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悪魔な先生

 爆弾テロの犯人に確実に生き地獄を見ると思う。

 何故なら、あのミッシェル先生を怒らせたからだ。

 ミッシェル・スターローズ、ガーグ王子の懐刀と呼ばれている純血エルフ。

 その腹黒さから悪魔エルフとか超ドSエルフなんてアダ名をつけられている。


「さあ、誰と繋がっていたんです?早く言った方が身の為ですよ」

 先生はライトとデスホークを取り調べ中。

 ちなみに俺は立会人。


「僕は何も知らない。知っていてもエルフなんかに言うものか!!」

 ライト君、早く喋った方が君達の為になるんだけど。


「エルフの甘っちょろい脅しなんて俺達には効かないぜ。それに知ってるんだよ…俺達に暴力を振るわない事を条件に尋問の許可をもらったんだろ」

 デスホーク、先生の尋問が甘かったらどんな唐辛子も激甘になるんだぞ。

 ちなみに先生に提示された条件は

・尋問者は武器や拷問の道具を使ってはいけない

・魔法の使用を一切の禁止とする

 先生は非力なエルフだ。

 素手で殴ってもライト達にダメージを与える事は出来ないだろう。

 だから、この条件は一見すると嫌がらせにも思える。

 でも甘い、甘過ぎる。

 先生からしたら穴だらけの条件だと思う。 


「ええ、暴力を振るいませんよ、暴力はね…お二人を椅子に縛り付けて下さい」

 二人が椅子に縛り付けられるのを見てみ先生は大小二つの壺を取り出した。

 どっちも、どこにでもある素焼きの壺である。


「魔法を使えないエルフが俺にダメージを与える事は出来ないぜ。何しろ俺はハードな訓練をしてるから痛いのに慣れっこだしな」

 デスホーク、先生は魔法を使わなくても恐ろしいエルフなんだぞ。


「痛みを我慢する事は出来ても、これは我慢する事が出来ますかね?」

 先生は小さな壺の封を開けると、デスホークの頭の上まで持っていった。

 ゆっくり傾けると、黒く粘っこい液体が垂れていく。


(ひ、酷え。身動き出来ない人間に漆を掛けた!!)

 漆は爺ちゃんが日本から持ち込んだ木から取れる液体。

 これが体に着くと、かぶれて物凄く痒くなる。


「か、痒い…痒い、痒い、かゆーい」


「知ってますか?痒みは痛みと違って我満が出来ないんですよ…まっ、魔法を使わないエルフの戯言ですから聞き流して下さい」

 そう言って爽やかに笑うミッシェル先生…その笑顔はチビりそうな位に怖い。


「ひ、卑怯だぞ。こんな事をして心が痛まないのか?」


「痛んでますよ。みすみす我が王家を危険に晒してしまった未熟さを思うと、心が張り裂けそうです」

 ちなみにデスホークは体を掻きむしりたいが掻けない苦しさからのた打ち回っている。

 先生はもう一つの大きな壺を手に持つと、ライトに近づけていく。


「か、痒みになんて負けないからな」

 強がるライトを見てミッシェル先生は鼻で笑った。


「痒み?そんな芸のない事はしませんよ」

 先生はそう言うとライトに網を被せた。

 全身がすっぽり入る大きな網である。

 先生は網の中に壺を入れると、釘で網を打ち付けだした。

 何が始まるのか分からない恐怖でライトの顔が青ざめていく。

 ミッシェル先生は網が床から離れないのを確認すると、壺を思いっきり蹴飛ばした。

 とうぜん、壺は砕ける。

 次の瞬間、ブオンと重く低い羽音が聞こえてきた。


「ハ、ハト蜂?えげつねえ!?」

 ハト蜂、鳩と同じ位の大きさがある蜂。

 毒こそ持たないが太い針で刺されると死ぬ程痛い。

 ちなみにメリー婆ちゃんはハト蜂の幼虫が大好物。

 壺に閉じ込められた上に、思いっきり蹴られたからハト蜂の怒りはマックス。

 ライトを容赦なく刺しまくる。


(確かにミッシェル先生は直接手を出してないけど…酷え!!)


「痛い、痛い、痛いー!!喋りますから助けて下さい」


「喋る?バトス公爵の事ですか?そんなとっくに調査済みですよ。これはエルフィン王家に牙を剥いた罰なんですから…さっ、モノリス君、向こうでお茶でも飲みましょう」

 うん、もうチビっちゃいました。

 既に情報を手に入れてる癖に、こんな尋問をするんだもん。


「痒い…おい!!かゆっ、モノリス、助けろ!!痒いー」


「痛いっ!!コウサイ君、スターローズ様にお願いして。痛いー」

 無情に閉まる扉…お前ら以上にミッシェル先生のやばさを知り抜いている俺が裏切る訳ないだろ。


――――――――――――――――


 忘れていた、ミッシェル先生は身内にも容赦のない人だった。


「あの先生、もう一回言ってもらえるっすか?」


「良いですよ。バトス公爵に接近して詳しい情報を手に入れて来てもらえますか?大小お漏らしのコウサイ君」

 両方とも先生に原因があるんすけど。


「む、無理っす。俺はエルフィンの人間なんすよ。近付いたら殺されちゃうっす」


「大丈夫です。今回の騒動で我が王家が外交のイニシアチブを取れています。バトス公爵の領地で冒険者学校の実習を行う様にメント公国に圧力を掛けました」

 うん、もうそこまでお膳立てが出来てるのね。


「実習って薬草を取るとかっすか?」


「丁度良くバトス公爵の領地にメドュウーサが出る予定になってます…まっ、私が喚ぶから確定なんですけどね」

 俺の中で、ミッシェル先生が悪魔エルフから魔神エルフにレベルアップしました。

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