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――最下層フロア

 長い階段を下り、ようやく一番下のフロアへと降り立った。

 屈強な戦士であるヴェルディーンが少々青い顔をしている。……とはいえ色黒なので、ほとんど目立たないが。

 ま、仕方あるまい。こんな高所の階段はこの世界にはあまり無いからな。

 それはともかく、だ。

 俺達が今いるフロアは、50m四方ほどの正方形をしていた。円筒形の部分は10mほど上で終わり、その下はより広大な空間となっている。

 おそらくここは、地下世界の一つ、あるいは二つ下の階層にある。

 円筒部下端近くに踊り場があり、扉が備えられていたからだ。エヴノの魔導石を近づけてみると、開いた。その外は、地下世界の地表であった。しかも遠方には魔王城が見える。地下世界も探索してみたいが、さすがに今はそんなことやってる場合じゃない。そこは放置して下に降りることにしたのだ。

 ちなみにその扉は俺たちが離れるとひとりでに閉じてしまった。自動ドアか。



 とりあえず、この部屋を確認してみる。中央に機械がそびえ立ち、その周囲を、円筒部を支える8本の柱が取り巻いていた。四隅には、何やら巨大な像がある。

 その像の高さは3 - 4mほど。鎧をまとった人の姿をかたどっている様にも見える。

 それにしてはいびつな形だ。一体などは、明らかに関節がおかしい。頭が妙に大きかったり、肩が張っていたり、腕や脚が多いものもある。

 まさか、ガーゴイルみたいなガーディアンか?

 そう思って身構えたものの、全く動く様子はない。

 ただの飾りかもしれん。が、警戒は怠らない方が良さそうだ。


「巨人像、ですかな」


 ローベルトが言う。

 ふむ。……うろ覚えだけど、エルズミス大神殿の奥深くに奇妙な像が祀られていたんだっけ? 俺は見たことないが、それに似ているんだろう。

 そういえば、この世界の創生神話には巨人が関わっていた。ま、地球でもよく見る類の神話だよな。とはいえ、実際この世界は造物主が造った訳で……。

 まさか造物主の本来の肉体は、巨人だったとか? いや、それにしちゃ器は小さいか。

 ……体のデカさと器は関係ないかもしれんけど。ま、いいか。



 それにしても……未だ造物主もヤツも現れてはいない。

 様子見しているんだろうか?

 それとも、俺達が知らないところで戦っているのか?

 その場合、うまい具合に両者潰しあってくれるといいんだが。

 ともあれ、待っているのも暇なので、少し確認してみよう。

 俺は慎重に機械へと近づく。

 低く、震えるような音。高く金属が擦れるような音。唸るような音。それらが周期的に鳴っている。

 俺達レベルの科学知識では、この機械内で何が起きているのかは分からない。だがこの機械が“生きて”おり、何らかの役割を果たしているのは分かる。

 しかし動力源は何だろうな。ある日突然止まったりとかいう事態は勘弁してほしいが……。

 とりあえず、観察してみる。

 外装は、黒曜石のような質感の物質に覆われている。何箇所かに継ぎ目やハッチらしきものが見えるところから、板状のカバーなのだろう。継ぎ目近辺には、ビスと思しき丸い突起が散見される。ハッチには取っ手が付いているのが見える。開けてみたい所だが、安全装置が働いて機械が緊急停止したとかいう事態になったらシャレにならん。止めとこう。

 見上げると、基部から3mほどのところに、何やら円と直線からなるエンブレムっぽいものがあった。その少し下に、モニターらしきもの。なにやら文字やグラフのようなものが時々映し出されては消えている。その両脇には、歯車状の縁を持ったくぼみが幾つか。あれはメーターか? そしてそのすぐ下が手前に張り出した形状となっており、その上に四角い小さな突起が並んでいる様だ。どうやらコントロールパネルか何からしい。

 ……人間が操作するには少々大きすぎるな。やはり造物主は巨人なのか? そういえば、四隅の巨人像なら、丁度いいくらいの大きさだな。

 ふと見ると、その隣には人間サイズのコントロールパネルがあった。その部分だけ周囲と微妙に少々質感や色が違うところからして、後付けっぽい。

 それはそうと、これらのコントロールパネルはこの巨大な機械を操作するには簡素過ぎる気がする。もしかしたら、どこかにコントロールルームがあるのかもしれん。

 そこで引き返し、周囲を確認する。

 このフロアに他の扉はないか?

 ……あった。一つ上の階層の扉があった方角に一つ。4m四方か? 上にあったモノの倍近くの大きさだ。


「方角からすると、魔王城の方へ向かう通路があるのかもね」


 と、ダニエル。

 魔王城地下にコントロールルームでもあるのか?

 もちろんゲームにはそんなモノは無かったし、ダニエルやローベルトも知らなかった。

 調べてみるべきか?

 そう思った時……


「キョキョキョ……」


 ヤツの笑い声が聞こえた。


「! どこだ!?」

「ワレハ ココダ」


 声のする方を見上げる。

 と、10mほど上、機械を支えるトラス柱の上に腰掛ける道化師の姿があった。


「いつの間に……」


 先刻までは、誰もいなかったはずだ。


「アヤツハ キテイナイカ」

「造物主なら知らん。その辺の陰で震えてるんじゃないか?」


 もしかしたらどこかで俺達の様子をうかがってるのかもしれん。それこそコントロールルームあたりで。

 ……適当に煽ってみたら出てくるかもしれんと思ったが、ダメか。


「フン……アイカワラズダナ。ゼッタイテキナ チカラヲ モッテイルウチハ オウヨウダガ イッタン ソレヲウシナウト スグニニゲル」

「そ、そうなのか……」


 元々この世界の人間だった身からすると、もうちょっと堂々としていて欲しかったんだがな。

 ふと隣を見る。それぞれ多少の差異はあれど、同じように感じたらしい。ローベルトなどため息をついている。

 神殿勤めの身としては、辛い現実だよな。

 まぁ、造物主といったところで、元は俺達と同様の“人間”なのかもしれんが。

 それはそうと。


「とりあえず、造物主が現れるのを待つつもりなんだろ? 俺達はあんたと造物主が争う邪魔はするつもりはないぜ。とりあえず、今のところは」


 造物主がいなくとも存続している世界があるって事は、アイツが倒されでも何の問題もないわけだ。邪魔する理由はない。

 ただし、万一また仲間の身体を奪われたら、まず奪い返すのが先決だ。それまでは待ってもらう必要がある。無論、身体から追い出された造物主は、煮て食おうが焼いて食おうが一切関知するつもりはない。


「フン……スキニスルガイイ。ダガ……マズハ コレヲ コワサセテモラウ」


 いきなりか!

 慌てて止める。


「ちょ、ちょっと待ってくれよ! それを壊す必要あるのかよ!?」

「アル。コレハ コノ“セカイ”ヲ イジスルタメノ ソウチダ」


 やはりそうか。だが、それを壊されるということは……


「アンタが狙うのは造物主のクビだろ? この世界まで巻き込むことないじゃないか!」

「コノセカイハ アヤツノ カテ。ユエニ ココヲ コワシ アヤツノ チカラノ ミナモトヲ タツ」


 最悪だ。もうちょっと交渉の余地はあると思ったが。


「も、もうちょっと待てないか? アイツを倒してしまえばこの世界を壊す必要なんてないんだろ?」

「イチリアル。ダガ、ヤツノ イバショガ ワカラヌイジョウ マズハ コイツヲ コワス」


 ……何でこういう時にアイツは現れないんだ? 異界人を排除してまでこの世界を維持しようとしてたんじゃないのか?


「とにかく、それだけは止めてもらいたい」

「マタワレノ ジャマヲスル ツモリカ?」


 刃の様な、鋭い殺気。


「当たり前だろ。この世界を壊されるわけにはいかん」

「フン……イカイヨリ キタ キサマガ ナゼ コノセカイニ シュウチャクスル?」

「俺は元々この世界の人間だ! 貴様に殺されたんで地球に転生しちまったがな!」

「ホウ……ソウカ! アノトキノ。ソウイエバ、アノデカブツモ ミオボエガ アッタナ」

「デカ物呼ばわりは酷いよな〜」


 ダニエルよ、そこでボヤくな。


「我々が住んでいる世界を滅ぼされるわけにはいきません。我々としても、身命を賭して阻止する覚悟です」


 と、ローベルト。ヴェルディーンとアイーシャもうなずき、身構える。


「ホウ……ナラバシカタガナイ。アヤツノマエニ キサマラヲ チマツリニシアゲテクレヨウ」

 ヤツは柱の上に立ち上がり……その姿が消えた。


「どこ!?」


 当惑したアイーシャの声。さすがにこの手の敵とは戦ったことはないか。

 俺はヤツの“気”を探り……


「ヴェルディーン! 後ろだ!」


 彼の後ろに揺らぎが生じ、道化師のシルエットが浮かび上がる。ヴェルディーンは慌てて振り返るが、間に合いそうもない。

 だが、俺はその時には指弾を飛ばしていた。


「!」


 直撃。

「ヌゥ……」


 いや、その直前にヤツはそれを打ち払う。しかし、それで十分だ。その間に体制を整えたヴェルディーンは大剣を振るう。


「クソッ!」


 しかし、空を切った。惜しい。一瞬早く、その姿はかき消えていたのだ。

 次は、どこだ?

 精神を集中し……捉えた!

 右前方。膨大な魔力が集中している。

 攻撃魔法!? だが、間に合う。


「リャアー!」


 一足飛びに踏み込み、剣を振り下ろす。

 その一撃は、ヤツを捉え……


「!」


 が、俺の剣は、ヤツのツメに受けられてしまった。

 だが、この剣がヤツを捉えたのは初めてだ。幾らかの光明は見えたか?


「チッ!」

「オノレ……」


 お互い飛び退り、構える。そして……


「そこまでです」


 凛とした声が響いた。

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