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メントとエルフ エルフの王子様

 何て言うか…ご免なさいって、気持ちになってしまう。


「凄え人数だな。みんなエルフを見に来てんか?」

 フォルテの言う通り、エルフィンの王族を一目見ようと港には大勢の人が集まっていた。


「王族や騎士団はお出迎えだと思うけど、殆んどの人はそうじゃないかな。エルフの王子様なんて見る機会はないし」

 群衆の先頭にいるのは、美々しく着飾っているメントの王侯貴族と騎士の方々。

 ちなみに俺達は少し離れた所で護衛をしているから、何を言っても聞こえる心配はない。

 

「このくそ暑い時に、よくあんな格好が出来るな」

 王族や貴族は刺繍が施された厚手の服を着ているし、騎士はフルプレートに派手なマントを着けていた。


「エルフに対抗しようとして派手な格好をしてんだろ。まっ、無駄な努力だと思うけどな」

 ウチの爺さんなら、これ位予想してるだろうし。


「うん?なんか暗くねえか。さっきまで天気が良かったのに曇ったのか?」


「嘘…あんなに大きな船があるなんて…」

 そこに現れたのは巨大な船…正確に言うとガチな軍艦。

 メントの船の数倍の大きさはある軍艦が六艘入港して来たもんだから、港は軽いパニック状態になった。   


(絶対に爺ちゃんの企みだ…実力差を見せつけてイニシアチブを取るつもりだな)

 そして最初に船から降りてきたのはエルフィンの騎士団。

 見た目は線の細いエルフなんだけど、身に纏っているのは使い込まれた鎧。

 剣の柄にも滑り止めの革が巻かれていて即実戦対応が出来る装備だ。

 それでもメントの騎士は、中性的な見た目のエルフ騎士団を見て余裕の笑みを浮かべていた。


「王子が降りてこられる!!全員、抜剣してお出迎えしろっ」

 エルフィン騎士団の団長の言葉で港に集まっている群衆の視線が一艘の船に集まる。

 現れたのはエルフ成分ゼロの男。

 普通、エルフは抜ける様な白い肌をしている。

 しかし、その男は漁師と見紛いそうな赤銅色に日焼けした肌の持ち主。

 普通、エルフは長い髪を好む。

 しかし、その男の頭は太陽を反射して輝く禿げ頭だった。 

 普通、エルフの体格は細見と言われている。

 しかし、その男はメントの騎士がか細く見える程の体格をしていた。

 普通、エルフと言えば、男でも中性的で嫋やかな顔をしている。

 しかし、その男は太い眉毛と分厚い髭を蓄え厳つい顔の持ち主。

 どう見ても山賊の親分にしか見えない。

 そんな厳つい男が桟橋を軋ませながら上陸したもんだから、港が一気にざわめいた。


「あ、あれが…エルフの王子?嘘だろ」

 フォルテは驚きの余り、体が固まっている。


「ガーグ・エルフィンローズ様。あの方がエルフィンの王子さ。フォルテ、試合頑張れよ」

 

「いやいや、牛人よりゴツいエルフなんて反則だろ」

 反則なのは見た目だけじゃないんだけどね。 


「シャルレーゼ様が降りてこられる。全員、片膝を着いて待機っ」

 ざわついていた港が一気に鎮まった。

 シャルレーゼ・エルフィンローズ女王。

 シャルレーゼ様は、一見すると細見の二十代前半にしか見えない。

 しかしルフィンを三百年間統治してきた威圧感は半端じゃなく、港にいた人達は自然とひれ伏す。

 まあ、俺が真っ先に片膝を着いたんだけど。

 シャルレーゼ様はガーグ王子と違い桟橋を少しも揺らさずにゆっくりと上陸した。


「メントの皆様、お出迎えありがとうございます。儂の名前はシャルレーゼ・エルフィンローズ。エルフィンの王女じゃ」

 シャルレーゼ様は、そう言うと穏やかに微笑んだ。


(流石はシャルレーゼ様、メントの王族とは役者が違うな。挨拶だけで港の空気を自分の物になされた)

 軍艦で威圧感を与えた後に、ガーグ王子で度肝を抜いてシャルレーゼ様で人心を掌握。

 そこにはメントの王族に対する配慮は一切ない。

 

(流石は爺ちゃん。エルフィンに喧嘩を売ってきた相手には遠慮が全然ねえ) 

 多分、船の中には大勢の兵士が潜んでいると思う。

 今回の騒動で、胃を壊すメントの王侯貴族は沢山いるんだろうな。

  

――――――――――――――――


 今回、メントに来られたのはシャルレーゼ様とガーグ王子の二人。

 そのお二方が俺の目の前にいる。

 場所はエルフィンの大使館、メント城で歓迎パーティーが開かれるまで待機中との事。

 ちなみにガーポ王子は国政の為に留守居役となったらしい。


「功善、元気そうじゃねえか。そろそろ女は出来たか?」

 そう言って俺の肩をばしばしと叩きまくるガーグ王子。


「おい、馬鹿ひ孫。自分と功善を一緒にするではない。それで功善、何か分かった事はあるか」

 セシリー様は四人目を懐妊中の為、エルフィンに残ったとの事。

 

「メントにおけるエルフの現状ですか?王族や貴族の中に先祖の失敗を隠す為にエルフを悪者に仕立ててる奴がいるみたいです。エルフ側は鎖国状態なので正確な情報は得れていません」


「エルフが奴隷にされているってのは本当か?」

 ガーグ王子が最優先するのは自国の民の安全。


「奴隷にされているのは事実です。聞いた話だと犯罪を犯して国外追放をされたエルフや誘拐されたエルフが奴隷にされてるみたいですね」


「誘拐?国は何も言わないのか?」

 王子、ガチで怖いから俺を睨まないで欲しいです。


「勝手にエルフの国から出るのも重罪になるみたいなんですよ。でも自国では高くて買えない薬なんかを買いに国から出るエルフも少なくないそうです」

 他国から商品を仕入れてくるのは商人や冒険者らしいが、文字通り命懸けの仕事だから値段を高くするそうだ。

 

「どっちもどっちか…それと明日は暴れて良いんだよな」


「ええ、冒険者のイロハを体に叩き込んでやって下さい」

 俺は王子の勇姿を目に焼き付けながら、一生懸命応援をする予定。

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