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はじまり

「お前ってほんとさあ…」

 クラスの男子達に囲まれている友人を見つけて、駆け寄った。

「あんたら、またいじめてるのか! 」

 こぶしを握る私を見た男子達は、嫌そうな顔で距離をとったあとに囃し立てる。

「お前ってほんと、きょーぼーな! 」

「こいつはすげえなよっちいし、お前ら男と女が逆だったら良かったんじゃね」

 笑いながら走り去っていく男子達の背中をひとにらみして、うつむいてすんすんと泣いている少年に向きなおる。

「そうやってすぐ泣かない。あんなやつらいつでも追い払ってやるからさ」

 そう言って頭をなでれば、涙で濡れた顔をあげてほんわりと笑う。

「ありがとう、ふゆちゃん。ふゆちゃんは最強のヒーローだね」


 そこまで聞いたところで意識が浮上してきて、幼いころの夢を見ていたのだと気がつく。

 嫌なことがあって、落ち込みながら寝たせいだろう。言われるままに最強だと信じていられた、幸せなころの夢を見た。

 その幸せから抜け出したくなくて、冬子は布団の中で目を開けないまま考える。

(私のことを最強のヒーローだって言ってた子の名前、なんだったかな…)

 十年ほど前の記憶を掘り起こす。

(読み方が女の子みたいな名前で、からかわれてたはず)

 うんうんと唸ること数分。

 ぼやけていた顔が鮮明に思い浮かんだ瞬間に名前も思い出し、冬子は布団を蹴り飛ばして立ち上がるとその名を叫んだ。

「カノちゃんだ! 」

 見開いた目の前には呼ばれた少年の顔があり、夢の中で見たとおりに柔らかく笑顔になる。

「ふゆちゃん、やっぱり来てくれたんだね」

 そう言って微笑む顔が十年前と変わっていなくて、冬子はぽかんと口を開けた。

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