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黒幕

 メデューサ討伐戦の朝、俺達はサルサマ城の前庭に集められていた。庭もかなりオオキク、色取り取りの花が咲き誇っている。


「花なんかを植えて何の特があるんだ?」

 森の近くで生まれ育った脳筋牛人(フォルテ)には、花を育てる感覚が理解出来ないんだろう…珍しい花は貴族や商人に高く売れるのに。


「良く見てみろ。メントで見た事がない花とかがあるだろ?珍しい花を手に入れる事ができるんだぞって、財力を見せつけてるんだよ。それとうちの城は花の手入れをする余裕がありますよってアピールさ」

 (それ)より俺が気になったのは、堀の幅だ。距離が3m位あるから、逃げる時の対策を練っておきたい。


「でも凄く沢山の人が集まったね。まるで学校の朝礼みたいだよ」

 トロイ君の言う通り、前庭には今回の作戦に参加する人が集められていた。前方にはメデューサの視線を跳ね返すんじゃないかって位に、ピカピカの鎧を着た騎士の方々。その後ろにはサルサマ城に勤めている兵士。そして猿人のみで構成された冒険者パーティーが続き、俺達みたいな混成パーティーは最後尾に並ばせれた。


「噂だとメデューサが出現する法則が見つかったみたいだぜ。法則で行くと今日がメデューサが出現する日だから、大量投入して決着を着けたいんだよ」

 法則と言えば聞こえが良いけど、単にこの騒動を引き起こした悪魔(ミッシェルせんせい)の仕事が一段落する曜日なんだけどね。


「皆の者。静にしろっ!!パトス公爵からお声掛けがある」

 虎の威を借りて威張り巻くった騎士が声高に宣言した。続いて現れたのは真っ赤な布地に金糸や銀糸をふんだんにあしらった豪華な服を身に纏った中年男性。食生活が乱れているのか、はたまた運動不足なのか物凄く恰幅が良い…早く言えば派手な服を着た中年太りのおっさんである。


(随分と顔が浮腫んでないか?…それに顔色がかなり悪いな)


「あのおっさん、男の癖に化粧をしてないか?」

 フォルテの言う通り、パトス公爵の顔は真っ白に塗られていた。しかし首の皮膚はどす黒く、パトス公爵の体調の悪さを確認出来る。


「目の(くま)や血色の悪さを化粧で誤魔化してるんだよ。お偉い公爵様がメデューサの所為で寝不足って噂が広まったら、威厳がガタ落ちだろ?」

 寝不足を解消する為に、酒を煽ったらしく顔がパンパンに浮腫んでいる。


「我が神聖なるサルサマ城が醜きメデューサに蹂躙(じゅうりん)されている。あのロキ様が゛初春の青山の様に美しき城゛と褒め称えらたサルサマ城を救った者は、パトス公爵家の家臣に召し抱えてやる」

 …絶対に師匠はそんな事を言わないと思う。何より師匠が許可しているから、ミッシェル先生はメデューサを喚べるんだし。


「今から各パーティーの配置先を教える。パーティーの代表者が受け取りに来い」 

 さて、鬼が出るやら蛇が出る…(エリーゼおばさん)はいるし、(メデューサ)は出るのが確定してるけど。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ここまで露骨な配置をされると、かえって清々しく思えてしまう。配付された地図を確認してみると安全なポイントには自領の騎士を配置し、メデューサが多く出現している付近には獣人のいる冒険者に担当させている。


「この斜線で塗り潰されている場所はなんすかね?場所的に重要な施設もないと思うんすけど」

 俺達が配置された西棟の隅が斜線で塗り潰されているけど、どう見ても行き止まりで重要な場所には思えない。


「そこは立ち入り禁止区域らしいぞ。うちの連中の話だと鉄格子があたらしいぜ」

 エリーゼおばさんはルーンランド特殊隊に命じて、昨日のうちにサルサマ城を調べさせたそうだ。


「鉄格子っすか?何があるんすかね」

 鉄格子は牢屋に使われる事が多いけど、囚人を逃がさない為に牢屋は地下に作るのがお約束だ。


「さあな、警備が厳重らしく、うちの連中でも奥までは探れなかったんだよ。ただ、鉄格子の向こうには豪華な扉があったらしいぜ」

 鉄格子の向こうにある豪華な扉か…怪しすぎるよな。


「エリーゼ様、さっき向こうでメデューサらしき影を見たんすよ。確認しに行かないと不味いっすよね?」

 俺がメデューサらしき影を見たのは、偶然にも立ち入り禁止区域の方向だ。


「この胡散臭ハーフエルフっ!!俺にはメデューサのメの字も見えなかったぞ」


「フォルテ、お前に良い事を教えてやる。例え、見間違いと分かっていても確認する必要があるんだぞ」

 俺の目的はメデューサじゃないんだし。


「コウゼン君、見つかったら不味いよ」


「トロイ君、外交特権って知ってる?俺は王族を狙われたエルフィンの貴族…多少のゴタゴタは押し潰せるんだよ」

 何の為に、ミッシェル先生がとパトス公爵と交渉(おどし) をしたのか分からなくなってしまう。

 立ち入り禁止区域と言うが、別に変な魔力を感じないし警備員も居なかった。


「ネージュ、お前の甘言に乗った所為で我がパトス家は未曾有の危機に直面してるのだぞ!!」

 聞こえてきたのはパトス公爵の叫び声…いや、悲鳴だった。


(聞かれたくない話をするから兵を遠ざけたのか…それなら先ずは絶対結界)

 パトス公爵が見える位地に絶対結界を展開する。パトス公爵は鉄格子の前で地団駄を踏みまくっていた。


「私の策を採用したのはお父上ですよ。それに素人を使えば、簡単に尻尾を掴まれてしまうとあれ程言ったではないですか」


「黙れ、黙れ、黙れ!!早くあの化け物を倒す方法を教えろっ」

 パトス公爵が鉄格子に手を伸ばした瞬間、真っ白な髪が見えた。


(白い髪のエルフ?でも、彼奴はパトス公爵の事を父上って…まさか、彼奴もハーフエルフなのか?)

 そう言えばパトス公爵は白い髪の毛と銀色の髪のエルフを誘拐したって、噂があったよな…パトス公爵は猿人至上主義、ハーフエルフの子供が産まれたら隠すだろう。


(策を採用したのは父上…彼奴が黒幕か!?)

 それならミッシェル先生が調べても黒幕を見つけれなかったのも、納得がいく。まさか、黒幕が鉄格子の向こうにいるなんて思わない。

お陰様でザコ、魔王、マタギがモンスター文庫の一次を通過しました

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