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9

「……小人⁉︎」


 緑褐色の爬虫類を思わせる肌をした、小さな人型のモノ。ぎょろりとした大きな目と鷲鼻。尖った耳。指先のカギ爪。猿を思わせる体躯。三日月刀やナタなどで武装していた。


「グレムリンです! でも、何故⁉︎」


 神殿近くじゃ魔物は出ないと彼女から聞いていたが、やはり何かあったのか?

 それにしても、グレムリンか。そういえば、機械にいたずらする妖精か何かだっけ? ってコトは、まさかスマホが原因か? ゲーム内の解説によれば、ゴブリンか何かの変種で、地上には250 - 200年ほど前に現れたとのことだ。地球だと産業革命の頃になるかな?

 ゲームだとLv3モンスター。最大HPは15ぐらいだっけか。使った呪文から推定するに、おそらくLv20前後であろうエルリアなら十分対応できるはずだ。だが、万一ということがある。

 ……ゲームのデータが正しいとは限らんしな。

 それに、俺も戦いに慣れておく必要がある。

 彼女一人では対応できない、より強力なモンスターが出てくるかもしれない。

 彼女の動きを横目で見つつ、いつでも戦えるように剣を構えた。

 ……初めての実戦か。足が震える。

 そしてエルリアが一歩踏み込んだ。

 直後、


「ケケーェ!」


 奇声をあげて、一匹のグレムリンが飛びかかってくる。


「ハッ!」


 一閃。銀色の軌跡が宙に弧を描いたと思った瞬間、グレムリンは空中で逆袈裟に斬られていた。

 グレムリンは地面に叩きつけられ、わずかにあがいた後に、沈黙した。

 一撃か。

 それを見て鼻白んだか、数匹のグレムリンが後退った。

 だが、リーダーらしき大柄のグレムリンが怒りの咆哮を上げると、数匹同時に飛びかかってきた。


「セイ! ヤァー!」


 一撃、二撃。

 グレムリンが地に伏していく。だが、その剣尖をかいくぐって、接近するヤツが一匹。


「ケエー!」


 エルリアの無防備な脚めがけてナタを振るおうとし……。


「させるか!」


 とっさに蹴り飛ばしてやった。


「ギィー!」


 妙な叫びをあげて悶絶するグレムリンに、エルリアのとどめの一撃が無慈悲に振り下ろされる。


「ありがとうございます。……後ろ!」

「!」


 背後を振り返ると、ジャンプし、斬りかかってくるグレムリンが一匹。


「チッ!」


 反射的に剣を構え、その一撃を受ける。間一髪だ。

 そしてヤツが空中でバランスを崩したところで前蹴りを一発。


「ゲケッ!?」


 ヤツはうめきつつ着地。だが俺は蹴り足を下ろすとそのまま踏み込み、ヤツの脳天に一太刀浴びせた。


「ゲキャー!」


 肉を斬り、骨を砕く嫌な感触。

 ヤツの命が俺の手によって砕け散った。


「……ッ!」


 嫌悪感。だが、戦いは終わらない。

 俺は分断されないようにエルリアの背後に控え、彼女の死角をカバーし、討ち漏らしを潰していく。

 そして、残るは……


「ギギギ……」


 怒りの視線を向けてくる、リーダーらしきグレムリン。

 エルリアは悠然と剣を構える。


「ギガァー!」


 それを挑発と受け取ったか、ヤツは咆哮とともに大ナタで斬りかかってきた。

 しかしエルリアはそれを軽く受け流すと、胴を薙いだ。そしてさらに、脳天への一撃。


「ギ……ガ……」


 それでもヤツは反撃しようとし……果たせずに力尽きた。



「終わった、か……」


 生まれて初めての殺し合いだ。正直、かなり神経をすり減らした。


「ふぅ……」


 俺はそのまま河原に寝転がる。


「とりあえず生きのびた、か」


 空を見上げた。少し視線をずらすと、エルリアがやってくるのが見えた。


「お疲れ様です、アキト様。お怪我はありませんか?」


 俺のそばまで来ると、膝を折って俺の顔を覗き込んだ。


「うん、大丈夫さ。エルリアのおかげだよ。ただ、精神的にね。こういうの、初めてだからさ」

「そうなんですか? ずいぶん手慣れてるようにも見えましたけど。私も助けられましたし」

「多分それは剣のおかげさ。あっちじゃこういうのとは無縁だし……!?」


 彼女の姿を眺め、あることに気づいた。激しく動き回ったせいで、スカート代わりのマントがはだけかけていた。


「? どうしました?」


 彼女は小首を傾げる。そんな仕草も可愛らしい。が……


「そ、そんなカッコでしゃがんだらさ……」


 そう。丸見えなのである。


「え? い……嫌ーー!」

「ぐわーーっ!?」


 彼女は顔を真っ赤にして叫び……掌から雷撃を放った。

 そして俺は、直撃を喰らい……。

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