二次試験開始。
メテオと王子が手を離すとほぼ同時に、ノック音と共に扉が開く。
入ってきたのは、試験官と思しき長い白髭を生やした初老の男性だった。
「これから二次試験を行うにあたって、説明をさせていただきます。皆さんにはこれからお配りする指輪を装備してもらいます。これは装備する事によって、擬似魔法を使う事が出来る代物です。使用できる魔法は皆さんの持つ魔力と比例したもの、つまり魔力が高ければ高い程、より強力な魔法を発動する事が出来ます。そして今回は受験生の皆さん平等に、火属性の指輪を配ります。場所は第一訓練場。安全の為に結界を張ってあるので、安心して下さい。試験は一人一回の魔法攻撃、合否の有無は相手に与えたダメージ数が基準値を上回っているか否か。皆さんの相手は私です。ではこれから第一訓練場に移動します。付いて来て下さい」
一方的に喋り、相手に質問の隙を与えず、話終われば踵を返して扉の方へ歩いて行く。
逆らう理由は無いので、四人で大人しく付いて行く。
待合室となっていた教室を出て、螺旋階段を降り、入って来た所とは別の所から校舎の外へ出る。しばらく校舎の壁沿いを歩いて行くと、円形状の石造りの建物が現れる。
校舎の様に絢爛豪華な造りでは無く、出来る限りの無駄を省いたもの。よく見ると壁には幾つもの傷があった。
廊下を突っ切って外へ出る。建物の内側はコロッセオの様な形になっていた。ただ、観客席は無く、そこに土があるだけ。前世の学校で例えるならば、だだっ広い校庭の様な感じだ。
試験官は建物の真ん中まで来ると、振り返って指示を出す。
「ではこれから指輪を渡します。しかし、自分の試験の順番が回って来るまでは決して装備しない様、注意して下さい。注意を聞かずに勝手に装備をして、万が一魔力が暴走して魔法が暴発しても、我々は一切の責任を負いません。何故なら貴女方はまだ我が校の生徒では無いからです。では、どうぞ」
結界を見てくるから少し待っているよう指示されたので、その場から動かずに、手渡された赤い石の付いた指輪を見ていると、メテオが話し始める。
「あの試験官さん、怖かったねー。返事する暇も無かったよね?」
「そうですね」
「ここの先生って皆あんな感じなのかな?だとしたらちょっとやだなー。リズもそう思うよね?」
「…そうだね。でもああいう、自己中心的な人ってどこにでも居るよね」
「…ジコチュウシンテキって何?ノア」
「さぁ?しかし、質問をしなくても済む説明はありがたいと思いますよ」
「ノアもリズも本当に同い年?ねぇ、レオンハルトもなんか言ってやってよー!」
「………、来た」
レオンハルトの目線の先を見ると、試験官が水晶玉の様な物を片手にこちらへ戻って来た。
一度四人の顔を見渡し、口を開いた。
「これより、私が一人ずつ名を呼びます。呼ばれた者は前へ。その他の者はあちらの結界の中へ。私が試験開始、と言ったら今持っている指輪を装備して私の張った結界に攻撃して下さい。結界が負ったダメージ数はこの水晶玉に私だけが見えるように表示されます。攻撃方法は、装備した方の手を前に出すだけです。説明は以上です。では最初の試験者、ノア・アーノルド、前へ」
「…はい」