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船旅とメント公国

 海に出て2日目…もう家に帰りたくなってきた。

 確かに、段ボール船は高性能だった…でもそれは船としてはだ。

 先ず、直射日光と海からの照り返しで日焼けを通り越して全身火傷状態、ヒールで回復するも追い付かずに全身が痛い。

 日焼けに潮風は泣きたくなる位に沁みる。

 そして段ボール船は沈まない代わりに船酔いがきついくて、初日の昼から飯を食べれていない 。

 3日目、意外な落とし穴だったのはトイレ。

 段ボール船は防水性が高いから水を溢しても染み込んでいかない。

 だから端っこギリギリに立って用を済ませないと、船が臭くなる。

 波でお尻を洗うと後から染みて泣く羽目になる事が分かった。

 4日目、船酔いには慣れたけど夜にぐっすりと寝れないのが辛い。

 段ボール越しの海水は冷たいし、油断していたら波に流されてしまう。

 段ボール船は大量の魔力を流せば速度もあがるし波に関係なく進む事も出来る。

 でも、大量の魔力を流していると、直ぐに魔力切れを起こしてしまうから油断が出来ない。

 確か、ロキバルバまで帆船で40日、段ボール船だと何日掛かるんだろう。

 6日目、人と話をしたい…海しかない光景には飽きた。

 今ならセブンライトの嫌味にも涙を流すと思う。

 8日目、人と話したいなんて思いを彼方に吹き飛ばす位の嵐に遭った。

 蓋を閉めてるから沈没はしないと思うが、波に持ち上げれてから叩き付けられた時にはチビった。

 12日目、人恋しさからだろうか、師匠の幻が見える。

 このまま本当の意味で行方不明になるんじゃないだろうか?


「功善君、君の航海にも飽きたので転移をしちゃいますね」

 気がつくと遠くに街が見えていた。


「師匠、出来るんなら最初から転移をしてくれたら良いじゃないですか?」


「分かりませんか?この数日で君の魔力とバランス感覚、さらに孤独耐性が鍛えられたんです!!段ボールの端で泣きそうになりながらも、用を足した功善君で笑えましたし」

 確かに限界寸前まで魔力を使っていたから魔力は鍛えられたけど、納得は出来ない。


「とりあえず、ありがとうございます。どうせなら岸辺近くにして欲しかったんすけど」


「あそこに見えるのはメント公国の首都クレシタです。昼間にそんな事をしたら密入国で捕まっちゃいますよ。夜になったら闇に紛れて上陸して下さいね」

 その夜、俺は夜の海で体を洗った…ベタつくかも知れないが、臭いよりは増しだと思う。 

 とりあえず明日は荷物の点検をして下宿を探そう。


―――――――――――――――――


 どうも家の家族は心配性らしい。

 時空リュックの中には大量の衣類と食べ物、傷薬や各種薬草、家族全員の絵姿、そして見慣れない金が入っていた。


データボール参照 メート

 メートはメント公国で使われているお金です。

 5と10で区切られて一番高いのは100万メート硬貨なんですよ。

 まあ、100万メート硬貨は殆んど市場では使われないそうです。

 

 数えたら、リュックの中には30万メートが入っていた。

 

(これが下宿代とかの生活費になるんだから無駄使いは出来ないな。よっし、頑張るか)


―――――――――――――――


 クレシタはの第一印象印象は灰色だった。

 街全体に石畳が敷かれており、建物も石で作られた物が多い。

 でも空が抜ける様に青くて冷たさを感じさせない。

 何よりも、街を歩く人の殆んどが猿人だ。

 たまに犬人や猫人がいるけど、エルフは殆んど見掛けない。


(すげー、誰も俺を見て笑わないし、後ろ指も指さない。俺が街に溶け込んでる!!)

 逆にシャルレイン姉ちゃんやメリルがいたら目立つと思う。

 

(まずは下宿屋を探して…そこの可愛いお嬢さんと仲良しになるんだっ!!)

 そしてラブラブになったら、異国の貴族だって伝える…小説みたいな展開を目指すんだっ。

 しかし、俺の儚い夢は1時間後には脆く崩れさってしまった。

 メントで保証人を持たない俺を受け入れてくれたのはアダルトな魅力が満載のアリス婆さ…姉さんが経営してる下宿屋だけだった。


(忘れてた…猿人の80歳って婆さんなんだよな。未亡人?そりゃ猿人の80歳なら未亡人でも不思議じゃないよな)

 俺の街にも80歳の未亡人セリスさん(色んな意味でお世話になってます)がいたから、思わず飛びついちゃったんだよな。


「坊主、下宿代は1ヶ月4万メートだよ。部屋は2階の一番端っこ、飯は朝と夕。うちは女の連れ込みは禁止だからねっ。まっ、あんたはモテなそうだから大丈夫だね」


「分かりました。俺はこの街初めてなんすけど住民になる手続きはどこでしたら良いんすか?」

 クレシタの学校を受けるには、クレシタの住民にならなきゃいけないだろうし。


「それなら早く役所に行きなっ。住民登録は1年で1万メート、役所は家の前の通りを真っ直ぐ行けば見えるでかい建物だよ。さっ、行った行った」


 文字の読み書きが出来たお陰で、手続きはスムーズに行えた。

 何でもクレシタは首都と言う事もあり、進学や就職目当てでくる人が多いらしい。


「それでコウゼンはどこの高校を受けるんだい?」

 下宿屋アリスは数多の受験生が泊まっていたらしく、アリスさんは気になるらしい。


「メント国立高校を受けようと思ってるんすけど」

 親父の話だと、留学生の受け入れ先はメント国立高校らしい。


「馬鹿言っちゃいけないよ、あそこを受けれるのは王侯貴族や金持ちの商人の子供ぐらいさ」

 俺だってザイツ伯爵家の子供…いや、今は一般市民モノリスなんだ。


「成績と金があっても無理っすか?」


「無理だね、考えてもごらん。王子様やお姫様が通う学校にどこの馬の骨とも分からない奴を入れる訳がないだろ?」

 確かにそうだ、国としては王子様に悪い遊びを教えたり、お姫様に悪い虫が着く事は避けたいもんな。


「それなら俺でも入れる高校はどこがあるんすか?」


「そうだね、成績にもよるけど学費が掛からず寮も完備してるクレシタ冒険者高校辺りが妥当だね」

 何だろう、その厳ついお兄さん方がたむろしていそうな高校は…

 部屋には戻るとクレシタ冒険者高校受験案内が置いてあり、大きく創地神ロキ推薦と書かれていた。


(受験案内って、師匠の手作りじゃん…しかも、チラシを再利用してるし)


 とりあえず明日は冒険者高校に行ってみよう。

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