夢
「春!」
誰かが僕の名前を呼ぶのが聞こえた。すると、次の瞬間頭に衝撃が走った。びっくりして、体を起こすと目の前にはあきれるような視線をこちらに向けている先生の顔があった。
「春、お前、夢でも見るほど熟睡してたのか?気分が悪いなら保健室に行ってもいいんだぞ」
先生は少し嘲笑ったような顔をしてそう言った。周りではかすかな笑い声が聞こえた。
確かに、少し頭がぼーっとする、ような気がする。多分、変な体勢で居眠りしてしまっていたからだろうけど。一応、このままじゃ授業に集中できそうもない。ということで、先生に断りを入れて保健室に行くことにした。
先生は少し驚いたような顔をしていた。多分、まさか本当に僕が体調が悪かったなど思ってもなかったのだろう。
そういえば、さっき、先生は僕に「夢でも見るほど」と言った。まさか、僕は寝言でも呟いていたのだろうか?だとしたら、恥ずかしい。恥ずかしすぎる。一瞬で自分の黒歴史に追加されてしまう。こんなくだらない記憶、消えてしまえばいいのに。
でも、夢を見ていなかったのかと言われるとそうとも言えない。
多分、僕は夢を見ていた。屋上から踏み場のない空気中に足を踏み入れたあの感覚。そして、今でも鮮明に思い出せるほど美しかった夕焼け色に染まる夜光雲の景色。この両方がまるで現実だったかのような夢を僕は見た。
なぜそんな夢を見たかは分からない。
でも、夢の中の自分は過去の記憶がないみたいだった。少し曖昧だが、夢の中の自分はどこか空っぽだった。
そんな夢を思い出しているうちに、保健室の前に着いた。
扉を開けると、そこには美しい黒髪の少女が横になっていた。
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