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ルームメイトは美少年ドワーフ?

 合格届けを見ながら溜め息をついてると、アリスさんが話し掛けてきた。


「へー、一回で合格かい。思っていたよりやるね」

 俺としては不合格を神様に祈っていたんだけど…だから、受かったのかもしれない。

 俺の信仰する神様は、悪戯が大好きなロキ神様(ししょう)なんだし。


「何回も受ける人がいるんすか?」

 てっきり、ハンセンが特別だと思っていたんだけど。


「そりゃそうさ。あそこには貴族や騎士の子供も通うんだよ。目的は強くなる事と自分の部下を手に入れる事。つまり、うまくいけば良い働き先が見つけられるの訳さ」

 

「冒険者の青田買いっすか…自分の騎士団を作る為っすよね?」

 俺もコウゼン騎士団を作る予定がある…あくまで予定だから入団予定者はなし。


「おや?何でそう思うんだい?」

 アリスさんが楽しそうに笑う。

 その姿はまるで絵本に出てくる魔女…小さい子供が見たら泣くぞ。


「一つは継承権を得る為、強い部下がいるだけで十分な牽制になるっすからね。もう一つは身の安全をか計る為っすよ」

 

「ほー、貴族や騎士なら実家から護衛が着くだろ?」


「護衛が大事なのは本人より仕えている家っすからね。名を汚すと判断されて護衛に殺されたって話をたまに聞くっすよ」

 うちにも騎士や兵士はいるけど、その人達にとって大切なのは給金を出してくれるザイツ家であって俺個人じゃない。

 俺じゃなく姉ちゃんやメリルに婿をもらっても良いんだし。


「今まで何人もの学生を見てきたけど、コウゼンは随分と達観してるね。あんた位の年じゃ色々と夢を見るものなんだけどね」


「うちは貴族でも騎士でもないっすからね。庶民にとって大切なのは叶わない夢より明日の飯っすよ」

 俺は、毎朝鏡を見る度に厳しい現実に打ち砕かれているし、何よりザイツ領に住む人々の明日の飯を保障する責務がある。

 叶わない夢なんて見る訳がない…あり得ない妄想はよくしてるけど。

 でも、クレシタ冒険者高校に通う目標が出来た。

 俺はメント公国で仲間を得て、コウゼン騎士団を作るんだ。


――――――――――――――


 クレシタ冒険者高校の寮は全部で六つあるそうだ。

 まず貴族や騎士のお坊っちゃま、お嬢様が入るフィエリテ男子寮と女子寮。

 こちらは従者や護衛も住むから大きくて綺麗だから当然家賃も高い。

 噂ではコックやメイドがいるらしい。

 そして実力者が入れるヴィクトワール男子寮と女子寮。

 全室個室である程度の自由も許されるとの事。

 ここに入れると、出世街道が約束された事になるらしい。

 そして俺が入るハピネス男子寮と女子寮。

 全室相部屋で家事炊事は自分でやらなきなゃいけない。

 ちなみに一年生は先輩方の家事炊事を押し付けら…代行するのが習わしとの事

きっと、先輩がハピネスになる寮なんだろう。


(俺は腐ってもザイツ公爵家の後継ぎなんだぜ…先輩達に見せてやる!!ザイツ家男子の家事スキルの高さを!!)

 俺が学校の先輩に逆らう訳がない…だって、クレシタ冒険者高校の先輩まじ怖いだもん。

 一人には勝てても、集団でボコられたら確実に負けるし。

 ちなみに相部屋なのは土地と建物都合らしい。  


――――――――――――――――


 俺と一緒の部屋になるのはドワーフとの事。


(おっしゃー!!いくら俺でもドワーフには勝てる!!)

 ハピネス男子寮は風が吹けば軋みそうなアンティークな建物だった。

 そしてドアを開けた部屋にいたのは


「君がモノリス君?僕はクラフト・アングリフ、ハーフドワーフなんだ。よろしくね」


 挨拶も爽やかな美少年でした。

 俺、一発KO。


(マジかよ?ドワーフらしさゼロじゃん…俺もエルフらしさゼロだけど)


「コウゼン・モノリスっす。希望はスカウト科レンジャー志望っすよ」

 挨拶をしながらもクラフト君を観察する。

 童顔で少女と見間違えそうな綺麗な顔。

 背はそれほど高くないけど、手足は長い…モデル体型のドワーフって、俺と真逆じゃん。

 髪は明るい茶髪を短く刈っている、同じ短髪なのになんで俺と爽やかさが段違いなんだろう。


「僕は近接戦科で斧を使う戦士になりたいんだ…ううん、絶対になってみせる」


 爽やかに宣言するクラフト君、ショタなお姉さんが見たら一発で惚れると思う。

 そして斧を使うと言うだけあって、クラフト君の腕は太くて逞しい。


「斧っすか。あれは外すと大変なんすよね」

 斧は遠心力で勢いをつけて攻撃をする。

 破壊力が高いけど外したら無防備になりやすく、ハイリスク・ハイリターンな武器だ。

 だから俺は鬼王子(ガーグ)様に斧でフェイントを使えるにしごかれたんだよな。


「へー、スカウト科希望なのに詳しいんだね」


「スカウト職はパーティの実力を把握する必要があるんすよ。仲間が使う武器と相性が悪い魔物と戦わせる訳にはいかないっすからね」

 騎士や兵士にはそれぞれ得意な武器がある。

 だから頭に立つ人間は武器の長所短所を把握しなきゃいけない。

 正確には、スパルタで体に覚えさせられたんだけどね。


「そっか、もうそこまで考えてるんだ。僕も負けない様にしなくちゃ」

 そう言って、握手を求めてくるクラフト君。

 どうやら、彼は顔も良くて性格も良いみたいだ。


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