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孫には孫の戦い方、準備編

 先生はニヤリと笑うと分厚い書類の束を出してきた。


「これがイーエラ子爵に関する調査資料です。どうも継承権争いが起きてるみたいですね。イーエラ子爵の長男は内政能力は優れていますが健康に問題があるそうです。他の子供達は武の鍛練をしているから健康ですが脳味噌も筋肉なってしまい、お目付け役の操り人形になっているそうですよ」

 この短期間でよく調べるよな、エルフィンの諜報部が使えないからルーンランドの諜報部辺りの仕事だと思う。

 

「あー、サマオーレもそんな感じっす。でも、武も微妙な感じだったっすよ。型通りの剣術で実戦では使えそうにないっす」

 戦っても、装備が一級品だから正面から戦ったら手こずると思うし。

 あくまで正面からの話だけど。


「功才君、前に教えましたよね。継承権のない子息で才能のない者には剣の型だけを習わせなさいって。その訳を答えなさい」

 これを間違えたら、地獄のお仕置きが待っている…頑張らなくては。


「えーと、下手に武を修めると周りに唆されたり、自分の力を試したくなって謀反を起こす危険性がある。逆に型通りの剣術は見栄えが良いから婿に行く時にプラスとなる。ついでに高価な武器を持たせれば支度金代わりに使えるんすよね?」

 武器は手入れをきちんとすれば子孫に受け継ぐ事が出来るから、結果的に婿に迎えた家の財産になる。


「正解です。そして才がある場合は王家に仕えさせるのが一番ですね。さて、私はこれかイーエラ子爵とご長男の治療のお話をしようと思います。ああ、あそこの四男は魔物使いを雇ったそうですよ」


「魔物使いっすか。動物系はたまに見るっすけど、植物の魔物使いなんて珍しいっすね」

 でも、これでアルラウネの不自然な行動にも説明がつく。


「功才君、新しい武器はいらないんですか?」


「大丈夫っす。フォルテの村にある物でもアルラウネは倒せるっす」

 俺は高速馬車の料金を先生から受け取って大使館を後にした。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 フォルテの村はイーツゴ男爵領ヴィーグル村。

 ヴィーグル村に向かう高速馬車には俺とフォルテ、そしてトロイ君の三人が乗っている。

 ちなみに俺の正体がばれる危険性を考慮してゼーロは誘っていない。

 しかし、ごつい男爵の腕力村って、師匠が絡んでいそうな名前だよな。


「コウゼン、本当に俺達だけでアルラウネを倒せるのか?何人も返り討ちにあってるんだぞ」


「だからおいしいんじゃねえか。心配しなくても全部解決するよ」

 今頃、エルフィンの大使館では先生がイーエラ子爵を容赦なく攻めていると思う。

 何十年もくエルフィンの暗部を担ってきた先生に、跡目を継いだだけの子爵が敵う訳がない。

 多分、長男の治療を飴にして、四男の暴挙には鞭で応えるんだろう。


「ぼ、僕は高速馬車もゴブリン以外の魔物と戦うのも初めてだから緊張するよ」

 弱気な事を言っているが、トロイ君は話を聞くなり参加を決めてくれた。

 場合によっては、大好きな幼馴染みと敵対する可能性があるにも関わらずに参加してくれた。


(このパーティーを中心にしてコウゼン騎士団を作るんだ…その為にも絶対に負けられない!!)


 ヴィーグル村を一言で言えばのどか。

 周りを広々とした草原で、そこかしこに牛や羊が放牧されている。

 少し離れた場所に見える森に、噂のアルラウネいるんだろう。


「どうやらゴブリンが出ないってのは本当みたいだな」

 ゴブリンが生息していたら、家畜は柵に囲まれた牧場にしか放てない。

 そうしないと子牛や子羊は直ぐに食われるし、親牛でさえゴブリンの集団に襲われたりする。

 これで俺の疑問が確信に変わった


「当たり前だろ。この村には俺達牛人の他に猫人や馬人も住んでいるんだぜ。ゴブリンはおろか魔物すら寄ってこねえよ…それなのになんでアルラウネ出たんだ!?」

 フォルテは悔しそうな顔で、森を睨んでいる。


「多分、やって来たんじゃなく、人の手で植え変えされたんだよ」

 そうとしか思えない。


「モノリス君、それはどういう意味?誰がそんな事をしたって言うの」


「そうだぜ。アルラウネは種で増えるんだぜ。どこにはえてきてもおかしくないんだろ」


「ああ、種で増えるさ。ただし、他の植物と違って、種を飛ばしたり鳥に運ばせるんじゃない。捕食した人に種を植え付けて運ばせるんだよ。アルラウネは大きく育つから種を飛ばしたんじゃ混んじゃうし、鳥に託して山奥にでも落とされたら人に会えないで枯れちまうんだよ」

 人がやって来る場所は人が一番知ってるんだから。


「それなら誰か運んだんじゃないのか?」


「あのな、ここはゴブリンもいない森なんだろ?単純なゴブリンは捕まえ易いからアルラウネにとって主食みたいなもんなんだぜ。この森は選ばれねえよ。それにお前の妹さんは普段から森に入っていたんだろ?」

 それは誰も咎めない日常的な行為。


「ああ、うちの村はは狩りか樵が多いからな。森に慣れないうちは果物や山菜を取る事で森に慣れていくんだ」


「だろ、それだけ森に精通していたらアルラウネは小さいうちに刈り取られるし、大きく育っていたら近づかない様に警告をするだろ。それがなかたって事は、いつの間にか植えられたって事さ」

 納得したのか二人とも押し黙る。


「モノリス君はなんでそう思ったの?」


「アルラウネは魔物だけど基本は植物だろ?人を襲えるぐらいの大きさのアルラウネが育つには広い場所が必要なんだよ。日光があたるぐらいに開けたら場所がね。そんな所にアルラウネが育ち始めたら直ぐに分かるんじゃないか、と思ったんだよ」

 さてと、アルラウネと犯人を捕まえに行きますか。

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