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2

――翌朝

 目をさますと、頭がズキズキ痛んでいた。

 う……頭イテェ……

 この歳で二日酔いか……。ヤケ酒なんか飲むモンじゃないな。

 後でエルリアに治癒魔法でもかけてもらって……

 ん? エルリアはどこだ?

 彼女は隣に寝かせたはず……いた。

 ベッドの足元辺りで顔を伏せ、膝を抱えている。

 その有様からすると……どうやら落ち込んでいるらしい。

 ネグリジェみたいな寝間着でそんな格好するから、下着が見えてるんだけど……


「おはよう。どうしたんだ?」


 とりあえず、声をかけてみる。


「あ……アキト様⁉︎ お、おはよう、ございましゅ」


 驚いたのか、ベッドから落ちそうになった。裾がはだけ、下着が丸見えだ。ついでに動揺したのか思いっきり噛んでいる。


「あ……あの、私……。昨晩はとんでもないことを……」


 真っ赤な顔で俺を見……すぐに視線を逸らした。


「いや、酒の上の失敗は誰でもあるよ。その、俺は構わないからさ……」


 結局あの時は汚れたシーツを替えてもらい、彼女をそのまま寝かせたのだった。

 俺は頭と上半身を洗い、就寝。結局昨晩は何もなし、である。


「私が構うんです! 衆人環視の中で、あ……あんな事を言ってしまって……」

「あ〜、『私が癒す』ってアレか……」

「ええ。もう……人前には出れませんよ……」

「いや、その……半分は俺のせいでもあるんだからさ……」


 というか、俺もヤバいんだがな。エルリアみたいな美人にあんなこと言われたんだ。嫉妬に狂ったヤツに後ろから刺されかねん。


「ならば、責任を取ってくださいますね? 私の勇者様」


 彼女は俺ににじり寄る。


「え゛」


 いやまて。

 どういう意味だ?

 責任か……

 責任って、アレしかないよな? でも、俺は地球へ帰らなければならんし、彼女は……


「ふふっ、冗談ですよ」


 困惑する俺を見、彼女はいたずらっぽく笑う。

 だが……その顔には、かすかに寂しげな色があった。



 その時、また電話が鳴った。


「はい、渡です」

『今度こそ言い逃れはできないわね。……ゆうべはおたのしみでしたね』

「すいません。その直前に吐瀉物を頭から浴びました。なので、楽しめてません」

『えぇっ⁉︎ でもちゃんとヤったんでしょ?』

「……」


 ヤったて、あーた……


「せんせー。女神様とあろうものが、そーいうストレートな表現するのはどうかと思いますー」


 ああ、間違いない。堕ちてるな、この人。エヴノ氏の指摘は的を射ていたわけだ。

 ちなみにちょっとエルリアに聞かせられないところは、日本語で話している。前回もそうだがな〜。


『え? じゃ、じゃあ、エルリアとまぐわ……』

「どストレートじゃないっすかっ⁉︎」

『そ、そう? とりあえず、あの子の“波動”の変異を感じたのよね。時々そうなる娘もいるから』

「まぁ、それを否定する気は無いですけどね……」


 正直に言うことにした。面倒くさいことになる前に……。


『そう……おめでとう。貴方達も大人の階段を上ったのね。先生は嬉しいわ』

「おかしい。教育者としてそれはおかしい」


 不純異性交遊をとがめるべき立場のハズだ、多分。


『なによ、ケチ』

「いや、ケチとかじゃなくてですね……。とりあえず、マジメな話です。覚えてますよね? 遺跡で俺を殺そうとした隊長」

『ええ。エグ……なんだっけ?』

「エヴノという人です。今朝、彼が部下を連れて俺達を追ってきました」


 とりあえず、昨日の朝と二度目の襲撃の経緯を説明する。


『そう……そんな事があったのね』


 彼女の口調が陰る。

 だが。


『ちょっとエルリアに代わってもらえる? 出かけなきゃいけないのよ』


 ときたもんだ。


「……わかりました。次こそはちゃんと説明してくださいよ」


 そう言って、エルリアに代わる。


「はい、エルリアーナです」


 相変わらず緊張した声だ。まぁ、仕方ないんだろうけど。


「……はい。そうです。その……アキト様と……」


 赤面するエルリア。どうやら、昨日のアレのことを聞かれたらしい。

 待て。何を聞いてるあの邪しn……いや、女神。

 あわててスマホを奪おうとするが、あっさり回避された。

 そして、襲い来る頭痛にダウン。


「申し訳ありません、アキト様。アゼリア様が重要な事だとおっしゃっているので……」

「……」


 あーそうですか。それなら好きなよーに報告っしちゃってください。

 俺は耳を塞いでベッドに突っ伏した。



 ……。

 なにやら体勢がどーのと相当具体的な話をしているようだが……聞かないように別のことを考えよう。

 そういえば、また“夢”を見たな。

 またセルキア神殿なんだろうけど……今度はその破壊前か。

 あの場面で拘束されていた少女は、姫巫女と呼ばれていた。昨日見た夢とは別人だ……。多分、今回の夢のがエルマーヤで、昨日のは別人か。

 そういえば姫巫女エルマーヤはゲーム中盤で聖地での祈祷中、魔王が現れて連れ去られるわけだが、どうやら実際は事情が異なるようだ。

 あの神殿は今日と昨日の夢の間に破壊されたことになるわけだが……もしかしたらこの後魔王が破壊するのだろうか?

 そして、タイムラグを置いて異界の剣士が召喚された、と。

 召喚するにしても、あの儀式は一体? まるで黒魔術だ。多分交合の儀式の後は姫巫女の心臓でもえぐり出して捧げるつもりだったのかもしれない。

 そのへんは調べてみないとわからんが……俺があの場所に転移したのと関係があるのだろうか?

 おいおいわかるだろう、多分。

 ……それにしても、ゲーム中の魔王のグラフィックはやたら美形だったけど、別に盛ってるわけじゃなかったんだな。



 しばしのち、肩に手が置かれた。


「アキト様、報告終わりました」


 エルリアだ。


 俺にスマホを差し出した。

 あわてて奪い取るが……通話は切れていた。


「アキト様⁉︎ あ、あの、先刻は申し訳ありませんでした」


 おずおずと彼女は俺をみる。

 いや、エルリアを怒るつもりはないんだけどな。


「あの……方法を間違えると、私達の“力”が失われてしまうとおっしゃられていましたので、仕方なく……」


 嘘だな。あの駄女神……


「いいよ、別に。とりあえずさ、治癒魔法かけてくれない? 頭が痛くてさ……」


 とりあえず、追及は明日だ。

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