いつの間にやら留学生?
ザコの幕間と設定を変えています、あれは読み切りと思って下さい。
俺の家があるのはザイツ領グレイトロッキシティ。
学校がある首都エルフィンからは普通の路線馬車なら2時間、我が家のシルフィドーホースなら30分。
我が妹のメリルは、その30分もフル活用したい様子。
「確かにそうだけどさー、コストを考えたらあの二人は微妙なんだよね。どうせ雇うなら能力も忠義心も高い方が良いに決まってるし。お兄ちゃんの幼馴染みって事以外はメリットがないんだよ」
「メリル、甘いわね。幼馴染みの雇用は関係が停滞しがちだし、他者の嫉妬を買いやすいからむしろデメリットよ。だからコウゼンも距離を置いてるの。それに下手にクビにしたら、従業員の意欲が減退するじゃない」
姉ちゃんとメリルは学校では世間知らず箱入り娘と言われている。
我が姉妹ながら見事なまでに化けの…ネコを被っていると思う。
「前に爺ちゃんに言われたんだよ。どんな能力の人間でも使える様になれって、あの2人をうまく使えていな俺が駄目なんだよ」
俺は将来、家臣と共に領地を運営をしなきゃいけないんだから。
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ザイツ領はバルドー聖王国との国境にあり、またの名をエルフィンの玄関口。
その為、訪れる観光客も多い。
「エルフさんの薬草茶3袋にメリーさんの弓矢クッキー2箱、そしてザコ特製チーズケーキが3箱ですね。毎度ありがとうございました」
俺のバイト先は家で経営している土産物屋、従業員は当然、エルフかハーフエルフ。
俺は美男美女のエルフに気後れ(きおくれ)する人や、彼女連れの人なんか相手にする事が多い。
爺さんがエルフィンに来た頃は鎖国していたらしいけど、今は観光客を呼んで外資の獲得をはかるまでになった。
しかし閉鎖的だったエルフィンの民に全く抵抗がなかったかと言えば嘘になる。
それを少しでも軽減する為に爺さんはヒューマンって概念を広めた。
ヒューマンは知恵ある二足歩行の種族を総称した名前で、エルフも猿人もドワーフも犬人もヒューマンとなる。
でもセブンライトの様にヒューマンの名称を忌み嫌いエルフは別格と主張する困ったちゃんもいる。
「毎度ありがとうございます。また、入らして下さい」
だから俺は土産物屋に来て頂いたお客様を笑顔でおもてなしする…それに家は自分の小遣いは自分で稼ぐが暗黙の掟なんだよね。
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伯爵家の屋敷と言えば普通は城レベルらしい。
しかし、我が家は普通の一戸建て、ちなみに執務兼防衛用の公館の庭に建っている。
「ただいまー、母さん今日のご飯はなに?」
「コウゼン、お帰りなさい。今日はコウゼンの好きな生姜焼きよ」
出迎えてくれたのはセレーノ母さん。
母さんは純血エルフなだけあって下手をしたら、俺より若く見られる。
エルフだからあまり肉を好まないんだけど、俺達の為に肉料理を作ってくれる優しい母さんだ。
「ラッキー、それじゃ風呂に入ってくるよ」
「ゆっくり温まって来なさい…コウキ、生姜焼きを喜ぶかな?5人目、出来ちゃったりして!!」
正確には父さんと俺達の為に肉料理を作ってくれる優しい母さんだ。
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その頃、エルフィン城ではある話し合いがされていた。
3年前に外海を渡れる大型船が作られ、他の大陸との国交が始まった。
その大陸の名前はバルバ、正確にはロキバルバと言う。
創地神ロキが己の髭を抜き海に投げ捨てた事により出来たと信じられている。
「バルバにあるメント公国から交換留学が提案されました。バルバの生徒の受け入れ先はルーンランドに決まりましたが、問題はエルフィンから誰を出すかです」
会議の口火を切ったのはエルフィンの外務大臣イントル・ハンネス。
「王族や貴族のガキで適当な奴をやれば良いだろ?」
答えたのはエルフィンの王子ガーグ・エルフィンローズ。
「はー、儂は何時引退出来るんじゃろ?全く、ただ行くだけじゃなく、何かを得て来なければ意味がないじゃろうが。条件はある程度の才があり機転も利き異国に喜んで行く者じゃぞ?決めずに命を降しても使い捨てにしか成らぬ者か身代わりの庶民を出すに決まっとろうが。どこぞのスケベ王子みたいに3人も子供がいる方が珍しいんじゃからな」
溜め息を吐きながらガーグを睨み付けたのはエルフィンの女王シャルレーゼ・エルフィンローズ。
エルフは長命の為に、子供を多くは産まないのである。
ちなみにガーグは愛妻セシリーとの間に3人の息子を設けていた。
「あー、ついさっき師匠からコウゼンを留学させろって連絡があったっんすけど」
申し訳なさそうに口を開いたのはザイツ伯爵こと財津功才。
「コウゼンはまだ14才だろ。確かに、機転は利くし俺やイントルが鍛えたから能力的には申し分はねえが…エルフには見えねえぞ」
「いや、見せかけ代表は希望制にしてバルバを探らせる役目はコウゼンに任せればよい。何より創地神様の言葉を無下に断る訳にはいくまい」
重々しく頷くシャルレーゼであったが、素直に頷けない者もいた。
「ちょっと待ってくれ。コメットの奴はコウゼンを可愛がってるんだぞ。家が気まずくなるだろ」
先に口を開いたのはガーグの息子のガーボ、ガーボはコウゼンの姉コメットを嫁にもらっている。
「今の話じゃコウゼンに人をつけれないじゃないですか?確かに、あの子は一通りの事は出来ますが、まだ子供なんですよ。コウゼンを一人で異国に行かせるんなら俺とセレーノが代わりに行きます。何よりメリー母さん、セレーノ、コメット、シャルレイン、メリルが反対しますよ」
次に口を開いたのは功善の父親の功貴
。
ちなみに功貴は功善が自分の背を追い越す事や、風呂で功善に背中を流してもらうのを楽しみにしている。
「コウゼンを可愛がってるいるのはお前達だけではないわい。儂も一人で異国になんぞ行かせたくはないが創地神様の言葉は絶対なんじゃよ」
「それにコウゼンは一回エルフィンから離れた方が良いんだよ。コウゼンはエルフやザイツの家名を気にしすぎているからな。何より俺の孫だから、絶対にでかくなって帰ってくるさ。」
女王と祖父の言葉に周りは頷くしかなかった。
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