出会い。
「…はぁ?」
今の自分がどんな顔をしているのか大体分かる。きっと思い切り眉間にシワがよって、怪訝な顔をしているに違いない。
いくら貴族といっても、人を不快にしていい事など無いのだ、決して。
(まぁ、純粋に驚いてるだけなんだろうけど)
私の「なんだコイツ」という態度が伝わったのか、叫んだ奴の隣に座っている人が未だに指をさしているその腕を掴み、下に降ろしつつ口を開く。
「こらメテオ、人に向かって指をさしてはダメだよ。ほら、謝って。それから、貴族らしくもう少し落ち着いてね。僕らの態度は家の評判に直接関わってくるからね」
「あ、ごめん!つい!女の子なんて珍しくて!」
「君も、メテオがごめんね。悪気は無いんだ、許してくれるかな」
「あ、こちらこそごめんなさい…?」
「ねぇ、君!いつまでもそこに立ってないでこっちに来て一緒に座ろうよ!」
貴族がどうのと説教をしていた部分をまるっと無視して、わざわざ扉の前に突っ立っている私の目の前まで来る。
そして、私の手を引き、唯一空いていた場所に誘導される。
「はい、ここ座って!」
半ば強引に座らされ、その人自身は先程まで自分が座っていた場所に腰を下ろした。
座ったは良いが、何となく居心地が悪い。
その一番の原因は絶対、目の前に座ってこちらをキラキラとした眼差しで見つめてくる少年だ。赤い髪とは反対の青い瞳をこれでもかというほど輝かせている。
(犬っぽい…)
心なしか耳と尻尾が見える気がする。
そして、赤髪の彼はガン無視してるけど、横に座っている金髪のおかっぱ頭の人が、いきなり人の手を引っ張るのは良くない事だ、とか他にも色々注意をしている。
好奇心いっぱいの目から逃げて横を向く。
そこには、私が部屋に入って来てから一言も喋らず、我関せずな様子を貫いているもう一人の金髪が居る。その髪が光を受けて、キラキラと反射している。
(金っていうか…プラチナブロンドっていうんだっけ?)
目の前が割と騒がしいというのに全く気にせずテーブルに置いてあるお菓子を食べ、紅茶を飲んでいる。マイペースなのだろうか。
白金色の髪のせいなのか、その人の存在自体のせいかは分からないけれど、とにかく眩しくて目に毒なので、行き場を失った目線は自然と下へ下がる。
目に付いたのは、横の人も食べてるテーブルのお菓子の山。
どれもこれも高級品感が漂っている。
甘い匂いを嗅いで、そう言えば朝家を出てくる前にパンを食べたきりだったのを思い出す。途端にお腹が空いてきた。
(食べて良いのかな…)
手に取ろうか悩んでいると、赤髪ついに話しかけて来た。
「ねえ!この部屋に通されたって事は、魔力が高いんだよね!女の子で魔力が高いのって結構珍しいよね!君名前は!?」
「……えーっと?」
「メテオ、落ち着きなさいってさっきも言ったよ」
「ごめん!でもどうしても気になって!ノアも気になるでしょ?」
「そうだね、確かに珍しいし気にはなるけど…」
「だよね!だから君!名前、教えて?」
思い切り目を輝かせ、身を乗り出しながら赤髪聞いて来た。
(やっぱり犬みたい)
乗り出された分、体を引きながらそう思った。