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――聖地エルズミス

 ヴォルザニエスに変身したダニエルに掴まり、俺とローベルト、エルリア、ついでにエヴノはエルズミスまで一気に飛んだ。

 さすがは悪魔王(アークデーモン)の翼。恐るべきスピードだ。前世での戦いでは、彼らの機動力にずいぶん悩まされたものだ。それが、今こうして助けられようとはな。分からんものだ。

 ……まぁ、それはともかく。



 俺たちは目立たぬように街道から離れた場所に着地し、そこからは徒歩で門を目指すことにした。

 意識のないエルリアは、俺が背負っての移動だ。

 ちなみにダニエルは、服はあらかじめ脱いでから変身した。ちなみに魔力が十分あると服も再構築できるらしいが、今は先刻の戦闘で魔力が枯渇寸前なので、こうしている。ちなみに魔力自体は一晩休めば復活可能とのことだ。

 そしてしばし街道を歩いたのち、俺達一行は城門の前へとたどり着いた。



――城門

「あいかわらず、でかいな」


 高い城壁を見上げ、思わずつぶやく。

 ここは巨大な城塞都市なのだ。それも、大陸最大の。

 前世では、幾度も訪れていた場所だ。この城壁は、あの当時と変わらずそびえ立っていた。

 旧リーマス共和国首都リーマス及び旧ガンディール王国王都ヴィラールと並ぶ、大陸三代都市の一つ。そして、有史以前からの聖地であり、大陸最初の統一王朝トゥランティア帝国の帝都であったのだ。

 ん? そういえば魔王戦役の最終局面で城壁や市街地はかなり破壊されていたはずなんだがな。ケームでは、だが……


「それなら、あなたのお父上とそのご友人たちが大活躍されましたよ」

「……そうだったんですか」


 ローベルトによれば、親父と業者の面々は、エルズミスの職人たちと協力して復興に奔走したそうだ。その甲斐あって、ラクアに居住することを認められたとのことらしい。

 親父もここで色々やってるんだなぁ……。

 そんな事を考えつつ、歩を進めた。



――城壁内

 簡単な手続きを済ませ、城門をくぐる。

 本来は煩雑な手続きがいるが、大司祭ローベルトのおかげですんなりと通過する事ができた。

 そして馬車を借り大通りを北へと向かう。

 大通りには綺麗な石畳が敷かれている。見ると、所々石が新しいところがあるな。補修箇所か。

 通りの建物も、懐かしい光景に混じって、明らかに新しく建てられたものがいくつかある。

 コンクリートで造られた建造物にも、補修したと思しき箇所が見受けられる。補修中、あるいは建造中の建物もあるが……鉄筋むき出しはちょっと風情がないな。ま、仕方ないけど。

 ともあれ、これほどの補修をやってのけた訳だ。やはり大仕事だったんだな。

 それはそうと、通りの向こうにこれまた巨大な建物が見えてきた。大神殿か……懐かしい。

 そしてその背後にそびえるのが、霊峰エルバスだ。

 この地の信仰の中心。神々が住まうという山だ。

 そして……その地下には魔界へと向かう迷宮がある。俺達の決戦の地だ。



――大神殿

 数千年……いや、一万年の時を超えてこの大神殿はこの地にそびえ立っていた。その歴史の重みは、風雨にさらされ風化が著しい大理石の壁や柱が物語っている。

 一万年か……

 ギリシャの神殿ですら、そこまでの歴史はない。

 その間、幾たびかの戦火に包まれても、その度に修復され、維持されてきたのだ。

 見上げて感慨に耽る。


「おかえりなさい、というべきですかね。アキト殿……いや勇者イルムザール様。さぁ、行きましょう」

「……ええ」


 ローベルトに促され、俺は大神殿に足を踏み入れた。



 門をくぐり、広大な庭園へと足を踏み入れる。

 そこで俺達は、礼装に身をつつんだ多数の衛兵に迎えられた。

 衛兵、そして聖堂騎士達が、最上の礼をとっている。

 大げさな、と内心思いつつも、俺はローベルトに習った礼を返す。

 いや……姫巫女の帰還と“新たな勇者”の到来だからこそ、か。

 そういう扱いを受けた以上、それにふさわしい振る舞いをせねばならないな。礼には礼を持って返すべし、だ。

 前世のように銘ありの鎧でも着てたらよかったんだが、仕方あるまい。今の体力じゃ、エルリアを背負いながらあれを着こなすのはホネだ。もっと身体を鍛えなきゃいかんな。



――大司祭執務室

 エルリアを侍女達に任せた後、ローベルトに案内された一室で、俺達は現状の確認及びヤツを倒すための策を練ることにした。


「結界に異常はないようです。地下迷宮の入り口も、異常無し。もっとも、あの道化師ならそれらに邪魔されることなく地下に侵入してしまうかもしれませんが」


 報告する部下を下がらせたのち、ローベルトが口を開いた。


「確かに。俺達の敗因は、ヤツの本体を見極められなかったことです。幻覚を使うだけでなく、空間まで操るのか……」

「厄介だよね。短距離であれ、相手をテレポートさせたりとかさ。前回の戦いでも、結局ろくにダメージを与えられなかったようだしね……。そういえば、彰人はヤツの気配を感知できるんだろ?」

「ああ。なんとかな。爺さんに座禅やら滝行やら精神修養やらされていたおかげかもしれん」

「ハハ……あのお祖父さんか。それに多分、転生者にはそういう超常的な感覚みたいなものが備わり易いのかもしれないね。魔族の様に……」

「魔族、か……。その親玉が本来は天空神だったな。ある意味上位魔族は堕天使みたいなものなのかもな」

「おそらくはそうでしょう。それに、勇者は天空神の“器”……。霊的にも神や悪魔により近い存在でしょうな。それはおそらく造物主の持つ能力を限定的に受け継いだもの……」

「……霊的にはアレの子孫ってワケですか。実物を知ったら少々ヤなモノがあるな。もしかしたら、だけど……」


 俺はそこで言葉を切り、全員の顔を見回した。

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