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ハーフエルフに見えない少年

ザコ孫開始します

 エルフが住む国エルフィン聖王国。

 エルフィンには60年程前に公立学校が設立された。

 小・中・高に分けられた学校には王侯貴族の子供も騎士の子供も庶民の子供も一緒に通っている。

 その中の国立エルフィン第四中学校の

教室で一人の少年が溜め息を漏らした。

 確かに、彼だけが教室の中で妙に浮いている。

 教室の中で彼だけが黒髪であり、エルフではなくハーフエルフなのだから。

 これはハーフエルフには到底見えない財津功善こと小物の魔法使いコウゼン・モノリスが異国の地で成長していくかもしれない物語。


――――――――――――――――― 


 右を見れば美少女、前を見たら美少年…つうか周りは美少年と美少女ばかり。

 でも鏡を見ればあら不思議!?俺だけブサメン…俺のプライベートも含め周りの殆どが美少年、美少女なんだけど。

 仕方がないと言えば仕方ない、ここはエルフの住む国エルフィン聖王国。

 最近の国勢調査の結果は、総人口162万1412人、エルフは長命で性欲が薄いから他の国に比べて人口は少ないらしい。

 そのうちブサメンはたった6人。

 エルフィンの王子ガーグ・エルフィンローズ様と息子のガーボ・エルフィンローズ様。

 エルフィンの外務大臣イントル・ハンスネス様。

 そして我が財津家の祖父財津功才、父財津功貴、俺財津功善の6人だけ。

 一応、俺の母親はエルフだから俺はハーフエルフになるんだけれども、見た目は完璧にブサメンの猿人族。

 ちなみに3人いる姉妹は全員美少女だったりする…エルフの血が入っていない親戚も美少年、美少女しかいないそうだ。

 

「次は簡易魔法の授業だけど、君も出るのかい?落ちこぼれの猿人のコウゼン・モノリス一般庶民君」

 見事にまでの上から目線で話し掛けてきたのは銀髪を肩まで伸ばしたイケメンエルフ、セブンライト・クライン様。


「クライン様、一般庶民は爵位名じゃないっすよ」


「それくらい知ってるよ、何しろ、僕のおじさまは南エルフの試合に出たガーネ・クライン男爵なんだからね」

 正確には補欠だったガーネさんなんだけどね。


「サボる訳にはいかないっすからね。きちんとでるっすよ」


「流石は一般庶民、授業料の元をとりたいんだね。浅ましい…いや、涙ぐましい努力だ」

 一応、実家は伯爵家なんだが爺さんが”男に家名で得た友や力はマイナスにしかならない”と言ったので、俺は母さんの旧姓モノリスを名乗っている。

 ちなみに種族は猿人にしている…俺はハーフエルフでありハーフヒューマンでもあるから決して嘘ではない。


「そりゃどうも…クライン様、取り巻きとファンの方々お待ちっすよ」


「人気者の辛いところだね、それでは君のファイヤーボールを楽しみにしてるよ。アディオス」

 俺は諸般の事情で初級の簡易魔法しか使えない。

 ついでに言えばエルフの代名詞である神聖魔法や貴族の代名詞の精霊魔法も使えない。

 使えるのは十属性の初級簡易魔法のみ。


(確かに、七光りを勘違いしてあんな風になりたくねえからな…シルビアさんもセブンライトのファンなんだ)

 片思いしている子がセブンライトを潤んだ目で見ていて、思わず泣きそうになってしまう。


「相変らずクラインに絡まれるてるな。お前なんかしたのか?」

 クラスメイトが呆れ口調で話し掛けてきた。


「何もしてねえよ、好きこのんで七光り野郎と絡まねえっての」


「あいつ、シャルレイン様狙いだからコウゼンに嫉妬してるんだろ。我が国が誇る三英雄の一人ザイツ伯爵の孫娘シャルレイン様。美人の上に俺達庶民にも分け隔てなく接してくれるまさに天使」


「俺としては妹のメリル様の方が好みだぜ。クラインの奴、メリル様にも粉をかけてたろ?そういやシャルレイン様もメリル様もコウゼンを気にかけてるよな」


「俺もザイツ領の出身だからだろ?そんなんで目の敵にされたらたまんないっての」

 これも嘘ではない、シャルレイン姉ちゃんとメリルは俺の姉妹なんだから当然出身地も同じになる。

 

―――――――――――――  


 放課後、路線馬車を待っているとエルフの少年と少女が話し掛けてきた。


「コウゼン様、あれほど帰る時はお声を掛けて下さいと言ったではないですか。置いていかれては侍女と護衛の立場がありません」

 青い髪の少女エルフが腰に手をあてて睨んでくる。


「そうです。今日もクライン家のバカ息子に絡まれたそうじゃないですか?私とローゼがお側にさえいれば」

 緑色の髪をした少年エルフ、シルバンが怒りを露にする。


「あのお二方、何を仰ってるんすか?公共の場で一般庶民の猿人をからかうのは止めて欲しいんすけど」

 ちなみにローゼは俺の侍女でシルバンが護衛。

 侍女や護衛と言うより幼馴染みと言った方が正確なんだけど。


「確かに、領主様のご命令は守らなければいけませんが、我らには護衛や侍女としてのプライドがあります。主を馬鹿にされて黙っている訳にはいきません」


「そうです!!コウゼン様はコウサイ様のお孫でザイツ家の跡取りなんですよ。それに長女のコメット様はガーボ様とご成婚されているんです。本来ならクラインのバカ息子は直答も許されないんですよ」


「だからザイツの力でセブンライトを黙らせろってか?それじゃ、彼奴とやってる事が変わらねえだろ。命令だ、俺はバイトをしに行くからお前らはデートでもして来い」

 ちなみにこの二人は恋人同士、一緒にいたら俺がお邪魔虫ポジションになってしまう。

「しかし、ですね」


「あら?コウゼンじゃないですか?良かったら私の馬車に乗っていきませんか?」

 シルバンがさらに続けようとした瞬間、俺達の前に一台の馬車が止まり、中の女性が声を掛けてきた。


「シャルレイン様、よろしいんですか?」

 声を掛けてきたのは金髪のハーフエルフ、シャルレイン・ザイツ。


「ええ、どうせ同じ町に帰るんですから」

 同乗の許可をもらった俺は馬車に乗り込む。


「姉ちゃんサンキュー、助かった。あれ以上騒がれたら大変だったよ」


「お礼ならメリルに言いなさい。メリルがコウゼンを迎えに行くって言ったんだから」


「お兄ちゃん、あの二人クビにしたら?主より家事が出来ない侍女や主より弱い護衛なんて意味があるの?」

 お怒り気味なのは俺の妹のメリル。


「無理だよ、二人を雇っているのは俺じゃなくザイツ家だからな。それに何の落ち度もなくクビには出来ないよ」

 二人が忠義を誓っているのは、あくまでザイツ家。

 多分、俺がザイツ家の長男じゃなかったら友達にすらなれかったかもしれない。

 

(俺からザイツ家をとったら何が残るんだろ?俺はエルフなんだろうか?猿人なんだろうか?コウゼン・ザイツって何者なんだろうか?)

 前なら意味がない自問自答であったが、この先、俺は自分に何度も問い掛ける事になる。

感想お待ちしています。

出来るだけ前作を読まないでも楽しめる様に頑張ります

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