野外遠足と先輩
サーベルレオの倒し方なら知っている。
大楯で囲んで弓や魔法で攻撃するのが基本で、絶対に近接戦なんか挑んじゃいけない。
ゴツい爪は人の顔を簡単に潰しちゃうし、噛みつかれたら最後確実にあの世行きだ。
何よりライオンの狩りは集団で行われる。
一頭を攻撃している隙に後ろから襲われでもしたら、瞬殺されてしまう。
(マタタビでも使うか?いや、他のサーベルレオが集まって来たら最悪だ…待てよ、ヘイムランドの大使館にあれがあるんじゃないか?)
最悪の場合はシールドボールに閉じ込めて崖から落としても良いんだし。
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貴族の取り巻きをしている連中なんて、現金で身勝手だ。
それが目に見えたのは野外遠足のパーティーを登録する日。
校庭にはパーティーを組んだ一年生とと監督役をする上級生が待機していた。
「なんつーか、狙われた俺が言うのもあれだが…哀れだな」
「殆んどの取り巻きは実家に呼び戻されたんだろ。スカウトなしで森を歩くのは自殺行為なんだけどな」
どうやらサマオーレはパーティーを組む相手が見つけれなかったらしく、トロイ君の幼馴染みと二人で来ている。
無駄に豪華な装備が哀れさを増す。
サマオーレの取り巻きの殆んどはイーエラ家に仕える騎士の後継ぎ以外で構成されていた。
彼等の親にしてみればイーエラ家の後継ぎがケンキョウさんに決まった今サマオーレに子供を預けるメリットはない。
むしろ罪を犯して継承権を失ったサマオーレの側に置くのはデメリットでしかない。
取り巻きもサマオーレ個人ではなくイーエラ家に仕えているんだし。
(あれは俺だな、俺個人と組んでくれるパーティーを確保出来きゃ俺もサマオーレみたいになる可能性がある)
事実、エルフィンで俺個人に仕えてくれた人はいないんだし。
トロイ君の幼馴染みはパーティーを組んでくれる人がいないし、トロイ君のパーティーを罠にはめようとしたら手前、実家にも戻り辛いだろう。
「コウゼン君、噂は聞いているよ。なんで同じパーティーなのに僕達を誘ってくれなかったんだ」
「お坊っちゃま、もう少しご自分の立場を自覚なれてはどうっすか?宮廷騎士の息子なんかがいたら目立ってしょうがないんすよ?」
どうやらゼーロは置いてきぼりにされたのが気にくわないらしい。
高そうな鎧を着たイケメンなんて目立ってしょうがないだって。
「それよりイーエラ子爵とイーツゴ男爵がコウゼンさんの後ろ楯になったと言うのは本当ですか?」
流石は宮廷騎士の息子に仕えるメイド兼務スカウト、ラシーヌさんはある程度の流れを掴んでいるらしい。
正確には後ろ楯にさせられた…いや、師匠やエルフィンとの繋がりを持つ為に進んで後ろ楯になったと言う方が正解だろう。
「色々とあったんすよ…それと詳しく知っているんなら触れて欲しくない事があるって分かって欲しいっすね」
ここにはトロイ君がいるんだし。
「分かりました、でもあの手の噂は直ぐに広まりますよ」
「一応、手は打ってあるっすから」
フォルテの妹プリエさんはイーツゴ男爵の援助を受けてのクレシタの学校に入学する事になっている。
そして家庭教師はトロイ君…たまに他人の恋じゃなく、自分の恋の為に動きたい。
「あの、ゼーロ・カクチェス様のパーティーはこちらでよろしいでしょうか」
声を掛けてきたのは眼鏡を掛けた小柄な女性。
茶色い髪を肩まで伸ばしお淑やかそうな雰囲気がグット。
きっと、”コウゼン君、メッですよ”とか言われた惚れてしまう。
(イメージ的には図書委員って感じだな…これは今度こそ俺に春が来たかもしれない)
俺はどっちかと言うと母性本能をくすぐるタイプだと思う、いや思いたい。
「そうっすよ。先輩が監督をしてくれるんすか?あっ、俺はコウゼン・モノリスっす」
さりげない自己紹介でポイントアップを狙う。
「私はリラ・ライブ。二年生の魔法使いです」
穏やかな笑顔で挨拶をしてくれるリラ先輩…いつかはリラさんとお呼びしたい。
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ラシーヌのローゼお嬢様観察日記
最近のローゼはかなり浮き沈みが激しい。
コウゼンさんに置いてきぼりを食らって不機嫌になったり、再会して嬉しい癖に照れ隠して怒ってみせみたり、リラ先輩にコウゼンさんが鼻の下を伸ばしたらあからさまに不機嫌になったり。
ローゼに一言、コウゼンさんにとって貴女は男なんだからツンデレても無意味なんだよ。
同性ツンデレはマニア過ぎる。
それよりも謎なのはコウゼン・モノリスだ。
今回の事件は確実に情報操作がされている。
噂では王様まで関わっているらしい。
最初は世馴れたスカウトと思っといたが、彼には何かあるかも知れない。
それにしてもリラ先輩とコウゼンさんの会話に一々リアクションするローゼは面白い。
女性キャラが出てもハーレムにはなりません
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