エルフらしさドワーフらしさ
俺の目の前に危険な刺激臭を放つ物体が山積みになっている。
「モノリス、これも洗っておけよ!!」
「先輩、心を込めて洗わせてもらうすっす」
俺の目の前にはあったのはハピネス男子寮の優しい先輩方が提供してくれた酸っぱい青春の香りがする洗濯物。
今日は実技実習があったのか、若干かなり汗臭い。
ちなみにクラフト君にも洗濯物が届いたが、女子寮の先輩や同級生が手伝っている…正確には我先にと洗濯物を奪い合っているんだけど。
(そんなに洗濯がしたいんなら、俺のも手伝えよ。俺とクラフト君の何が違うんだ?)
顔は俺がブサメンでクラフト君は美少年。
性格は俺は卑怯でごますり上手だけど、クラフト君は男らしく誰にでも優しい。
…はい、あっさりと答えが出てしまいました。
別に山の様な洗濯物と格闘しているのは俺だけじゃない。
他にも何人かが汗臭い洗濯物と戦っている。
「モノリス君、洗濯が上手いんだね。羨ましいよ」
俺に声を掛けてきたのは眼鏡を掛けた真面目を絵に書いた様な猿人トロイ・アーンストン君。
トロイ君は魔法課を専攻していて眼鏡と七三に分けた髪型と痩せた体格が特徴。
「しかし、やってらんねえよな。洗濯ぐらい自分でやりゃ良いのによ」
愚痴りながら話し掛けて来たのは牛人族のフォルテ・コルノ。
フォルテは近接課だからトロイ君と違って、縦にも横にもでかい。
特徴はごつい体に角刈りの頭から出た二本の角。
「フォルテ、分かってねえな。先輩方は優しさで洗濯や料理の炊事をさせてくれているんだぜ」
「コウゼン、どういう事だよ?」
ちなみにフォルテは脳筋タイプ。
「冒険者になれば野営は必須。そんで野営じゃ家事炊事は自分でやらなきゃいけないんだよ。特に人を雇えない駆け出しの頃なんて特にな。だから、一年の時に家事炊事を身につけさせるんだよ。それと先輩達は洗濯とかをすると小遣いをくれるだろ?あれは、まだ依頼を受けれない一年がひもじい思いをさせない為なんだよ」
あくまで俺の予想だけど、嫌々やるよりも、こう思った方が良い。
「そうなんだ。モノリス君は、良く知ってるね。ところでその霧吹きは何に使うの?」
「これにはラベンダーの精油を溶かした水が入ってるんだ。ラベンダーは匂いが良いし、防虫効果もあるから洗濯を干すときにかけておくと喜ばれるんだよ」
これぞ、森の民エルフの知恵。
「なんつうか、コウゼンはそう言うごますりが得意だよな」
「ごますりじゃなく気遣いだっての。俺はスカウト課だから草原や森林での実習が始まったら自作する予定だし」
コウゼン印の香水…女子の人気者になれるかもしれない。
「でもモノリス君は僕と同い年なのに色々と出来るよね。僕は魔法の勉強と畑仕事しかしてこなかったもんな」
「俺も畑仕事と戦いの訓練だな。洗濯や飯支度はお袋や姉貴達がやっていたし。よっし、早く一人前の冒険者になって故郷に仕送りをするぜっ」
俺は一応貴族だったから、色々と学ばせてもらう事が出来たんだよな。
でもトロイ君やフォルテは生活を支えていく為に、農作業に専念しなきゃいけなかったんだと思う。
ちなみに俺達三人は最近よく一緒にいる。
気が合うのもちろんだけど、モテないと言う共通点が俺達の絆を深めていた。
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ヘトヘトになって部屋に戻るとクラフト君が筋トレをしていた。
「頑張ってるすね。でも筋肉には休暇も必要らしいっすよ」
「本当?僕は早くフォルテ君みたいな体になりたいんだ」
それは学園のクラフト君ファンが泣くと思う。
何よりも暑苦しい脳筋はフォルテだけで充分だし。
「フォルテは牛人っすよ」
「僕もドワーフだよ。ドワーフは強くなきゃドワーフじゃないんだ」
強くなきゃドワーフじゃないか…。
(美しくなきゃ、エルフじゃないって良く言われたよな)
俺の場合は美しくなるのは不可能だから諦めたけど。
「クラフト君はドワーフらしいドワーフになりたいんすか?」
「僕はこんな顔だろ?国に居る時は良く馬鹿にされたんだ。出来たらスパル先生みたいな強面な顔に生まれたかったんだけどね」
ドワーフで人気があるのは、酒とケンカが強くて鍛冶が巧い人。
見た目もガッシリ体型でヒゲが濃いドワーフがモテるらしい。
「はあ、ちなみにクラフト君はどんな女の人が好みなんすか?」
「やっぱり背が低くてガッチリとしている娘かな。後は丸顔なら最高だね」
そういや爺さんがモテるモテないは、文化や地域によって違うって言っていた。
何でも爺さんがいた世界では太っていたり、下アゴが出ている方がモテる所もあったらしい。
「何か、うまくいかないもんすね」
今、クラフト君はモテているけど、あまり嬉しくないのかも知れない。
(エルフらしくないで悩むエルフとドワーフらしくないで悩むドワーフか)
何とも皮肉な二人がルームメイトになったんだな。
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