊病」。
直緒は、両親ともに医者で病院を経営している。
そのため、親からは当然のことながら後継ぎをするよう言われているため、予備校にも通っている。
そんな知識豊富な直緒が発する言葉で、僕が理解できないものは今までいくつかあったが、漢字や文字の配列などを見れば、だいたいその言葉の意味が分かった。
しかし、今回は本当に分からない。
まったく想像がつかない。
夢遊病。
ただ、自分が病気であるということしか読み取れなかった。
反応に困って何も言えずにいると、直緒が先に口を開いた。
「お前、さっきの授業中、寝てただろ。俺、見てたんだ。お前が寝てるところ。起こそうかなとも思ったけど、お前、あんまり気持ちよさそうに寝てるから。」
直緒は少し笑みをこぼしてそう言った。
そして、すぐに真顔になって僕を真っ直ぐ見て言った。
「でも、次の瞬間、お前急に立ち上がったんだ。そして突然歩き始めた。どこに行くかと思えば、お前は教室の扉を不器用に開けて教室を出て行こうとしたんだ。そこで、先生はあわててお前を引っ張って机に戻した。そして、教科書で頭を1回叩いた。」
「あぁ、あのとき頭に衝撃を感じたのは先生に叩かれたからか、、って、え!?僕が、急に立って歩き出したって、、え!?」
僕はあまりの衝撃の事実に直緒の話の途中で驚きを隠せず発狂してしまった。
呆れた顔の直緒が1回溜息をつき、また口を開く。
「春、落ち着け。夢遊病なんて大した病気じゃないんだ。ただ寝てる間に変なことをしちゃうってだけだよ。」
直緒が僕を落ち着かせるようにそう言い聞かせる。
変なことって、、
しかも記憶がないとか最悪すぎるだろ。
黒歴史を製造する病気じゃないか。
こんなんじゃろくに睡眠もできないのか
よ、、
あれ、僕、そのあと保健室で寝た、よな。
もしかして、結城先生と玲那が心配そうな顔をしてたのは、僕が寝ている間になにかしたってこと、、?
「ごめん、直緒。用事思い出したから今日部活行けない!結にも伝えておいて!」
確かめずにはいられなかった。
僕がもし、寝ていた間になにかしていたとしたら、、。
嫌気がさした。
階段を一段とばしで駆け下りる。
窓の外は桃色に染まっていた。
夕焼けに染まる寸前のその色は、優しい色をしていたが、どこか寂しく物足りない感じもした。
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