表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/44

届いた知らせ

更新リクエストが一番多かったので

 ガーグ王子との試合(しごき)

 いやいや、冗談じゃない。

 今ノコノコと出て行ったら、俺の正体がばれてしまう可能性がある。

 何よりも、痛い目に合わせられるのが確実だ。


「コウゼン・ザ…モノリス、俺の堪忍袋の緒がぶち切れる前に出て来い!!」


(今ザイツって言いかけた?既に切れまくってるじゃないっすか!?) 

 ガーグ王子のハゲ…御頭には無数の青筋が浮かび上がり、目は真っ赤に血走っている。

 どうやら王子は暴れ足りないらしく、バーサークモードに突入中。 

 今はメントの学生とは言え、俺は、エルフィン王家に仕える貴族。

 王子様と試合なんて畏れ多すぎる。

 それに俺の正体がばれたら、エルフィンとメントに不和が生じかねない。 


(そう、これは逃亡じゃなく主家を思っての選択。俺の厚すぎる忠義心が身体を動かしているんだ!!)

 まずはそろりそろりと後退、人の輪を抜けたらダッシュッをする。

 そして忠義に厚い俺は王子との試合よりも、エルフィンの幸せを森の精霊様に祈る事を選んでしまうだろう。

 そろりそろりと後ろに下がると、ドンッと誰かにぶつかった。


「すいません、後ろを…見ていませんでした…」

 後ろを見てなかった所為で誰かにぶつかったらしい。

 そして今一番見たくない人を見てしまった。


「いえいえ、大丈夫ですよ。モノリスさん、我が王子が貴方との試合を所望されていますのでお願い出来ますか?」


「ミ、ミ、ミッシェル先生!?いや、私何かが王子様との試合なんて畏れ多くて胃が痛くなるんすよ」

 そこにいたのは穏やかな笑顔を浮かべる悪魔(ミッシェルせんせい)


「王子はサーベルレオを倒した貴方に興味を持たれてるんですよ…コウゼン君、断ったら社会的に抹殺しちゃいますよ」

 ミッシェル先生は虫も殺さない様な笑顔で抹殺と囁く。

 

「嫌っすよ!!ああなったガーグ王子を止めれるのはシャルレーゼ様とセシリー様だけじゃないっすか!!」


「いえ、もう一つありますよ。好きなだけ暴れればガーグは大人しくなりますから…さあ、王子の所にお連れして下さい」

 次の瞬間、俺はエルフィン騎士団に取り囲まれた。

 純粋エルフとは言え、騎士団の人達はガーグ王子やイントルさんに鍛えられたガチの武道派ばかり。

 必死の抵抗も空しく俺はガーグ王子の元へと引き寄せられリングインさせられた。

 次いでに俺の模造槍も一緒にリングイン。


「よお、コウゼン…俺を待たせるとは偉くなったもんだな!?」

 ガーグ王子が座った目で俺を睨み付けてくる。


「いや、まさかガーグ王子様が俺なんか知ってるとは思わなかったんすよ」

 俺の言葉を聞いたガーグ王子は深い溜め息を漏らした。


「コウサイならもっと上手く立ち回ってるぞ…久しぶりのシゴキだ、血反吐が出るまで鍛えてやらぁ」

 本気だ、何があったか知らないけどガーグ王子は本気だ。


(どうする?まともにやりあったら確実にぼろ負けしちまう。攻撃を受け流してのリングアウト、王子の威厳に思わず後退してしまいたした…これだっ!!)

 いくらガーグ王子でもリングアウトした支援職を追い詰めないだろう。


「あんっ!?試合中に何呆けてるんだ。俺を舐めてんのか!!」

 ガーグ王子の模造鉈が唸りを上げて襲い掛かってきた。


「ちっ!!シールドボール」

 後は隙を見つけて一撃を入れて、ガーグ王子の攻撃を受け流してのリングアウトだ。


「お前は馬鹿か?シールドボールなんざ反吐が出る程見てんだぜ」

 ガーグ王子はそう言うとシールドボールの前で攻撃の構えをとった。


(やべっ、忘れてた。ガーグ王子はシールドボールの事を熟知してるんだ)


「シールドボールの一番の弱点は酸欠になる事なんだろ?何しろ毒も防ぐ位に気密性が高いんだからなっ」

 このままじゃ、ぼろ負けが確定する。

(どうする?下手にシールドボールを解けば攻撃を喰らうだけ…魔法攻撃か?いや、血は薄いとは言え、エルフの王族に初級魔法が通じるとは思えない)

 

「マジックキャンセル&ライトッ」

 いくらガーグ王子でも、この距離でライトを喰らえば一時的に視力が落ちる筈。


「甘えんだよっ!!」

 次の瞬間、腹に強烈な衝撃が走った。


「ぐふっ!!そんな?ライトが効いてない?」


「コウサイのプチフラッシュもお前のライトも効果は一定方向限定だから、予備動作が分かれば避けるのは簡単なんだよ」

 うちの一族の戦法は奇襲がメイン。

 だからネタがばれると、哀しい程に弱かったりする。


(それなら爺ちゃんと違う戦法でいくか…)


「まずはスピード」

 自分にスピードを掛けて素早さを上げる。

「続いてフライッ」

 フライでジャンプ力を底上げしての上空からの奇襲。

 背の低い俺と対峙していれば上空への意識が疎かになっている筈。


「ほうっ、そう来たか?だが甘めぇ!!」

 ガーグ王子は俺の槍を掴むと、力技で闘技場へと叩きつけた。


「へぶっ?」

 そして俺は顔面から突っ込んで、石床とフレンチ・キス。


「馬鹿野郎。長い得物を持った奴と戦う時は常に距離を考えとけって教えたろうが」

 泣きたい位に痛いが、このままへばっていたら気絶する位に痛い目に合わさられしまう。

 槍を杖代わりにして、強引に身体を起こす。


「得物を離さなかったのは誉めてやる。でも、敵は待っててくれないんだぜ」

 フラフラの俺にガーグ王子の模造鉈が襲ってくる。


(チャンス!!あれを防いでリングアウトしてやる)

 攻撃を受けると同時に後方へジャンプ…出来てない?

 どうやら襟首を捕まえられたらしい。


「お前に戦いのイロハを叩き込んだのは誰か忘れたのか?考えてる事なんざお見通しなんだよ…コウサイが倒れた。後、持って半年らしい」

 周りを憚って小声になっていたが、はっきり聞こえた。

 聞こえたけど身体や脳が認めるのを拒否する。


「嘘っすよね。あの殺しても死なない様な爺ちゃんが半年なんて」

 でもそれなら全部説明がつく。

 メリー婆ちゃんがメントに来なかったのは、爺ちゃんの側にいる為だろう。

 父さん達がメントに来なかったのは、政務を引き継ぐ為。

 ガーグ王子が苛立っていたのは、先立つ弟分を救えない歯痒さから。

 俺に厳しくしたのは、爺ちゃんを安心させる為なんだろう。


「彼奴は猿人なんだぜ。八十才まで生きたのが不思議な位なんだよ…コウゼン、覚えておけ。お前もエルフだ。猿人と親しくしているエルフには別れが次々訪れんだぞ」

 ガーグ王子は一呼吸置くと俺を見つめなから、ゆっくりと静かに口を開いた。


「コウゼン・ザイツに命じる。半年の間に祖父を安心させられる手柄を上げてみろっ…なに、お前なら大丈夫だよ」

 爺ちゃんを安心させる手柄か…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ