奇跡?
そうして月日は過ぎ、私たちは高校生になった。
「和葉見て…!クラス一緒だよ!!」
「ほ、ほんとだ…奇跡だ…」
3クラスしかなかった中学の頃とは違い、高校では8クラス。
「休み時間遊びに行くね」なんて言いながらどんよりとした気持ちでクラス表を見たら一転、一気に色んな緊張が吹き飛んでしまった。
「これでもう高校生活は安泰だ…!!」
「大げさだなあ綾瀬は」
「人がせっかく素直になってるってのに!!」
いつものように他愛もない会話を交わしながら、入学式の会場、体育館へと向かう。
「新入生の皆さん、ご入学、おめでとうございます。今日のこの良き日に…」……
入学式を終え、綾瀬と共に教室に入ると、知らない風景、知らない顔…当たり前だけど、そこは知らないもので溢れていた。
「和葉、席どこ?私あそこの前から3番目っぽい」
「…げ、一番前…」
流石に席まで近く、というほど神様は甘くないようだ…。
とりあえず席まで行って、荷物を置く。置いて、またすぐ綾瀬のところに行こうとすると、
「あ、ねえ、俺の席どこかわかる?飯岡潤なんだけど…」
白くて綺麗な男子が話しかけてきた。
「座席表なら、黒板に貼ってあるよ。」
と言って黒板の方を指差すと、
「えっうそ?…うわー、ごめん、ありがとう!」
謝罪と感謝を同時に述べると、黒板の方へ行って、すぐ戻ってきて、
ドンッ
私の隣の机に荷物を置いた。
「まさかの出席番号1番…。…改めて、俺飯岡潤。よろしく!」
「私は笠井和葉。よろしくね、飯岡君。」
もう友達(?)出来た〜!!とか考えていると、
「和葉どうしよう…全然知ってる人とかいない…」
ちょうど綾瀬が来たので、
「飯岡君。これ私の友達!」
綾瀬の腕を引き、飯岡君に紹介する。
「これて和葉。水野綾瀬です。よろしく、いおかくん?」
「いいおか。飯岡潤。よろしく水野さん!」
もう2人も友達できちゃったよ、と嬉しそうな飯岡君。いい人そうで、綾瀬と笑っていると、私の横を、見た事のある人が通り過ぎた。
「あれ…いまのって…」
キーンコーンカーンコーン…
思い出そうとしていると、チャイムが鳴った。鳴り終わると、ドアが開き、綺麗な女の先生が入ってきて、みんなそれぞれ席につく。
「私が1年間、この1年2組を担当する、日高紫です。よろしくね!」
と簡単な挨拶をし、
「じゃあとりあえず…自己紹介、しよっか!」
と、笑顔でいうと、
「「「えーーーー」」」
小さな声が、たくさん聞こえた。
「はいはい。じゃあ1番飯岡君から。前に出てどうぞ!」
「だからやなんだよなぁ1番……。」
そうぼやきながら教卓の前に立つと、
「南中出身、飯岡潤です。部活はバスケ部入ります!……えっと、よろしくお願いします。」
何気にあっさりと自己紹介をこなす。
パチパチパチ……
「一中出身、稲葉春香です。」………
順番に自己紹介は終わっていき、いよいよ私の前の人の番になる。
その人は私の横を通り過ぎて、教卓の前で止まり、振り返る。
その顔は……
「西中出身、大山稜介です。趣味はバスケで、特技もバスケです。部活もバスケ入ろうと思ってます。よろしくお願いします!!」
あの、『4番』だった。




