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孫には孫の闘い方予測編

 背後から聞こえてきた音は、例の冒険者が立てたんだと思う。

 音を立てたのがヴィーグル村の住人なら、直ぐに声を掛けてくるんだから。

 だから

「俺とトロイ君にシールドボール」

 

 冒険者にとって、フォルテは大事な金蔓だから攻撃をする確率は低い。

 問題は俺とトロイ君のどっちを攻撃してくるかだ。

 俺の背後でカツンと音がして、ナイフが弾かれる。


(俺狙いか…最悪だな)

 並び順はフォルテが先頭で次が俺、トロイ君は一番後ろにいる…そう、冒険者は一番近くにいるトロイ君じゃなく俺を狙った事になる。

 アラルウネラは倒せたし、あの冒険者を倒す方法は考えている…だけど結果は最悪の展開になるだろう。

 マジックキャンセルでシールドボールを消して、冒険者を刺激しない様にゆっくりと振り返る。

 何しろメントへの大切な交渉材料になるんだから、生け捕りにしなきゃいけない。


「ダークミスト&スピード」

 ダークミストで冒険者の視力を封じる。

 冒険者は罠か何かに掛かったと勘違いして、その場から逃走しようとした。

 でも残念ながら、それこそ俺が仕掛けた罠なんだ。

 俺は冒険者の足が、どんなに早くても追い付く仕掛けをしてあるし。

 次の瞬間、ド派手な音を立てて冒険者は木に激突した。

 そりゃそうだ、俺がスピードを掛けたのは冒険者。

 視力を封じられた人間が、森をきちんと走れる訳がない。

 しかも、知らない間に加速させられていたら木に激突して当然。


「おい、コウゼン。何があったんだ?」


「モノリス君が知らない魔法を唱えたと思ったら、物凄い音がしたけど」

 ようやく我に帰ったのかフォルテとトロイ君が質問をしてきた。


「何ってアラルウネラを仕込んだ犯人を捕まえたのさ…フォルテ、こいつが妹さんに苺を取りに行く様に言った奴だろ?」

 冒険者の男は木に激突して鼻血を流しているが、普段なら人に爽やかで誠実な印象を与えると思う。


「ああ、そうだけど…なんでこの人が犯人だって証拠があるのか?」


「今の所は状況証拠さ。まっ、俺に対する殺人未遂は確定しているから、ゆっくりと自白に追い込んでやるよ」

 とりあえず冒険者はアラルウネラの蔦で縛り上げておく。


「状況証拠?いや、この人は薬を調達してくれたんだぞ」


「よく考えてみろ。今回の騒動は不自然な点が多すぎるんだ。誰かが書いた胸くその悪いシナリオなんだよ」

 まぁ、爺さんや先生に鍛えられた俺からしたらお粗末すぎるんだけどね。 


「モノリス君、不自然な点ってなに?」


「まずはヴィーグル村まで一人で来れた冒険者が、なんでフォルテの妹に苺を取って来る様に頼んだと思う?ゴブリンも出ない森なんだから自分で取りに行けば無料(ただ)なんだぜ」


「そりゃ、この人からしたら大した額じゃないからだろ?」


「それだったら村で買えば確実にしかもうまい苺が買えるんだぜ?次になんでフォルテの妹はアラルウネラに会ったのか。多分、アラルウネラは苺が群生している場所に植えられたんだと思う」

 フォルテとトロイ君が顔を見合わせる。


「それじゃ、この人が仕組んだの?」


「そう、こいつはフォルテの妹をアラルウネラに襲わせたいから苺を取りに行く様に頼んだのさ。多分、アラルウネラを植えた時に近くの苺を無くしたと思う」


「森の苺を無くすって、どうやるんだよ?仲間でもいるってのか?」

 確かに、こいつ一人なら不可能だ。


「ちょっと知り合いに頼んで調べてもらったらある貴族のお坊っちゃまが魔物使いを雇ってんだよ。恐らく鳥系や狐系の魔物に苺を食べ尽くす様に命じたんだろ…ここだけを残してな。そしてこいつが魔物使いだとすると他の不自然な点も説明がつくんだよ。なんで妹さんを探しに来た村人がアラルウネラに襲われっかたのか、そしてなんで妹さんは毒で苦しんでるだけなのか?」

 答えは簡単、妹さんを見つけさせる為に村人には手を出さないように命じたから。

 そして、フォルテが身売りを決めるまでの時間を稼ぐ為にアラルウネラの毒を調節したんだろう。


「おい、この森はイーエラ領と繋がってるんだぞ…まさか?」

 イエーラ領からなら、アラルウネラを人目に着かない様に運ぶ事が可能だ。


「ああ、ついこないだサマオーレが吠え面かかせてやるとか絡んで来たからな。多分、パーティを解散させたかっだんろ?若しくは奴隷にしたフォルテを自分のパーティに入れるつもりだったんだろうな」

 そしてボッチになった、俺を笑うつもりだったんだろうな。

 そんな話をしていたら、例の冒険者が目を覚ましたから俺のパーソナルカードを見せて小声で脅しておいた。

 

「今からのイーツゴ男爵の兵が来るから全部自白する事をすすめるっすよ。そうしたら罪を軽くする様に取り計ってもらうっす…嫌なら他国の貴族を襲った罪で死刑になるだけっすよ」

 多分、この胸くそが悪いシナリオを書いたのは冒険者でもサマオーレでもないと思う。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 功善がエルフィンの大使館を出て十数分後、イーエラ子爵の当主テモット・イーエラは恐怖にうち震えていた。

 エルフィンの大使館から長男ケンキョウの治療が申し出があったので、喜び勇んで来てみれば四男サマオーレの罪を告げられたのだ。

 イーツゴ男爵領に魔物を放って領民を襲わせた。

 その所為で同室にいるイーツゴ男爵に殺気を含んだ目で睨まれている。

 更にエルフィンの貴族のパーティの一人を奴隷にしようとしたしらしい。


「コウゼン・モノリスは母方の姓を名乗っていますが間違いなく我がエルフィンのザイツ伯爵家の長男です。ついでと言ってはなんですが女王シャルレーゼと王子ガーグはコウゼンを大変可愛がっていましてね。ガーグに至っては、コウゼンに何かあれば軍を率いて攻め込むと言っているんですよ」

 目の前にいるエルフの男性は穏やかに話しているも、それは立派な脅迫。


「攻め込むとは冗談ですよね」

 エルフィンはメントより軍事力が強いとはいえ、海外にある一国にしか過ぎない。

 伯爵の長男一人の為に、攻め込む事はないだろう。


「ええ、でもコウゼンが殺されでもしたら分かりませんよ。何しろザイツ家は三英雄の一人でルーンランドやデュクセン、オーディヌス各国に縁戚がいますからね。あまりふざけた殺され方をしたら、オーディヌス全部が怒りますよ」

 怒りますよ、と言った瞬間のミッシェルの視線には一切の感情が込められていなかった。


「あのケンキョウの治療をしてくれるのでは」

 

「ええ、ケンキョウ様にならエルフィンも仲良く出来ると思いますから。是非とも治療をさせて下さい」

 先程までとうって変わって穏やかに微笑むミッシェル。


「そうですか、ちなみにコウゼン様はどちらにおられるんですか?」


「コウゼンはヴィーグル村へ行ってますよ…あぁ、言い忘れていました、ザイツ家はロキ様の守護を受けているんですよ。そしてコウゼンの名付け親もロキ様ですし、コウゼンがメントに来たのもロキ様のご意志なんですよ」

 全てを聞き終えたイーツゴ男爵は顔を青くして足早に部屋を立ち去っていった。

 もし、サマオーレが雇った魔物使いがコウゼンを殺す事があればメント公国は滅亡するだろう。

 能力がある長男とメントの滅亡を防止、考えるまでもなく答えは出ている。

 

「分かりました、サマオーレは死罪に致します」


「その必要はありません。彼の継承権を廃止して実家からの送金を取り止めるだけで構いませんよ。それとコウゼンの事は内密にして下さいね」

 テモットはミッシェルに涙を流しながら頭を下げるが、その心を知ったら愕然としただろう。

 ミッシェルはサマオーレを功善が成長を促す為の肥料としか思ってないのだか。


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