残紅太夫(ユウベニダユウ)
なんとなく、ノリで読んで下さい。
初花を迎えた私に、おさらば致しました。
生温い雨垂れは、
とろりとろりと、紅白に…。
雌なりや!
雌なりや!
こつぼはじくじく痛むばかりで。
雄よきやれ!
雄よきやれ!
嗚呼、ほんに煩し煩わしや。
「太夫や、今日からお前さんは●●と名乗りませ」
禿は揃ってわっちに、笑う。
旦那は陽気に
女房は不遜に
数多の新造は憎々しく。
成ったばかりの痛みがきやる。
茜のあちらを見るたびに、頭のなかでは喧騒三昧。
盛りが過ぎ、妾にやつした年増だというのに。
まだ
残るのはあの日の色とは、皮肉だこと。
残照。
残響。
残暑。
暫定。
それから
それからなんだろう。
あのひのあかはなんという。
わたしのなまえは。
そうか
そうか
そうなのか。
手代が書いたあの字は、
私の…
「これは残紅と書いてゆうべにと読むそうだよ」
べったりと張り付くその名前。
なんて名前をつけやがる。
悪態ついても今更よな。
この赤はきっともう。
今更なんだろう。
あの日を忘れぬ私に、裂けた私に、流れる血は…
終わりに必ず押し付ける。
わっちの名前は残紅。
擦れた女の残りかすで御座います。