クラスメイト
そこにはショートボブの少女がいた。彼女が横になっていたせいか、最初は髪は長いように見えた。しかし、僕に気づいた彼女は体を起こして初めて肩につくかつかないかぐらいの髪の長さだと分かった。彼女は少し長めの前髪の隙間から覗くようにこちらを見つめていた。透き通った薄茶色の瞳。とても美しかった。
「あの、結城先生いらっしゃいますか?」
僕は恐る恐る彼女に問いかけた。
結城先生とは保健室の先生だ。
「ゆうちゃんなら、今は職員室にいますよ?もう少ししたら戻ってくると思うので、こっちで座って待ってて下さい」
彼女はにっこり微笑んでそう答えた。
「ゆうちゃん、、、?」
思わず、声に出して言ってしまった。初めて聞く名前に戸惑ってしまったのだ。
「あ!ごめんなさい!結城先生のことです!“ゆうき”の最初の2文字を取って“ゆうちゃん”!なかなかネーミングセンスいいでしょー?」
彼女はそう言って得意げな表情ではにかんで見せた。
最初はおとなしい子のイメージが強かったけど、どうやらそうではないらしい。
とりあえず、彼女の言う通り目の前にあった椅子に座って待つことにした。
「ねぇねぇ、キミ何年生?」
ぼーっとして座っていると、彼女が近づいてきてそう問いかけた。
「2年生です」
僕はそっけなくそう答えた。
「え!じゃあ私と同級生だね!あ、じゃあもしかしてクラス3組だったりするー?」
あれ、同級生なのか。にしては、初めて見る顔だけど。
「そうだよ、3組」
また、彼女の目を見ないでつぶやくように答える。
「おおお!じゃあ、クラスメイトだぁ!実は私、2年3組の春風 玲那って言います。保健室通いだけど一応3組の生徒ってことになってます。」
彼女は驚いたような反応をするたび、自己紹介を始めた。少し緊張したのか、頬を赤らめているのが分かった。
「僕は、水瀬 春。よろしく。」
一応僕も続いて自己紹介をした。
「うん。よろしくね、春くん!私のことは気軽に玲那って呼んでいいからねっ!」
彼女はそう言ってにこっと笑ってみせた。
まるで僕の名前を最初から知っていたかのように、彼女は僕の自己紹介を耳を通して耳から出しているように見えた。
保健室通い。
それをしている子がクラスにいることは知っていた。
でも、その子が、こんな明るい子だとは思わなかった。
この子なら、玲那なら普通にクラスに馴染めるだろうに。
どうして、保健室通いなのだろう。
その時僕は、本当の玲那を知らなかった。
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