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孫には孫の戦い方、戦闘

 ヴィーグル村に入ると、鶏が足元を駆け抜けて行った。

(鶏まで放し飼いかよ。卵集めるのが大変なんじゃねえか…あー、鶏小屋も爺さんが伝えたんだもんな)

 

 ヴィーグル村は広さと建物の大きさ以外は特徴がないのどかな村。

 村の広さと建物の大きさは体が大きな牛人が住んでいるからだろう。

 

「フォルテ、宿屋はどこにあるんだ?」

 個人的にはヴィーグル村には宿屋がないから村長の家にお泊まり、そして村長の娘さんと仲良くなるパターンに期待をしている。


「宿屋?それなら家に泊まれば良いだろ。金が勿体ないぞ」

 フォルテが呆れ顔で突っ込んできた…この脳筋牛人め。


「アラルウネラの毒に侵された女の子がいる家に家族以外の男を泊めてどうすんだ。兄貴なんだから、それぐらい考えろよ」

 アラルウネラの毒に侵された女性は異性を誘惑する。

 つまりフォルテの家に俺達が泊まるって事は、妹さんと男女の中になる確率が高い。

 もちろん、そんな事はフォルテが許さないだろうし、俺も操られた女性とする気はない…だって絶対に後が大変だと思う。

 でも、他人はそう思わない。

 俺達に払う金がないから妹の体を提供したとか噂をするだろう。

 こんな小さな村で、そんな噂がたったら住みにくくなる。

(責任をとって下さいはイケメンにのみ適用されない言葉。俺だと十中八九、性犯罪者扱いをされるよな)

 国費で留学に行った癖に性犯罪者の称号を得た日には、家族に泣かれるし下手したら国外追放される。


「わりぃ、そうだよな。今、宿屋に案内するわ。それでいつ森に行くんだな。やっぱり明日か?」

 …宿屋あるんだ、友人紹介割り引きとかないかな。

 それがなければパンとスープのお代わりに期待する。

 

「これから直ぐに行く。お前が家から斧を持って来たら出発する」

 アラルウネラを倒すのに、そんなに体力を使わないんだし。

 敵さんが悠長に待っいてくれる保証はないんだから。


「はぁ?マジかよ」

 本日二度目となるフォルテの呆れ顔。


「モノリス君、準備は必要ないの?」

 トロイ君も心配そうな顔をしている。


「マジだよ。心配しなくてもアラルウネラを倒す方法は考えている」

 今日中にアラルウネラ倒さないと、先生にお仕置きされると思うし…何よりアラルウネラの毒を強くされたら全てが水の泡だ。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺が聞いた話だと、他の国の宿屋には可愛らしい看板娘や健気な未亡人いるらしい…いる筈なんだけど。 


「フォルテよ、もう帰って来たのか?まさかお前みたいなヒヨッコがアラルウネラを倒すなんて言うんじゃないだろうの」

 

「まあまあ、お爺さん本当はフォルテちゃんが帰って来て嬉しい癖に…プリエちゃんが心配なのは分かるけど無理はすんじゃないよ」

 木造平屋のクラシカルな宿屋を経営していたのは、同じくクラシックな猫人の老夫婦。

 きっと趣味は日向ぼっこだと思う。

 

「プリエは俺の妹だ。俺が助ける」

 そう、アラルウネラを倒すのはフォルテの役割だ。


「そうか、それなら口だけの若い奴等との違いを見せてみろ」

 白髪白髭の猫爺さんが優しい目でフォルテを見つめる。


「プリエちゃんは可愛らしい子だから、村の若い衆が嘆き悲しんでいるのよ」

 優しそうな白髪の猫婆さんだけど、言葉の中には棘があった。

 まあ、惚れた女が倒れたのに嘆き悲しむだけでなにもしないから呆れているんだろう。

しかし、フォルテの妹が可愛いだと!?

 フォルテの妹っつ事は牛人だ…つまりは可愛くて巨乳。


(これはフォルテの妹を助けたら”お兄ちゃんのお友達って格好良いね。すてきっ”の黄金パターンが来るんじゃないか?きっと今までのお約束外しは、この出会いの為だったんだ)

 そうとなればアラルウネラを直ぐに倒さなくては。

 でも一泊千メートは若干不安だ、アラルウネラを倒すついでに森から何かを取ってこよう。

 ちなみに俺が持っていくのはレインミントの葉だけ。

 レインミントは強烈な清涼感があり、臭い消しや気付けに使われるハーブだ。 

 そして宿屋を出た俺達の後を着けてくる人影も確認済みだ。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 アラルウネラのいる森は人の手が入っている様で道も整備されていた。


「フォルテ、アラルウネラがどこにいるか分かるのか?」


「わりい。森に行くって言うと止められるだろうから、まだ家族にも会ってないんだ」

 使いこまれた斧を担いだフォルテが頭を下げる。

 そりゃそうだ、村の男や冒険者が返り討ちにされたアラルウネラをヒヨッコ冒険者が倒せるとは思わないだろうし。


「それなら大丈夫だ。俺が木に登って確認をしてくる」

 森の民エルフは木登りが得意なのである…木登り技術や魔力は遺伝して、なんで見た目はエルフ要素が遺伝しなかったんだろう。

 木のてっぺんまで登ってみると、道から少し離れた場所に不自然な空き地がみえた。

 周りの木々に邪魔をされて姿は確認が出来なかったけど、きっとアラルウネラはあそこにいる。

 目的の場所に近づくにつれて嫌になるぐらいに甘ったるい臭いが漂ってきた。


(臭いつきの魔術か…こりゃ魔力抵抗が弱いと虜になっちゃうな)

 案の定、フォルテとトロイ君の足取りは酔っ払いの様な足取りになっている。

 そして導かれるかの様にして例の空き地に向かって行く。

 森の中に入っていくと、馬鹿でかい植物が木々の隙間から見えた。

 高さは二メートルぐらいで、五メートル近い空き地一杯に蔦を伸ばしている。

 間違いなくアラルウネラだ。

 アラルウネラの特徴である人型の膨らみも確認が出来る。

 俺から見れば目も口も書かれていないコケシにしか見えないが、二人には違って見える筈。


「スゲー、なんて可愛い子なんだ。抱き締めれば壊れそうな小さくて華奢な体…天使だ」

 フォルテは華奢なタイプが好みと、フォルテから見れば大抵の女の子は小さいと思うがロリの疑いかありと。


「良いなー、あの明るい笑顔。きっとスポーツが趣味かな…僕じゃ駄目かな?」

 トロイ君はボーイッシュに弱いんだろう。


「おーい、いい加減に戻ってこーいー」

 俺は夢見心地の二人の鼻穴にレインミントを突っ込む。


「痛ってー、コウゼン何をするんだよ!!」

「鼻が痛くて堪らないよ…」

 涙目で俺に抗議をする二人。


「目が醒めたか?ほれ、あそこにアラルウネラがいる」

 当然、フォルテとトロイ君は愕然としている。


「凄い蔦だね、あれじゃ迂闊に近づけないよ。モノリス君どうするの?」


「うーんと、この木が良いな。フォルテ、この木を切り倒してくれ…アラルウネラにむかってな」

 五メートルの蔦で近づけないんなら、それよりでかい木で潰せば良いだけ。


「お、おう分かった。おーりゃ」

「おーい、木が倒れたぞー…アラルウネラの球根にシールドボール」

 球根が押し潰された意味ないんだし。


「モノリス君、普通は倒れるぞ、じゃかいかな」

 突っ込みをいれてくれたトロイ君の後ろの葉がガサリと動いた。


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