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ガーグ王子様はエルフです…多分

久しぶりの更新です…待っていた人はいるか分かりませんが

 爺ちゃんは俺に教えてくれたオレンジ果汁が1%でも入っていたらオレンジジュースだって…。

 だからあの人をエルフと言っても俺の罪にはならない筈。

 フォルテが俺を睨んでいるのも気の所為…だと思う。

 そして我が敬愛するガーグ王子様は仮設の演説台で仁王立ちをしていらっしゃる。

 使い古された革鎧、そして愛用のミスリル鉈を持つ姿はどう見ても山賊の親分にしか見えない。

 ガーグ王子様は近接課の生徒を一睨みすると、ゆっくり口を開いた。


「餓鬼共、耳を()穿(ぽじ)ってよーく聞け。今日は荒くれガーグ様が冒険者のイロハを叩き込んでやる!!泣こうが喚こうが足腰が立ってるうちは試合が続くと思えっ!!」

 腹の奥底まで響いてくる太く低い声だ。

 俺も何度あの声に叱責されたか分からない。

 その恐怖は体に染み込んでいるらしく大切な所がキュンと縮み上がった。


「エルフの王子様に質問があります。もし俺達が勝ったらどうなるんですか?」

 場が凍りつく質問をしてくれたのは黒髪長髪の男、ライト笑劇団の一人デスホーク。


「俺は耳が遠くてな…ここに上がってもう一度言ってみろ」

 ガーグ王子様は、そう言うとニヤリと笑った。

 獰猛としか言えない迫力のある笑みだ。


「エルフは長生きですから耳が遠くなるんですね。俺達が勝ったら褒美をくれるんだろ?」


「ああ、良いぜ。ならまず俺の腹を殴って気絶させてみろ。俺は防御をしないから余裕だろ?」

 デスホーク様、お願いですから、これ以上ガーグ王子を刺激しないで下さい…俺に余波がくるんだって。


「はっ、エルフの筋肉なんて、どうせ見かけ倒しだろ?」

 デスホークは後ろに振りかぶってガーグ王子様を殴り付けた。

 しんと静まり返る場内。

 

「モノリス君、大丈夫かな?もしガーグ王子様が怪我をしたら国際問題になっちゃうよ」

 トロイ君はかなり焦っている…いや、冒険者学校の人間の殆どが焦っていた。

 冒険者学校と対照的なのはエルフィンサイド、誰一人として焦っていない。

 むしろ笑いを噛み殺しているエルフがいる位だ。


「焦っているエルフは一人もいないのが分かる?あれは我等がガーグ王子は、あんな餓鬼に負ける訳がないって信頼なんだよ…怪我をするのはデスホークさ」

 当たり前と言うか、ガーグ王子様はノーダメージ。


「褒美ね…くれてやるよ!!しっかりと受け取りやがれっ!!」

 ガーグ王子様はデスホークの頭を両手で押さえ込むと、頭突きをかました。

 あれ、洒落にならない位に痛いんだよね。


「なんだ、この髪は!!敵に掴まれたどうすんだ?こんな風に」

 王子様、お願いですからデスホークの髪を掴んで持ち上げるのは止めて下さい…周りがドン引きしてますよ。


「か、片手でデスホーク君を持ち上げているの?」

 ガーグ王子は宙吊りにしたデスホークに凶悪な顔を近付けていく。

 

「痛い!!放せっ、卑怯だぞ!!」


「冒険者に卑怯も糞もあるか!!依頼を受けたら、どんな手を使っても成し遂げるのが冒険者だっ!!髪が長くて失敗したなんざ言い訳にもなんねーんだよっ!!」

 ガーグ王子はデスホークの髪を離すと、同時に腹を殴り付けた。

 ドサリッと倒れ込むデスホーク。

 さっきとは違う意味で静まり返る場内。

 だってデスホークがゲロってるんだもん。

 再び近接課を睨み付けるガーグ王子。


「ひよっ子共、ピーピー喚くのは勝手だが、違う意味で泣く羽目になるから覚悟しとけよっ!!」

 うん、流石はガーグ王子様。

 そしてフォルテが売られていく仔牛の様な目で、俺を見ているのは気の所為だと信じたい。


―――――――――――――――


 死屍累々、この光景は、それしか言い表し様がないと思う。

 ガーグ王子に挑戦した…させられた近接課の生徒は良くて泣いてギブアップ、下手したら気絶していた。


「次っ、フォルテ。お前の番だ」

 スパン先生が高らかに告げる。


「ほうっ!?お前がフォルテか…良い面構えしてるな。特別に気合い入れて鍛えてやるから泣いて喜べ」

 確かにフォルテは泣いてる…恐怖でだけど。


「いや、俺は普通で大丈夫です。特別な才能もないですし」

 すまん、親友(とも)よ。

 それは俺が原因なんだ。


「お前になくても俺に理由があるんだよ。武器を構えろっ!!」

 試合は木製の武器を使用して行われているが、未だにガーグ王子はノーダメージ。

 

「モ、モーッ!!」

 自棄になったのか、フォルテは棍棒を大上段に振り上げた。


「馬鹿野郎っ!!胴が、がら空きだっ」

 ガーグ王子は、そう言うとフォルテの腹を殴るつけた。

 フォルテの体が、くの字に曲がる。

 いや、牛人をワンパンでしばくエルフって…。


「モ、モ~」

 牛の息、もとい既に虫の息のフォルテ。


「モーモー言ってる暇があったら立ちやがれ!!前衛の仕事は敵を倒す事じゃねえんだぞ。敵を後ろに逸らさないのが仕事なんだよっ!!立てよ、モーモー泣いて仲間が殺されるのを眺めていてーのか?」

 ガーグ王子の迫力にエルフィンサイド以外はドン引きしている。

 リラ先輩に至っては、涙目で祈っているし。


「くっ、分かったよ。立てば良いんだろっ!!立てばっ」


「なかなか根性あるじゃねか。安心したぜ。良いかっ!!前衛は壁だ、崩れたら魔術師や弓兵が危険に晒されるんだぞっ!!攻撃も大事だが捌きも覚えろっ。常に余力を残すのも忘れんなっ」

 そう言いながら模擬鉈で攻撃をしまくるガーグ王子。


「ちっ…情けねえな。悔しいっ」

 フォルテは、自分の不甲斐なさな鳴き始める。


「その気持ちを忘れんなっ…そしたら強くなれる」

 ガーグ王子の強烈なアッパーでフォルテは空へと舞い上がり意識を手放した。

 つうか、対戦相手がフォルテで三十人目なんだけど。

 相変わらず体育会系エルフなんだから。


「次、ライトッ!!」


「デスホークの仇は僕がとるっ」

 フォルテの次に呼ばれたのは笑劇団のリーダー、ライト。


(うん?ライトの腰の辺りが辺に膨らんでねーか)

 あっさり木剣を飛ばされたライトだったが、立ち上がるとガーグ王子に突っ込んでいった。


「いけないなー。こんな物を持ってるとオイタしたくなるだろっ?」

 ガーグ王子に掴まれたライトの手に握られているのは鉄製の短剣。

 ガーグ王子は短剣を奪うと、臭いを嗅ぎ出した。


「毒くらい塗っとけ。それに短剣に意識を囚われ過ぎなんだよっ」

 ガーグ王子はそう言うと、鉄製の短剣を噛み砕いた。

 …あの人はエルフでも猿人でもなく、ガーグって化け物だと思う。


「足りねーな…おい、コウゼン、出て来やがれ!!」

 嘘…俺?

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