表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/114

3

 エルリアの魔法の効果はてきめんだ。あっという間に頭痛はおさまった。

 出来ることなら習得して帰りたいものだ。

 ……地球で使えるかはわからんけど。

 それにしても、『明日』か。

 ……そういえば、この世界に来て今日で三日目になるか。もっと長く感じるな〜。

 エルリアと出会い過ごした二日間は、色々なことがあった。今まで生きてきた日々と比べても、充実した日々だったからかもしれん。

 地球での俺は、どことなく心の中に虚無感を抱いて暮らしてきた。

 それはまるで、ピースの抜け落ちたパズルのような……。

 俺はそれを、両親や親友、祖父を失ったことによるものだと考えていたが、この世界に“何か”を置き忘れていたからだったのだ。

 あの“つながった”瞬間、まさに欠けたピースがはめ込まれたのかもしれない。


「ありがとう、エルリア」


 そんな言葉が、勝手に俺の口からこぼれた。


「えっ……えぇっ⁉︎ 私、何も……」


 当惑する彼女。

 残り数日、できる限り彼女とゆっくりすごしたいものだ。

 その様子を眺めつつ、俺はそう考えた。



――食堂

 遅めの朝食だ。

 エルリアは散々渋っていたが、恐らく宿泊客はもういないだろうという事で、なんとか説得した。

 予想通り、宿泊客はいなかった。

 ま、店員に生暖か〜い目で迎えられたわけだが。

 メニューは薄焼きパン、肉とホウレンソウっぽいモノが入ったスープなどだ。

 そして食後のヨーグルトっぽい風味の飲み物だ。ラッシーに近いかな。


「エルリア……エヴノってどんな人だった?」


 それを飲みつつ、エルリアに問う。


「アキト様……」


 エルリアは言いよどんだ。もしかしたら、俺がまだ吹っ切れていないと思ったのか。


「背負っていくためだよ」

「わかりました。彼は、私の母の弟……叔父でした」

「……そうか」


 彼女への謝罪はしない。俺が罪を感じれば、彼女により大きな罪を着せる事になる。

 “共犯”でもあるからな。


「昔は優しい人でした。彼は、国と私を守るために騎士団に入ったのです。王位継承争いで弱体化した国家を立て直すには、騎士団の力を借りねばならない……。そう考えた彼は、周囲の反対を押し切って騎士団の協力を取り付けたのです」

「……」

「ですが、結果的にガンディール王国の寿命を縮めただけでした。姫巫女さえ取り込む事が出来れば、王家は不要……。国は騎士団に乗っ取られる形で滅亡してしまいました。そしてその後、国を手に入れた騎士団は内部抗争が激化しました。団長であるカルス・エゼキエルと、副団長のフィルズ・ロスタミ両派閥の抗争です。私達もそれに否応なく巻き込まれました。そうした中で、彼はひたすら“力”を求めるようになったのです」

「そうか。望まぬ婚姻ってのもその一つ……」

「ええ。彼はガンディール王国を再生させる為に騎士団を手中に収めようと考えていました。だから、“勇者”の血を引く有力者の子息に私を嫁がせ、最終的にエルズミス大神殿の力を利用して騎士団団長の座を手に入れようとしていたのです。神の声が聞こえぬ“穢れた”巫女には、勇者の血を残すしか存在意義は無いのですから……」

「そうだったのか……」

「ですが、それは夢物語に過ぎませんでした。騎士団はとうの昔に彼の野望に気付いていました。だから彼を左遷し、いずれ私も彼から引き離される予定でした」

「その直前に、俺が転移してきたわけか」

「ええ。彼は、これを挽回の機会と考えたのです。異界人を討伐し、その功をもって左遷を取り消させようと……」

「そうか……」


 その結果、エヴノは失敗し……


「エルリア、エヴノのあの姿だが……騎士団内部にあんな事が出来る術者はいるかい?」

「いえ……。私のような末端近くの者では、そのような事は分かりません」


 エルリアは首を振った。

 それもそうか。アレは邪法のたぐいだろう。何かを憑依させ、肉体を変異させる……。

 そんなモノは表に出せるわけがない。

 ゲームでも、そんな敵は出てきたか。たしか、太古の魔導師……


「ヴァルコーネ……」

「!」


 俺のつぶやいた言葉に、エルリアの顔が蒼白になる。

 太古において不死魔術を極めた大魔導師。

 魔王配下でありながらもその命令系統から離反し、独自行動をとっていた……

 ゲーム中では相打ちとなって死んだイルムザールと魔王配下の悪魔を操り、勇者達と戦わせたりしていた。

 その後、勇者一行と戦い倒されていたが、おそらく不死であるがゆえに今も健在である可能性もある。

 もしかしたらヤツと戦わねばならないのか?

 いや……考え過ぎか。

 俺は無理矢理その事を頭の片隅に追いやり、ラッシーを飲み干した。



 朝食が終わると身支度を整える。そして宿をチェックアウトし、関所へと向かった。

 この街のはずれには関所が存在し、その向こうはエルズミス神殿領となっている。

 とはいえ現状は形だけのモノになりつつあるそうだ。

 姫巫女が騎士団に取り込まれ、英雄である大司祭ローベルトも出奔したために、神殿の権威が失墜してしまっているのだ。

 故にこの周囲の神殿領は、暫定的にこの街の領主が治めている。

 ただし、いつまでも暫定的かどうかは定かではない……。



 大通りを抜け、関所へとたどりついた。

 大勢の人がその前に列を作っている。

 ここでもアゼリアの紋章はかなりの威力を発揮した。

 何の問題もなく通過する事が出来たのだ。

 さて、出発だ。次の街はアルマーナ。そこを過ぎればエルズミスまであと少しだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ