二次試験へ。
「校門から校舎までが遠い…!」
所々に案内表示がある。それに従って歩いているが、未だに校舎が遠く見える。かれこれもう十分近く歩いているというのに。
そして更に十分。
漸く昇降口と思われる所まで辿り着いた。
中に入ると「二次試験待合室はこちら」と矢印付きで表示されているモニターがあった。
それに沿って行こうとすると、正面にあった階段から降りてきた人に声を掛けられた。
「試験番号、三-五八は貴女ですか?」
「はい、そうですけど…」
(校門でのやつ、怒られるか…?)
「では私に着いてきて下さい。待合室へ案内します」
「分かりました…」
あの案内モニターは一体なんの為に有るのだろうかと疑問に思ったが、粗相をして失格になるのも嫌なので、大人しく着いていく事にする。
そしてどうやら校門でのことは不問らしい。こちらとしてはありがたいが。
(きっともう試験は始まっているに違いない)
手すりにまで細やかな装飾が施されている、緩やかな螺旋階段を登る。足元には廊下にもそうだったが、赤い絨毯が敷いてある。ふかふかで、埃一つ見当たらない。
掃除が面倒そうだと場違いなことを思っていると、やがて二階のとある一室の前で案内人が止まった。きっと何かの授業で使うのだろうが、扉は大きく、その扉自体も、取手も豪華なものだった。
(これが金持ち学校か!!)
「次の試験までは一時間程ありますので、こちらの部屋でお待ち下さい」
「はい、分かりました」
それだけ言って案内人は一礼し、背を向けて去って行った。
それを確認し、扉に向き直る。
一度深く深呼吸をして取手に手をかけて、ゆっくりと開ける。
中には、貴族らしき人物が三人居た。
向かい合うように、高そうなソファに座っている。
煌びやかなその雰囲気に圧倒され、開けたままの扉を支えながら放心していると、貴族の一人がこちらに気付いた。
手に持っていた高そうなお菓子を床に落とす。隣に座っている人に注意されているようだが、耳に入っていないらしい。その視線はこちらを捉えたまま動かない。
大きな目を更に見開き、激しく動揺しているのか膝をテーブルに勢い良くぶつけながら立ち上がった。
物凄く痛そうな音がした。実際、立ち上がった本人も痛みで膝を抱えて再びソファに沈んで悶えている。
お菓子を拾っていた隣の人が呆れを全面に押し出した目でその様子を見ていた。
ある程度痛みが収まったのか、改めて今度は膝をぶつけない様に注意しながら立ち上がり、そして私に向かって指をさしてこう叫んだ。
「女の子が居る!!」
その言葉に、叫んだ奴の隣に座っていた人と、こちらに背を向けて座っていた人がゆっくりと振り返った。
三対のそれぞれの感情を乗せた目が私を捉えたのだった。