新たなライバル?
胃が痛い、酸っぱい物が込み上げてき来てキュッとなる。
ふと、爺ちゃんの故郷の歌が頭をよぎった。
正に気分は市場に売られていく子牛、おあつらえ向き俺は馬車に乗っているし。
ある晴れたら昼下がり ニジヌーイに続く道
コモノが馬車に乗せられ犬死にさせれられに行く
何故か師匠の楽しそうな歌声が脳内に響き渡る。
「コウゼン、馬車に酔ったのか?」
フォルテはどこをどう勘違いしたのか、俺が馬車に酔ったと思ったらしい。
「違うつーの、プレッシャーで胃が痛いんだよ」
サーベルレオを倒せなければ俺に待っているのは爆死。
それでなくてもニジヌーイ平原は危険な場所、いくら万全の準備をしていても楽観視は出来ない。
「確かにな。でも彼奴等は違うみたいだぜ」
俺達Cグループは数台の大型馬車に乗せられてニジヌーイ平原に向っている。
「ニジヌーイから僕のレジェンドが始まるんだ!!僕がメントの救世主になる!!」
その少年は馬車の中で決め顔を作っていた。
少年は燃え盛る炎の様な紅い髪をしており、まだあどけない顔をしている。
「ライト、無理はしちゃ駄目だよ」
決め顔のライト君に金髪の少女が涙目ですがり付く。
少女は可愛らしい顔立ちで金髪を肩まで伸ばしている。
「レイン、安心しろ。ライトは黒翼の死神が守ってみせる」
黒い髪を腰まで伸ばした少年が静かに宣言をした。
ライトと違いキリッとした顔立ちをしており、肌は抜ける様な白さを持っている。
「そうだよ、デスホークの言う通り僕達四人が集まれば無敵なんだから」
青い髪をショートにしている少女が無邪気に笑う。
中性的な顔立ちで元気な少年にも見える。
「あれはどこの劇団員だ…いや、お笑いか?」
「ライト・チュニーと幼馴染みだよ。ライトの父親は元宮廷騎士なんだってよ」
またベタな奴が出てきたな。
「フォルテ、随分と詳しいな。あの中二笑劇団の隠れファンなのか」
「違うつーの、あの四人は俺と同じ近接課なんだよ」
うん、絶対に近接課には近づかない様にしよう。
「前衛四人のパーティー?凄い度胸だな」
いや、衆目の前で救世主宣言が出来る度胸があれば平気か。
「さあな。俺も連中とはあまり話した事がないんだよ」
その気持ちは凄い分かる。
あれは絡むとこっちが丸損する人種だ。
「ライト・チュニー…まさか、サンダー・チュニーの息子か?」
ゼーロが驚いた様子でポツリと呟く。
「知り合いっすか?」
「父上の知り合いと言った方が正確さ。サンダー・チュニーは王宮騎士団に所属していたがふ、婦女子の下着を窃盗した罪で退団させられたんだ」
ゼーロの顔が茹でダコみたく赤くなる…権力闘争に敗れたとかじゃないんだ。
(息子に下着ドで首になったと言えず、散々ホラを吹きまくったから、あんな残念なのが出来上がったんだな)
ちなみに俺は父さんの武勇伝を母さんから教えられた。
闘い方より、いかに父さんが格好よかったかを母さん視点で語る甘々な物語だけど。
「ゼーロ、その話は他言するなよ。それとあのパーティーとは距離をおく」
俺の闘い方は、あの手のタイプには蛇蝎の如く嫌われるんだし…顔は女子にも嫌われてるけど。
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その日、馬車が停まったのは割りと大きめの宿場町。
「今日はこの町に泊まって、明日各々ニジヌーイ平原に出発してもらう。期間は五日、みんなの健闘を祈る。それと馬車は使えないから覚えておけ」
引率の先生が淡々と説明をする。
「モノリス君、何で馬車が使えないのかな?」
野外依頼をこなした事がないトロイ君は知らなくても無理はない。
「馬は肉食獣や魔物にしてみれば食い出のある餌っすからね。馬車を使った依頼なら馬車専用の護衛も必要になるっす」
依頼をこなしてヘトヘトになって帰って来たら馬が骨になって帰れなくなったなんて笑えない。
「それじゃ明日は早く帰れる様に日の出と共に出発にするのか?」
「明日の午前中は町で情報収集と食料や水の確保に使う。それで午後に出発して途中で野営をする。今どんな魔物が出没しているかとか、どの辺にどんな魔物が出るかを予め聞いておくんだよ」
予想外に強力な魔物に遭遇したら全滅しかねない。
勝てない敵からは逃げる、それが基本。
何よりも、後から行く事で場所を確認できる物があるし。
そんな話をしたら真っ赤な髪が近づいて来た。
「ゼーロ・カクチェス!!今回の野外遠足で僕達が勝ったら父様を王宮騎士団に復帰させる事を誓えっ」
そう言うとライトはゼーロをビシッと指差す。
唖然としていると、ラシーヌさんが近づいて来て小声で”お願いします”と囁いてきた。
仕方ながない…いきますか。
「馬鹿っすか?息子のゼーロには、そんな権限も責任もないっすよ。それに俺達が勝ったら何をしてくれるんすか?同条件で行うのが取り引きの基本すよ」
「そいつの父親は卑怯な策略で父様を貶めたんだぞ。罪を償うのは当たり前じゃないか!!」
当たり前と来たか。
ミッシェル先生曰く交渉に置いて決めつける言動は諸刃の剣、何故なら相手に論破されたら諸に返ってくるんだから。
「証拠はあるんすか?今のは立派な脅迫罪になるっすよ。それに証拠がないんなら偽証罪にも問えるっす。それに見合った見返りは用意してるんすか?」
こちとら、リアル政治家に血反吐を吐くまで鍛えられてきたんだ。
思い込みの言い掛かりぐらい簡単に論破出来る。
「ぎ、逆に何なら満足するんだよ?」
「騎士団に入団したら得れる給与や名誉を基準に考えるんすよ。ああ、それとハンデは必要っすよね。俺達の方が二人も多いっすからハンデが欲しいんじゃないんすか?」
これだけ言っておけば、後から人数が少なかったと言い訳は出来ないだろう。
「そんなの要らないよ!!むしろハンデをくれてやる。僕達四人の強さを見たら驚くぞ」
「くれるんならありがたくもらうっす。でもゴブリンも倒さなそうだから止めておくっす」
「馬鹿にするな!!ゴブリンなんて雑魚は何百匹でも倒してやる」
これで確定した、ライト達弱い。
そしてこれでサーベルレオと戦う口実が出来た。
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