プロローグ
夢の中だけで生きられたらいいのに、と思う時がある。いや、毎日思ってる。今だって、授業なんて上の空だ。
「夢」
それは僕たちが眠っている間に事実にない事象の感覚を起こすこと。
夢は自身の願望や欲求が現れると言われている。
だから、非現実的な夢を見たときは、自身の願望や欲求が入り混じって夢に現れたということになるのだろう。
猫と一緒に大きなパフェを食べたり、魔法の力で空を飛び回ったり。
夢の世界は無限大だ。
でも、そんな無限の可能性を持った夢にさえも欠点がある。
それは、夢から覚めてしまうとその記憶は曖昧になり、時間が経つにつれて記憶が薄れていくということだ。
自分の願望や欲求で作り出した世界はいつまでも続くわけではなく、その記憶ははっきりと覚えておくことはできない。
また、夢を自ら造ることはできないということも欠点である。
僕たちは、その日にどんな夢を見るかを決めることはできない。ましてや、夢を見ることもできないかもしれない。これらのことは自分自身では決められない。
つまり、二度と同じ夢を見ることはできないのだ。
一度創り出された夢の世界。
それは一夜限りのものであり、上書き保存をしてゲームのようにストーリーを進めていくことはできない。
夢の世界。
それは、ゲームのような世界。
でも、そのゲームは毎日リセットされ、その記憶は毎日薄れていく。
また、夢はどこからが夢なのかがはっきりしていない。
夢。
自身の願望や欲求が事実になる。
とても都合のよいもの。
だからこそ、記憶が曖昧になってしまうのかもしれない。
とても良いものだからこそ、とても嫌な代償がついてくるのだろう。
ーーそれは、キミが僕を愛してくれたから、キミが死んでしまうように。ーー
この現実を、この未来を知った僕は、どうすればいいのか。
「未来は変えられる」
そんな馬鹿げた言葉が現実になってしまう世界が、この世に存在すると知ったあの日から、自分がこの世界に生きている理由を見失ってしまった。
過去の思い出を忘れてしまう、見たくない未来が見えてしまう最悪な世界。こんな世界なんて捨ててしまえばいい。
そう思うと、体の動きを止められなかった。気付いたら、屋上にいた。日が降りてきて空が赤色に染まる。とても綺麗だった。まるでその景色を初めて見るかのように感動が込み上げてきた。でも、きっとこの景色も僕は過去に何回も見ているのだろう。記憶にないだけで、僕はこの美しさを何回も目に焼き付けていたのだろう。そんなことを思うたびに、虚しい気持ちになった。
僕は柵を乗り越えて片足を前に出した。同時に体を前に倒す。
すると、自分の体は重力に押されるようにして、下へと降りていった。
その時間があまりにも長かったせいか、自分は空を飛んでいるんじゃないかとも思った。
でも、夕焼け色の空に広がる夜光雲が遠ざかっているのを見て、自分はもうすぐ死ぬのだと確信した。
来世は未来よりも、過去の思い出を大切にできる世界に生まれたいなぁ。
そんなことを思いながら、目を閉じて僕は長い眠りについた。
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