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王子様と村人D  作者: 十束万里
13/23

いざ、学院へ。

 「お帰りなさい!試験どうだった!?合格した!?」

「あ、うん。合格したよ」

 (あれ、てっきり怒られると思ったんだけどな。試験官吹っ飛ばしたってまだ知らないのかな…?)


 「おめでとうー!今日の夕飯は腕によりをかけて作るわ!」

「ありがとう、楽しみ!」


 店を閉め、合格祝いという名の豪華な夕飯を食べ終え、ソファで寛いでいると、父に呼ばれた。

 (遂に来たか!)


 再び食卓の席へ着くと、いつもはニコニコしている母も今回ばかりは、とても真面目な顔をしていた。学校を受験してみたらと言った時の比じゃない程には。


 「カイルさんから聞いたわ、試験場での事。一歩間違えたら大惨事だったわね。怖かった?」

「…びっくりした」

「そうよね。私も、まさかそこまでとは思ってなかったの。今回の事は、私達の責任でもあるわ。しっかりと魔力調整の仕方を教えて来なかったから」

「魔力調整?」

「そう。練習すればこの魔法にはこれくらいかなーって感じで魔力を自分で調整出来るようになるの。調整した量によって、威力が違ったりするからとても大事な事なんだけど…」

「…皆出来るの?」

「そうね、練習すれば!」

「…ただ、リズの場合は元々の魔力量が多いのと、来月にはもう学院に入学してしまうから、練習期間は限られてくる」

「でも、このまま出来なかったらまた今日みたいになるかもしれないよね」

「…そうね」

「じゃあやるしかないよね!どうやるの?」

「そういうのは私よりもカイルさんの方が良いわ!」


 こうして、入学までの残りの期間、父カイルに魔力調整の仕方を教わる事になった。

 私と同じ年齢の子どもが出来る程度には仕上げてからいかないと、このままではまずい。

 どの世界でも、自分と違う人間は遠巻きにされがちだ。

 つまり、強過ぎる力もまた、はぶられる対象になりかねない。

 (子どもは純粋が故に、残酷だからなぁ…)


 最初は皆仲良くしてくれるけど、少し違うと感じれば一方的に離れて行くから。

 …この世界でも一人は嫌だ。



 それからは、父による怒涛の魔力調整講座が始まった。

 前世で母に隠れてやっていたゲームのレベル上げの様に、とても地味に、基本をコツコツと、たまに応用を交えて。

 魔力発動までのイメージとしては、最初は小さなコップに徐々に水を入れていって、それを零さないようにする感じ。

 もう零れる!って思った瞬間に魔法を使う。

 何度か繰り返して、コントロール出来たらコップを大きくする様に。




 そんな感じで一週間。


 「…よし!」


 いよいよ明日は、入学式だ。

 式の後はそのまま寮に入るので、家に居るのは今日が最後になる。

 少し前に必要な物は寮に送っておいたので、今日は明日持って行く荷物をまとめていた。


 この世界には宅配は存在しない。

 変わりに、転送ボックスなるものがある。どの家庭にも置いてある箱型の魔法道具で、その中に物を入れ、送り先を言うと数秒で送れるという、便利な代物。因みに、受け取りも可能である。

 (宅配より便利だと思う)


 明日は九時から式だから、八時には家を出ないと間に合わない。

 貴族だったら馬車があるが、庶民は基本徒歩。

 家から学院までは約一時間程度。これでも近い方だと思う。

 (早起きしなくては)


 明日から着る制服をハンガーに掛け、壁に吊るしておく。

 前世で着ていた制服よりも可愛い。

白を基調にした制服はあまり見ないので、とても新鮮に感じる。

 制服を見つめていると、ご飯よーと母の呼ぶ声が聞こえた。


 「はーい!」


 リビングに行くと、父と母が待ち構えていた。


 「リズ、これ私達から。入学祝いよ」

「ありがとう!開けて良い?」

「もちろんよ!」


 リボンをほどき、ラッピングを剥がし、小さな箱を開けると、中には可愛らしいデザインの髪留めが入っていた。

 所々に宝石が散りばめられた、素人目で見ても高価な物と分かる。


 「…可愛い。でもこれ幾らしたの?」

「それ、私が家を出た時に付けてた物なの。娘が出来たら何時か渡そうと決めてたのよ!貰って頂戴。いざとなったら売ってお金に変えるのも良いしね!」

「売らない!大切にする!ありがとう、お母さん!」

「ふふ、どういたしまして。さっ、ご飯冷めない内に早く食べましょ!」




 翌朝。


 「…じゃあ、行ってきます!」

「体に気を付けてね。あまり無理はしちゃダメよ?嫌になったら辞めて帰ってきて良いからね?」

「…気を付けて。しっかり学んできなさい」

「うん!」


 手を振る両親に背を向けて、学院へと一歩を踏み出す。

 人生二回目の学院生活(スクールライフ)

それが、薔薇色となる事を夢見て。僅かばかりの、希望を抱いて。

 (目指せ、友達百人!!)

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