第7話 生徒会始まる。
放課後、3人そろって生徒会室に呼ばれて行って見ると、生徒会長のテオドール殿下と副会長の公爵家のエルヴェーラ様が待っていた。
「ようこそ、生徒会に。とりあえず一年任期だからよろしく頼む」
テオドール殿下が机に向かったまま、張り付けたような笑顔でにこやかに告げる。
成績順に選ばれるらしい。不覚だ。
いや…いい機会かもしれない。ブラコン、だの、兄の腰ぎんちゃくだの…いろいろ陰で言われているのも知っていたから。それどころか3年生のお姉様に、いつまでもお兄様を頼るのもいかがなものか、と説教されたり…。
これで義兄を振り切れるはず。
それに…テオドール様にすり寄る?いい機会じゃないか!
「はーい。よろしくお願いしまぁーすぅ」
と、自分で言ってみてひどく恥ずかしい。
恥ずかしいけど、首は45度傾げて、手は胸の前で組むのを忘れない。
「モニカ君は会計。会計監査は3年生が入る。アリーセ君とカミル君は書記。いいかな?」
会計係か…ここは王立の学院なので予算も半端ないんだろうなあ。まあ、いい。
「はーい。モニカ、がんばりまぁーす!」
にっこり笑って元気に返事をした私を見るエルヴェーラ様の視線が冷たい。で、しょうね。自分でも鳥肌物です。
席を指定されて、生徒会長に前年度の資料を渡されて、年間行事や予算の配分を確認する。なかなかの金額を動かしている。年間行事…3年生の卒業パーティーが年度最後の大仕事のようだ。
「質問はあるか?」
「テオドール様、生徒会活動は毎日ですか?」
アリーセ様がおずおずと手を挙げて質問をする。カミル君は相変わらず平常心のようだ。あんまりまじまじと見たことがなかったが、黒髪の、これまた義兄とは違ったタイプのおとなし系イケメンだと気が付いた。あ、殿下ももちろん一般的な絵にかいたようなイケメンだ。
「そうだね、平日は放課後に生徒会室に来るようにしてくれ。文書を作っておいたから、お家の方の了解も取ってほしい。どんなに遅くても6時には終わるから。」
「…はい」
アリーセ様の質問にテオドール様が淡々と答える。
「他には?」
首をやや傾げ気味に、なるべく可愛らしく聞いてみる。
「あのぅ…テオドール様の趣味は何ですかぁ?」
「……」
「……」
え?まずい質問?不敬だった?沈黙が長く感じたが…笑顔を絶やすわけにもいかない。モニカは内心かなり焦りながら、それでも笑顔を続ける。
「…え、ああ、…金魚を飼うことだ…」
「金魚って、華国の、あの赤い魚、ですかぁ?」
「そうだ。良く知っているな。君の家は華国と交易があるから…か?」
「え?ええ。うちの池ですっぽんを飼っていますよ?」
エルヴェーラ様の冷たい視線に耐えながら、生徒会の顔合わせが終了した。
集められたのは、結果的には殿下の婚約者候補?
まあ、人となり、お相手の能力を知ったりするにはいい機会だと思う。
なんつーの?殿下のハーレム状態?まあ、カミル君は別だけど。
「モニカさん?」
教室にカバンを取りに戻ろうとして、廊下でエルヴェーラ様に呼び止められる。
今日も美しいです。ウエーブのかかった金髪に青い瞳。上品なお化粧。オーダーメードのような制服…。
「はい?」
「あなたね…殿下の前では言葉使いにお気をつけあそばせ。不敬ですわよ?」
「はぁーい。でもぉ、入学式で殿下が、身分に関係なく意見を言い合えるのが学院のいいところだって、言ってましたよぉ?」
「…節度は必要でしょう?」
「はぁーい。」
「あなた…男爵家からヘルケ伯爵家に養女に貰われてきたんでしょう?きちんと教育を受けていらっしゃらないのね。成績が良くても、常識や礼儀作法とか。」
そう言いながらエルヴェーラ様が私の頭の上から足の先まで眺めているのを痛みのように感じる。
「あなたの言動ひとつで、ヘルケ伯爵家の御当主や貴女のお兄様のアレクシス様まで辱めを受けることになりますのよ?」
ド正論ですね。
ここで、エルヴェーラ様にいじめられたと泣き崩れて、殿下に救いを求めに行ったら正解。
でも、そんなことしたら、エルヴェーラ様の言う通り、私は伯爵家で何の教育も施されてこなかったと認識されてしまう。
領地経営と商売は義父に、礼儀作法は義母に。勉強は義兄に。優しく、時には厳しくまるで実子のようにかわいがられてきたというのに…。
しかし…ここで折れるわけにもいかないんです!エルヴェーラ様!
「はーい。モニカ、気を付けまーす!」
モニカは…首を45度傾けて、にぱっと笑う。




