野外遠足は恐怖の幕開け?
これから俺は攻略困難なミッションに挑む。
扉の向こうにいる敵は強く、成功する確率はかなり低い。
でも、爺ちゃんが言っていた”勝負は機制を制すれば、優位に進む”って。
だから、俺は先制攻撃を決めるんだ!!
「ミッシェル先生、経費を下さい」
執務室の扉を開けると同時に土下座を決める。
そして経費を貰えるまで、俺は絶対に床から頭を離さない。
「功善君、何をしてるんですか?教えましたよね、話をする時は相手の目を見ながらにしなさいって。それじゃ相手の表情が読めませんよ…それとも君は私が土下座をされて喜ぶ器が小さいエルフだと思っていたんですか?」
ミッシェル先生の冷たい言葉が頭上から降ってくる。
(先生良く政敵を土下座をさせて嘲笑してたじゃん!!)
「いえ、これは誠意の表れでして」
「…そうですか…それなら私も誠意を表しますか」
そう言ってミッシェル先生は片膝をつき始めた。
「だー、勘弁して下さい。止めて下さいよー」
「土下座位で騒いでどうするんですか?確かに土下座はプライドが高い相手の心を折る時や虚栄心を満たす時には有効です。だから有用ならいくらでも土下座をしなさい。でも相手に合わせた交渉術を身に付けないと立派な領主にはなれませんよ。それで何にお金を使うんですか?」
流石は先生、伯爵家の跡継ぎにでも土下座を推奨するんですね。
「今度、学校で野外遠足があるんすよ。装備やキャンプ用品を買う金が必要なんす」
野外遠足、名前は可愛らしいが内容はハード。
生徒はパーティーで行動し、与えられた課題をクリアしなければならない。
当然、移動は徒歩で野営も必要になってくる。
監督として二年や三年が着くらしいが、基本は手出だしをしないそうだ。
貴族の中には人を雇いレジャー気分で参加する人もいるらしいが、同じ貴族でも俺はその選択肢を選らばない。
そんな事をしたら、絶対に師匠が何かをしてくるだろう。
「それでしたら必要な物資をエルフィンから送らせます。装備にしろキャンプ用品にしろエルフィン製の方が質が高いですし」
「エルフィンからって野外遠足は二週間後なんすよ。間に合わないですって」
「何を言ってるんですか?新型船を使えば片道三日ですよ?」
…へっ?…えー!!
それじゃ、あの段ボール船の恐怖は何だったの?
「分かりました、キャンプ用品一揃えと武器を三人分お願いするっす。防具は身体に合わせなきゃ意味がないですから買っていいっすよね」
決して、値切ったりちょろまかしたりして何時か来るであろうデートに備える為ではない。
「防具はヘイムランドの大使館で直してもらえますよ。イーツゴ男爵からの礼って事にすれば怪しまれないでしょうし」
注文したのは俺が杖としても使える仕込み槍と動きやすい軽鎧、フォルテが棍棒にフルアーマー、トロイ君は杖にローブ。
でも、これで安心だ、魔物も怖いが自然も怖いんだから。
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寮に戻ると、クラフト君が額に皺を寄せながら紙を睨んでいた。
それが絵になるのはずるいと思う。
「おっ、課題が発表されたんすね。クラフト君達は課題を何にするか決めた?」
「ううん、どれが良のいか全然分からないよ。コウゼン君はどれにするの?」
俺の机に置いてある紙を見てみると、課題とポイントが書かれていた。
ゴブリン一匹五ポイント(巣の壊滅なら五十ポイント加算)
オーク一匹三十ポイント
トロール一匹五十ポイント
ジャアイントシープ一頭七十ポイント
サーベルレオ百ポイント(創地神の本日のお勧め課題)
何かあからさまに字体が違う物が書き足されていた。
(師匠、居酒屋の本日のお勧めメニューじゃないんすから)
「まずオークは繁殖期で気がたってるからなしだね。自信があればジャアイントシープ、なければゴブリンを無理せず倒すのが安全だよ」
個人的な理由でトロルはパスだ、イントルさんには恩義がありまくりだし。
「だよね。サーベルレオは強すぎるし」
「だよね、サーベルレオは不味いよね」
みんなになんて説明しよ。
データボール参照 サーベルレオ
サーベルレオは鋭く長い牙を持つライオンさんです。
ジャアイントシープやキングオークーを餌にする恐怖のハンターですよ。
下手な冒険者が挑めば、人生のお休みを見つめてくれるライオンさんになっちゃいます。
うまく倒せたら優しい神様が御褒美をくれると思いますよ。
PS、逃げでも転移魔法を使っちゃいます。
優しい神様は無謀な挑戦をさせないと思うんだけど。
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