パーティー結成?
俺は声を大にして訴えたい!!
苛め、嫌がらせ、復讐は格好悪いから止めろと…
「モノリス君、隣に座らせてもらうよ。いや、これからはコウゼン君と呼ばせてもらう」
俺と心暖まるお話し合いをした次の日、事もあろうにゼーロは隣の机に座りやがった。
ちなみに左隣にはクラフト君、ゼーロは右隣。
(クラスいや学校でも一、二を争うイケメンに挟まれただと。リバーシーみたいに俺もイケメンになれば良いのに…)
「座ってから言われても嫌って言えないっすよ…いや、嫌じゃないっすけど」
嫌と言うとしたら右斜め後ろから猛烈な殺気を感じた。
チラ見をするとゼーロのメイド ラシーヌさんが俺を見つめている…正確にはふざけた事を言ったら許しませんよって感じで睨んでるだけど。
「うわー、勿体ない!!モノリスさえいなきゃ絶景なのに。邪魔ー」
「甘いわね、モノリスがいるからクラフト君とゼーロ様の格好良さが更に引き立つんだよ」
俺は観光地の立て看板とか物語の序盤に出てくるゴブリンかよ。
今度は生暖かい視線を感じたので見てみると、ゲニーが親指を立てて嬉しそうに笑っていた。
同族嫌悪ならぬ同レベル同情だろう。
「モノリス君は僕の友達だから、そういう事は止めて欲しいな」
ちょっと困った感じてお願いするクラフト君。
「君達は僕の友人を馬鹿にして楽しいかい?」
そう言って女子に冷たい視線を送るゼーロ。
何?この爽やか過ぎるフラグを乱立させまくるイケメン達は…妬ましさにまみれた自分の心が哀しくなってしまうでないか。
そんな時、ドアが静かに開いて一人の女性が教室に入って来た。
数学担当のコロン・ルート先生だ。
ルート先生が着ている濃紺のスーツと同色のパンツには皺一つなく、青い髪をきっちり結い上げて神経質そうな顔には三角眼鏡を掛けている。
「静かに!!今日は大切な話がありますからキチンと聞きなさい…皆さんが当学園に入学して一ヶ月が経ちました。来月には野外実習も始まりますから、皆さんにはパーティーを組んでもらいます。パーティーを組んだ人達は順次学校に申請する様に。良いですね?」
つまり、一ヶ月以内に仲間を見つけれなきゃボッチの称号を得てしまうと。
「コ、コウゼン君はパーティーを組む宛てはあるのかい?」
噛んだのが恥ずかしいのか顔を赤らめるゼーロ。
「一応はあるっすよ。つうか、折角寮に入ってるんすから、ある程度目星を着けておくのが当たり前っす」
「まだ来月まで間があるだろ?」
「人気者のゼーロ様なら引く手あまたかも知れないっすけど、俺みたいのは断られるのを前提で動かなきゃいけないんすよ。それに早くパーティーメンバーが決まれば連携の練習が出来るんすよ。まさかパーティーを組んだその日からスムーズな連携が出来るなんて思ってないっすよね?」
ちなみに俺が目を着けているのは近接課でクラフト君かフォルテ、魔法課からトロイ君。
神聖魔法課の生徒は数も少なく目立つからパス、いざとなれば治療をした上から内緒でヒールを掛ければいいんだし。
一番、避けたいのは騎士育成課の方々。
騎士道なんて俺の戦い方と相反するし、貴族や騎士のご子息、ご令嬢が俺の言う事を聞いてくれるとは思えない。
むしろ、命令をしたら怒る危険性がある。
そして我がスカウト課、絶対数が少ない上に、生徒の大半は貴族や騎士の従者だ。
つまり、俺みたいなフリーのスカウト課の生徒は引く手あまたな筈。
女子から”モノリス君、私とパーティーを組んでくれないかな?”そんなお誘いも夢ではない。
「そうか…よ、良かったら僕と…」
「静かに!!パーティーの事は放課後にいくらでも考える事が出来ますよ」
ルート先生の怒号でざわついていた教室が一気に静まり返った。
ゼーロが何か言い掛けていたが、良く聞こえなかったのでスルーしておく…君子、危うききに近寄らずである。
―――――――――――――――
おかしい…スカウト課の生徒は人気の予定なのに。
確かに、私達のパーティーに入ってと言う女子の言葉は聞いた…ただし、俺の両隣でだけど。
クラフト君とゼーロには黒山の人集り。
放課後になっても女子のクラフト、ゼーロ詣りは終わっていない…ちなみに俺が声を掛けられたのは、ぶつかってすいませんだけ。
(これじゃクラフト君を誘うのは無理だな。三人じゃ少ないから誰かに声を掛けられるのを期待してたんだだけどな。まっ、実戦経験がなきゃスカウトの重要性は分からないか)
重要性が分かってもらえないだけで、決して俺が嫌われている訳ではない…そう思う。
――――――――――――――
寮の洗い場に行くと、フォルテとトロイ君は洗濯物の山と格闘していた。
「お疲れー。フォルテ、トロイ君、俺達でパーティーを組まないか?」
「俺は良いけど三人だけでか?」
フォルテも洗濯に慣れたらしく手を動かしながらも答えてくれた。
「とりあえずは三人だよ。それとも誰か宛てはあるのか?出来たら女子を頼むっ」
「俺にパーティーに誘える程、仲が良い女子がいる訳ないだろ。トロイはどうだ?」
「誘いたい子はいるけど、僕じゃ無理なんだ…」
そう言うとトロイ君は顔を赤らめながら俯く。
「おっ、詳しく聞きたいっすね」
トロイ君の話によると、相手は幼馴染みで同じ魔法課にいるとの事。
「恋のライバルが子爵の四男か…そりゃ厳しいな」
「うん、サマオーレ様は顔も格好良いし強いから僕なんて敵わないよ」
いや、伯爵の長男でもモテないのもいるんだけどね。
「トロイ!!イーエラ領の男が洗濯なんかするんじゃねぇ!!」
いきなり現れてトロイ君に怒鳴ったのは、茶髪のワイルドなイケメン。
イケメンの後ろには何人かの男女が控えている。
「サマオーレ様、これは先輩に言われまして」
サマオーレ・イーエラ…並べ替えたら俺様偉い!?…突っ込み待ちじゃないよな。
「まぁ、良い。クラフト、モノリスって奴はいるか?」
こんな俺様と知り合いじゃないんだけど。
「俺っすけど。なんか用っすか?」
「昨日はイースゴのゲニーが迷惑を掛けたそうだな。これは詫びだ」
サマオーレは詫びなのに頭を下げないで後ろに顎で合図した。
「ゲニーにモッキー!!ボロボロじゃねえか?」
二人共、ボコボコにされているがモッキーはゲニーを庇ったらしく、直ぐに治療しないと後遺症が残りそうだ。
「そいつらはイーエラの名を汚した。当然の報いだ。どうせその豚とネズミじゃ碌な冒険者にはなれないしな。トロイ、そんな牛や庶民と組んでも仕送りは出来ないぞ。うちのパーティーで荷物持ちでもしないか?」
その言葉が聞こえたらしく、ゲニーの目からは悔し涙が溢れ出している。
「碌に働いた事もない奴が、稼げないだ?だったら俺達パーティーがお前より稼いでやるよ。その代りその時は俺の言う事を聞いてもらうか…フォルテ、トロイ君嫌ならパーティーを抜けても良いよ」
「コウゼン、俺は乗らせてもらうぜ!!俺も田舎に仕送りをしなきゃいけないから稼ぎたいんでな」
フォルテも我慢出来なかったらしくのってくれた。
「ぼ、僕もモノリス君達とパーティーを組みます。このままじゃ弱いままだから、自分を変えたいんです」
「それとご立派なイーエラ子爵のご子息様はトロイ君の家族に嫌がらせなんてしないっすよね?」
いざとなればトロイ君の親戚一同にエルフィンに来てもらおう。
「馬鹿にするなっ!!俺様はそんな器の小さな男じゃない!!」
とりあえず言質はとった、後は証人さえいれば完璧なんだけど。
それと器の大きい人は自分の器をどうこう言わないと思う。
「そうかい、それなら僕が証人になる。それとコウゼン君、僕とラシーヌもパーティーに入れてもらうよ」
いつの間にか現れたらゼーロが宣言をした。
―――――――――――――――
ラシーヌのローゼお嬢様観察日記
なんと、あのお堅いローゼがモノリスと親しくなろうとして、隣の席を確保した。
異性としては対象外だろうけど、諸事情により他人に壁を作りがちなローゼにしてみれば凄い進歩だ。
モノリスが嫌そうにしたから睨んでやった。
さらにローゼは顔を赤らめながらも、モノリスをパーティーに誘うが見事にスルーされる。
これはモノリスを責めないでおこう。
ローゼは女だけど、男装しているからゼーロは男、男に顔を赤らめながら誘われてオッケーをしたらメイド兼親友の私が止める。
放課後、モノリスを諦めきれないローゼはハピネス寮に向かう。
ハピネス寮に着くと、モノリスとイーエラの脳筋四男が言い争っていた。
ローゼ、強引に介入し、ちゃっかりモノリスとパーティーを組む…これぞ漁夫の利。
帰り道、ローゼは妙に嬉しそうだった。
まともな恋愛を諦めているローゼにも束の間の幸せが来るかも知れない。
しかし、相手があのモノリスだから、可能性は薄いかも知れないけど。
まあ、異性の友達はローゼに必要だし、私がローゼをおちょくりやすくなるから良しとしよう。
ツイッター始めました、詳しくは活動報告にあります
感想もお待ちしています




