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俺の異世界一週間戦記 召喚勇者は期間限定  作者: 神井千曲
8-俺の異世界蛇足戦記 召喚勇者は期間延長
94/114

5

――翌朝

 カーテンの隙間から差し込む柔らかな光が、優しく俺の頬を撫でる。

 ……もう、朝か。良く寝たな。

 そういえば、いい夢を見たっけ。エルリアとまた会えるっていう……。

 ああ、今日は何か良い事がありそうな気がする。起きるか。


「ん〜」


 俺は一つ伸びをし……


「アキト様、おはようございます」


 隣からの声。

 え? 誰かが隣に⁉︎

 振り向いた視線の先。

 エルズミスに残して来たはずのエルリアが、隣で少し恥ずかしそうに俺を見ていた。

 あ……あれ? 一体、何が⁉︎

 いや待て。ああ、そういえば昨晩は……そんなことがあったな。


「や、やあ、おはよう」


 こっちも少し気恥ずかしい。

 戻って来る前にもこういうコトはあったが……いざ自分の部屋で、となるとね。

 いや、それよりも。

 身を起こすと彼女を軽く抱きしめ、その感触を確かめる。


「あ、アキト様⁉︎」

「ハハ……ごめんよ。良かった。やはり、夢じゃないんだな」


 朝目覚めた時、彼女の姿がかき消えているんじゃないかという恐れは、昨晩わずかにあった。


「大丈夫ですよ、アキト様。私はここにいます。アキト様のお側に。私こそ、夢を見ている様です。アキト様と今生でまた会えるなんて……」


 彼女の腕が、背中に回る。


「俺もだよ。あの選択が正しかったのか、ずっと悩んでいたんだ。また向こうに行けると知った時は、天にも上る気持ちだったさ」

「はい。私も……」


 俺は、またこのまま彼女を……

 おっと、いかん。今日はやらなきゃならない事があるんだしな。続きは後でいい。

 そう己に言い聞かせ、俺は彼女から離れた。



――台所

 さて、朝食の準備だ。

 ご飯は一食ぶん残ってる。

 パンに卵、ベーコンにレタス、トマト。

 よしよし、いける。

 この寮の一階に喫茶店が入ってるからモーニングをそこで食べるという手もあるが、エルリアがまだこの世界に慣れてないしな。それに、店員も客も顔見知りが多いんで、彼女の素性を聞かれるのもちょっと。



 そして、朝食ができた。

 作り慣れたベーコンエッグ。それをちゃぶ台に並べた。

 さて、主食だが……彼女には、トーストした食パンを。俺の方にはご飯を置いた。そして、納豆も。

 一パックだけ残ってたヤツだ。賞味期限的にも、今日食べておかないと。

 まぁ、流石にこれは彼女に出せん。俺の転生前の味覚的にもアウトっぽいだろう。今は好物の一つだが。

 そして、エルリアもやってくる。

 彼女は下着の上に、寝間着代わりの俺のTシャツを着ている。

 何か……かなり恥ずかしそうにしているな。まぁ、仕方がないんだが。

 彼女の持って来た小さなカバンの中には、先生がもたせたという着替えがあったが……スケスケの下着やネグリジェが入っていたというね。

 ネグリジェはともかく、下着は替えがなかったんで……。階下のコンビニにも女物の下着は置いてあったけどさ。顔見知りのいる場所でそういうモノを買うってのも……ねぇ?

 ともあれ、一度先生を問い詰めたほうが良さそうだな。


「さて、いただきます。……どうした?」

「あの、アキト様……それは何です?」


 彼女の指差す先にあるモノ。

 それは……納豆。


「あ……これはその、この国で食べられてる発酵した豆だよ」

「そう……なのですか? ちょっと食べてみたいです」

「そ……そうか」


 とはいえどうしたものか。興味津々といった顔の彼女に駄目だと言うのもな……。

 まぁ、とりあえず。


「ちょっと癖があるからね。まずは、少しだけ」


 二粒ほど箸でつまみ、彼女の皿の片隅に置いてやる。


「少し臭いますね」


 嫌な予感がしたのか、少し眉をしかめるエルリア。


「では……」


 彼女はそれをスプーンですくい、恐る恐る口に運んだ。

 そして……


「〜〜〜」


 口を押さえ、涙目になる彼女。

 あ〜、やっぱり駄目だったか。

 テッシュをとり、彼女に渡す。


「これに出して。気にしなくていいからさ」

「だ……大丈夫、です……」


 何とか飲み込んだようだ。

 無理しなくてもいいのに。

 俺はポットの茶をコップに注ぎ、彼女に差し出した。


「ありがとうございます……」

「まぁ、どの世界にもこういう食べ物はあるからさ……」

「アキト様は、いつもそれを食べているのですか?」

「大体二日に一回くらいかな?」

「そう、ですか……」


 ちょっと引かれた。


「私も……食べられる様にならないといけませんね」

「いや……そこまでしなくてもいいよ。それより、早く朝食を食べよう」

「はい」


 そうして、二人で朝食を食べた。

 う〜ん、何と言うか……新鮮な気分だ。こっちに来てから、誰かと一緒に朝食食べたことなんてほとんどないからな〜。



――食後

 食器を片付けると、向こうに持って行くための荷物のチェックを行う。

 幸いエルリアがいるので、今回諦めるつもりだった分も幾らかは持っていけそうだ。


「……よし。これで大丈夫だな」


 俺が担ぐリュックと、彼女用のショルダーバッグ。

 無論、ショルダーバッグに入れたのは、軽いモノばかりだ。あと、彼女の着替えだな。


「じゃあ、ちょっとこれをお願いできるかな?」

「はい、分かりました。アキト様」


 ショルダーバッグを大事そうに受け取り、彼女はうなづいた。


「ああ、そうだ。その『様』っていうのを止めてくれない? あっちじゃ、その……式を挙げた訳だし、こっちでは身分なんて関係ないからさ」

「そ……そうですね」


 彼女は頰を赤らめ、俺を見る。


「そ、それでは……改めてよろしくお願いしますね、アキト」

「あ……ああ」


 何か気恥ずかしな。

 ……おっと、浮かれてる場合じゃない。

 そろそろ出発の時間だ。

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