表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/114

2

――翌朝

「ン……」


 目を覚ました俺は、一つ大きく伸びをする。

 そして無意識にエルリアの姿を探し……


「ああ……そうだった」


 昨晩は弟妹と一緒に寝たんだっけか。布団はもぬけの殻なところを見ると、もう起きたのだろう。居間の方から元気な声が聞こえる。

 そう。ここにはエルリアはいない。

 俺は戦いに敗れ、彼女はダニエル……いや、ヴォルザニエスにさらわれてしまった。

 俺が不甲斐ないせいだ。

 何が勇者イルムザールの転生か。これでは、ただのヘタレ勇者じゃないか。

 拳を握りしめた。

 エルリアは無事なんだろうか?

 殺されたり、あるいは……


「クソッ!」


 無力さに涙が出そうだ。

 どうすればいい? ヤツと戦うには、今の俺じゃ力不足だ。

 光輝の太刀オーラセイバー二発でガス欠だ。しかも、威力はイルムザールの頃よりもはるかに劣っている。

 情けない限りだ。

 “力”の総量と技の威力を前世と同等レベル以上に高めなければ、ヤツに勝つことは難しいだろう。

 短時間のトレーニングでどうにかなるものだろうか?

 ……いや、なるわけないな。あの光輝の太刀だって、(イルムザール)が長年の鍛錬の末に習得したものだ。少なくともそれに匹敵するレベルの修練をしなければ、俺に勝機はない。

 いや……それでもあがくしかないな。一応はダメージを与えられたんだ。なんとかヤツを倒せる方法を考えないと。

 とはいえ……どうしたものか。

 しばし途方にくれる。



 ……とかやってる場合じゃないな。

 今朝も夢を見たっけ? 思い出せ。ヒントでもあれば……

 そうだ。今日の夢は……昨日の続きか。

 それにしてもあの魔王……勇者達はよくあんな化け物と戦って勝てたな。同じ“神雷”でも、エルリアのがライフル銃なら魔王のは戦車砲だ。あんなモノ喰らったらチリ一つ残らねぇ。ゲームで再現されている能力など、ほんの一部なのだろうな。さすがは造物主の使徒というべきか。

 使徒といえば……咲川先生もだったな。怒らすのだけはやめとこう。

 それはそうと、まさか姫巫女が自分から魔王についていったとはな。救出に血眼になってた勇者達って一体……。

 いやまて。

 まさかと思うが、エルリアも心変わりしたりとかは……。

 不甲斐ない俺を見捨ててヴォルザニエスにでも走られたら、さすがに立ち直れない気がする。

 いや、俺は地球へ帰る身だ。どのみち彼女とは……

 でもそう割り切れるものでもないだろう。今生で初めて愛した人なんだ。

 俺は、俺は一体どうすれば……


「ああぁあぁぁ……」


 いらんことを思い出してしまった俺は、頭を抱え、情けない声をあげて布団の上を転げ回った。


「……何やってんだ、彰人」


 その声に顔を上げると、あきれ顔の父さんがいた……。

 ああ、ハズカシイ……。



――座敷

 俺と両親、弟妹とローベルトはちゃぶ台を囲んで朝食を食べていた。

 ちなみに昨晩、ローベルトは離れに泊まっていた。この村に逗留する際は、いつもそこで寝ているそうだ。


「この味がなかなか出せないんですよねぇ……」


 ローベルトはタクアンをかじりながら、そんなことをいっている。


「自分で作っているんですか?」

「ええ。ここ数年、料理にはまってましてな。最近は東方風の料理にも手を出したんですよ。奥方の料理はそれによく似てるんですよね」

「東方……旧ガンディール王国東部領あたりですか?」

「いえ、もっと向こうの方です。その辺にはワタリ殿達と同じような姿の民が暮らしております」

「そうなんだ……」

 確かゲーム中でも、東洋風の民族は存在したな。東方沖にある群島に暮らしていたはずだ。

 幾つかイベントがあったっけ。武闘家みたいのも登場したりとか。あと、忍者っぽいのもいたな。

 ……ああ、そうだ。

 微かに思い出した。前世でも幾度か訪れていたっけか。

 そこで、何か……


「なあ、彰人よ。お前何を悩んでいるんだ? 今といいさっきといい……」


 考え込む俺に、親父が声をかける。


「ゔ……」


 せっかく何かを思い出しかけたのに、とは思うのだが、久々に再会した親父の言葉だ。無下にはできん。


「実はさ……」


 拉致されたエルリアのことについて話す。



「ケツの青いガキが女の事で思い悩むとはねぇ……」


 親父は少し呆れたように、それでいて嬉しそうな笑みを浮かべた。


「うるせー。高校生なんだ、仕方ないだろ」

「母さんや。ちょっと遅いけど反抗期だよ」

「まさか彰人の反抗期が見られるとは……生きてた甲斐があったというものね」

「……」


 う〜む、これも親孝行、なのだろうか?

 ま、いいか。

 食べ終わったら、エルリア救出についてもう一度よく考えないと……。


「何をするにもまずきちんと飯を食え。でないと女一人助けることもできないぜ?」


 再び黙った俺に、親父は苦笑を見せた。

 それもそうか。

 腹が減っては、というヤツだな。

 さて、しっかりと腹ごしらえをしておくか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ