表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の異世界一週間戦記 召喚勇者は期間限定  作者: 神井千曲
8-俺の異世界蛇足戦記 召喚勇者は期間延長
97/114

8

――どこともしれぬ場所

 どれほどの時間が経ったのであろうか。

 それは、一瞬……あるいは永遠なのか?


「……何だ⁉︎」


 気が付いた時、俺達の身体は奇妙な空間に放り出されていた。

 そこは、何色ともつかぬ色の空間。そして、数多の球体。

 これは一体?


「あれは……何でしょう?」


 エルリアの、震えた声。

 俺は手近な――と言っても、大きさが把握できないので、多分だが――の球体に目を向ける。

 ……!

 あれは、何だ? 暗い空間の中に、小さな光る泡みたいな何かが……

 ……泡?

 いや待て。どこかで見た……

 ……ああ。思い出した。アレは小さい頃、親父に連れて行ってもらったプラネタリウムで見たモノだ。

 それは、宇宙の大規模構造。あの球体の中のモノは、それに似ていた。

 周囲の球体に目を向ける。が、疎密の差はあれど、だいたい同じような構造をしているようだ。

 まさか……ここは宇宙の外⁉︎

 そんな、馬鹿な……

 ……いや待て。考えられないことじゃない。

 アストラン大陸のある世界は、俺達の地球とわずかに位相が“ズレ”た場所にある。もしその“ズレ”を飛び越えてしまった場合、果たして一体どうなるのか……

 宇宙の外。超宇宙とでもいうべきか?

 え〜と、確か……マルチバースだかオムニバースだかいうんだっけ? 仏教で言うところの十方世界ってヤツかな?

 ココはそんな場所なのか。

 ……というか、空気は大丈夫か⁉︎

 転移する際には対象物を保護する結界が張られているわけだけど……この中の酸素を吸い尽くしてしまったら、俺達は窒息してしまう。おそらくは半径数メートルぐらいか? 数時間は持つかもしれないが、早いと所ここから脱出する手段を見つけないとヤバい。

 どうしたものか……

 周囲を伺う。が、どれが俺達がいた宇宙かなんて判別などつかない。

 判ったところで、どうやって帰ればいいか。

 クソッ、手詰まりか……

 歯噛みしつつふと視線を向けた先。

 数多の球体の向こうに、棒状の“何か”が見えた。

 アレは……何だ? 幾つもの多面体が積み重なって構成された柱に見えなくもない。しかし……形が定まらないというか……変形を繰り返しているようにも見える。

 もしかしたらアレは、高次元の立体なのかもしれない。確かどこかで見たな、回転する四次元立方体とかいう画像を。まさかこの目で実物を見るなんて思わなかったぜ。

 おっと、感慨にふけってる場合じゃない。

 あの柱(?)は一体どこに繋がってるんだ?

 そちらに目を向けると……

 柱はやがて螺旋状にうねり、他の柱と合流していた。それは、絡み合ったさらに巨大な柱の一部だったのだ。

 その行く先には、さらに多数の柱――いや、“ひも”と言った方がいいか?――が集まっていくのが見えた。

 そして、


「な、何だ……アレは!?」


 多数のひもの根元。そこには……

 巨大な“何か”があった。

 巨大な多面体と、それに絡まる無数のひも。それらは不規則に蠢いている。むしろ、触手といった方が正確かな?

 それはともかく……“アレ”は“生きて”いるのか⁉︎

 いや……あんな巨大な生物なんて存在できるのか? 宇宙よりもはるかに巨大な生物。

 あるとすれば……それは“神”、か。

 まぁ、一口で“神”と言ってもピンキリあるのは確かだが……

 多次元宇宙の曼荼羅の中心に座する異貌の神、って所かな、アレは。

 おそらくはどんな世界の神々をも超越した存在なのだろうか? だとしたら、俺達の存在など歯牙にも掛けない……ん?

 先端に球体が付いた触手があるな。虹色のマーブル模様というか……。妙な色使いだけど、もしかして、あれも宇宙?

 ン? 模様が変わって……アレは、まさか⁉︎


「何でしょう? まるで目か何か……」

「見るな!」


 とっさにエルリアの頭を強引に抱き寄せ、視界を塞ぐ。そして俺も、“それ”から目をそらした。

 アレは……見てはいけないモノだ!

 俺の本能が、そう警告する。

 ヒトの“知覚”を超えた“何か”。

 もしその“眼”を覗き込んでしまえば、俺達は……


『…………』

「⁉︎」


 と、何やら妙な“声”が聞こえた。

 何だ? これは……

 総毛立つ様な不快さのこもった“声”。確か、聞き覚えのある……


「……アキト」


 不安げなエルリア。


「大丈夫だ。俺がいる」


 正直言って、逃げ出したいくらいだ。だが、彼女がいる。

 エルリアだけは、護らねば。


『ほう……また“珍客”か』

「……!」


 この、“声”!

 聞き覚えがある。それも、最悪の状況で、だ。

 俺は、恐る恐る顔を上げる。と、目に入ったのは、巨大な人型の“何か”。

 楕円形の球体とそれに続く円筒形の軸部は、もしかして頭と首か。そして前後に扁平な筒状の胴体らしき部分。胴体らしき部分の上部側面及び下端から突き出した筒状のものは、おそらく腕や脚なのだろうか?

 それだけであれば、人間的なモノにも見えなくもない。

 だが……それらすべてが奇妙に“歪んで”いるのだ。

 頭部、特に顔面と思しき部位は、幾何学的な直線や曲線で構成され、どことなく前衛芸術を思わせる。そして腕や脚には、明らかに余分な関節があった。

 なんと言うか……生理的な嫌悪感を催す造作である。ただ見ているだけでも狂気に襲われそうだ。

 いや、それだけではない。

 ヤツから感じる強烈なプレッシャーは、物理的な圧力すら伴っている様にも感じた。

 この、プレッシャー。

 あの時に感じたものと、よく似ている。

 エルズミス大神殿地下に現れた、超高次元の魔神だ!

 その名は……神魔王バルドス!


『ほう……その名で我を呼ぶか』


 ……! 心を読まれた⁉︎


『貴様らのごときちっぽけな存在の“心”など、“読む”までもない。……ほう。そうか、貴様達はあの時の』


 ヤツの“声”を聞くだけで、精神が押しつぶされそうだ。それだけの、圧倒的なプレッシャー。

 これほどまでに格の違う存在だったか!

 クソッ! 仮初の肉体を持ったヤツならまだしも、ヤツはおそらく“本体”。それに、ここはアウェーだ。

 万事休す、か。しかし……エルリアだけは、逃さねば。


『ふん……勇ましいな。だが……その裏の絶望も、また美味だ』


 ……!

 そうだったな。コイツらは、そういう存在。そしておそらくは、俺たちと決して相容れぬもの。


『まぁ……よかろう。貴様達にも我が“力”を与え……むぅ? もう一つ、“何か”……』

『アキト、これは……』


 エルリアの“心話”。

 彼女から、わずかな“力”を感じた。

 これは、何だ?

 だが、それは、“何処か”を“示して”いる様であった。

 これは……チャンスかもしれん。


『いいかい?』

『ええ』

『では……“転移”!』


 イチかバチかだ。

 どこに行くかは分からん。

 だが、ヤツのオモチャにされるよりはマシだ。


『ぬぅ⁉︎ 逃がさん!』


 ヤツの声。

 だが、それより先に、俺達は時空門の向こうへと身を踊らせていた。

 しかし、その直後。


「!」


 衝撃。

 ヤツが時空門ごと“握り潰し”たのか。


『クッ……ソ! エルリア……』

『ああ……アキト!』


 俺達は時空の乱流に翻弄され、やがて気を失ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ