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 さて、夕食だ。

 テーブルの上に並べられたのは、薄焼きのパンとイカリングっぽいもの。そしてサラダとスープ。

 それらをまたエールを飲みながら食べる。

 薄焼きのパンは、サクサクとした食感でなかなかうまい。イカリング(?)もカラッと揚がっており、ヨーグルト風味のソースとのマッチングも上々だ。サラダはニンジンやレタスのようなものに、ピリ辛のドレッシングがかかっていた。

 ふむ。あとでレシピを聞いて、日本に帰ったら真似してみようか。

 ……そういえば、このあたりは海から遠かったはずだが、このイカはどこから?

 確か、このあたりの森に出没するモンスターに陸生のイカっぽいのがいたけど、まさか……

 ……考えないようにしよう。



 部屋に帰った後は、魔王戦役や彼女の過去の話題は避け、他愛もないことを話しあった。

 この地方の名物料理や生息する生物などだ。どれもゲームでは再現されていない情報だ。それだけでも、この世界にいることを実感させてくれる。

 そして、おそらく地球でいえば九時を回った頃、俺達は眠ることにした。

 が……

 問題はベッドだ。

 この部屋には、ベッドは一つしか存在しない。

 サイズ的にはダブルベッドであり、二人ともこれで眠ることはできる。

 しかし、俺と彼女が一緒に寝るのは色々マズい気がする。

 俺は彼女にベッドを譲り、床で毛布にくるまり寝ようとしたが、彼女は俺がベッドに寝るよう主張した。

 双方は譲らず、両者とも床で……となりかけたが、それでは意味がない為仕方なく二人でベッドに寝ることになった。

 う〜む。無駄な時間を過ごしただけだったかもしれん……。



 そして、俺と彼女は並んでベッドに潜り込んだ。

 が、……眠れん。

 いつもよりも早い時間に就寝したというのもあるが、美人とベッドをともにしているという現実に、脳と下半身が興奮してしまっている。

 ……羊が一匹、羊が二匹……と、心中で数える。って、これ日本語じゃあまり意味ないんだっけか?

 う〜む。普段眠れない時は、本を読んだりスマホ弄ったりとかしているうちに寝てしまうんだが、今それをするには、エルリアに迷惑がかかる。せめて彼女が寝てからだ。

 ……と思ったが、エルリアもまだ起きているようだ。

 やはり、俺が寝てしまうまでは安心して眠れないのかな?

 ……どうしよう。眠気がこない。

 などと思っているうちに、いつの間にかエルリアの呼吸が規則正しいものになっている。寝たのかな? なら、そろそろ俺も寝よう。

 寝よう。何とか呼吸を整え……


「………………」


 整え……、ん? かすかに何か聞こえるな。女の声だ。

 隣の部屋かな?

 なんとはなしに、耳を澄まし……

 …………

 って、アノ声じゃねーか⁉︎ そういえば、何かギシギシという音も聞こえるし。


「……!」


 一瞬、今朝のエルリアの姿を思い出してしまい……慌ててそれを脳裏から消去した。

 壁ドンして黙らせてやろうかと思ったが、それではエルリアが目を覚ましてしまう。ここは耐えよう。

 と、とにかく寝るんだ。心を無にして、煩悩を追い払い……

 追い払い……払い……

 ごめん無理。

 だが、それでもとりあえず呼吸だけでも整えるか。

 まずは腹式呼吸で、ゆっくりと息を吐き出す。何回かに分けて肺の中の空気をできる限り吐き出したのち、ゆっくりと息を吸う。それを幾度も繰り返す。



 ……なんとか落ち着いてきた気がする。

 そうだ。爺さんに連れられていった寺で座禅を組んだことを思い出すんだ。

 調身、調息、調心……調身は無理か。

 それでも、とりあえず心の中で般若心経を……うろ覚えだけど。


『仏説摩訶般若波羅蜜多心経 観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見……』


 って、何やら左腕に柔らかい感触がっ⁉︎

 なぜ俺の腕に抱きつくんだ、この人は。熱い吐息が耳をくすぐる。

 ヤバい。襲ってしまいそうだ。


『色即是空 空即是色 色即是空 空即是色……』


 途中をすっ飛ばし、その部分だけ心の中でループ。

 だがさらに腕を抱き込まれ、手の甲が微妙な位置に……


「えっ……あの……」


 思わず声を上げてしまった。


「アキト様⁉︎ 起きて……」


 彼女は跳ね起きた。……というか、もしかして起きてた?


「お、おかしな声が聞こえますね。こんな所でなんて不埒な……。せ、成敗しましょう」


 ベッド脇の剣を取り、棒読みで物騒なことを言う。


「い……いや、宿屋の中だからね⁉︎ ダメだって、そんな……」


 慌てて彼女を止めようとし……なにやら柔らかい肉をつかんだ。


「ヒッ⁉︎」


 彼女は小さな悲鳴を上げ、硬直する。

 えっ⁉︎ 今つかんだのって……

 俺も硬直し……バランスを崩した。


「あっ……」

「うおっ!?」


 俺は彼女を巻き込んでベッドに倒れこんだ。

 気がつけば、彼女に覆いかぶさるような体勢だ。


「アキト……様?」

「あ……いや、その……」


 暗闇の中、目が合う。お互いの吐息を感じ合う至近距離。

 俺達は……


「ふふ……お隣もお盛んね」


 隣の部屋からそんな声が聞こえた。

 ……


「……寝よか」

「……そうですね」


 どっと疲れが襲ってきたため、俺達は再びベッドに潜り込み、そのまま眠りに落ちた。

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