第6話 学院生活。
学院に出かける前に厨房にお邪魔して、お昼のお弁当を作る。念のため2人分。水筒にお茶も入れる。あらかじめ作っておいたお弁当バッグに詰める。黄色い布地にくまちゃんのアップリケ付きだ。
一人で着替えるから大丈夫、と、侍女に声をかける。制服に着替えて、スカートをウエストで二まくりする。ひざ丈くらい。少し恥ずかしい。こんな短いスカートは履いたことがないから。
髪をツインテールに結び、まったく自分の趣味ではないが大きなピンクのボンボンが二つ付いた髪飾りを付ける。夜なべして作っておいた。ビアンカも欲しがるだろうと思って、お揃いでビアンカの分も作った。大喜びしてくれて、お義姉ちゃんはうれしいよ。
リップはつやつやピンク。全く趣味ではないが…。
ジャケットを羽織って、姿見に自分の姿を映したモニカは…まずまずの出来ににんまりとする。指定のカバンにも大きなボンボンとクマのぬいぐるみを括りつけておいた。身長は伸び悩んで155センチ位だ。小動物系キャラを目指そうと思う。
昨日の入学式は義兄上がつききりだったので、普段通りの格好で臨んだ。
2年生になって生徒会長になったテオドール殿下が新入生の歓迎の挨拶をした。
5年ぶりぐらいに見たが、すっかり大きく育っていた。当たり前か。
「勝負は今日からよ!」
モニカが姿見に向かってガッツポーズをとると、いつからいたのか部屋の入り口に腕組みしたあきれ顔の義兄が映る。
「…まあ、かわいいからいいか。」
ぼそっと何かつぶやいたようだが、よく聞き取れなかった。
クラス分けは成績順。私は1年A組。
入学時のクラス分け用の事前テストも半分ぐらい書けばいいかなあ、と思っていたら、義兄がにっこり笑って、
「モニカはいい成績だろうから、父上も母上も喜ぶね?」
と言うので…うっかり全力で臨んでしまった。
モニカが思い描いていた学院生活は…
朝、ほんの少し遅刻しそうになって毎朝走って登校。
遅刻しそうになっちゃったぁ!と、てへへっと笑う。
これで、困った子認定。
お昼休みはお弁当バッグを持って、殿下のクラスの前で出待ち。
殿下の分もお昼ご飯作ってきたんですぅううう。よし、これだな。
「あれ?」
学院生活が始まって、早2週間。
モニカは頑張ってツインテールにボンボン。
家の馬車で義兄と登校。きゃあきゃあ騒ぐ義兄の登校待ちの女の子をかき分けて…義兄が1年の私のクラスの前まで送ってくれる。
「じゃあ、昼休みにね」
そう言って、義兄が私の頭を撫でて、3年の自分のクラスに戻っていく。
昼休みにお弁当バッグを持って2年生の殿下のクラスに出かけようとすると、もう教室の出口ににっこり笑って義兄が待っている。学院の中庭の東屋で二人でお昼ご飯を食べる。義兄のお昼寝に膝を貸して、本を読んで昼休み終了。私のクラスに送り届けてから、義兄はアカデミアに向かう。もちろん授業が終わると義兄が待っていてくれる。で、同じ馬車で帰って…
え?お義兄様、殿下の家庭教師は?
……あれ?さりげなく流されてしまっていたが、まだ殿下にお会いしてもいない。
殿下の婚約者候補の一人のアリーセ侯爵令嬢は同じクラスで、お隣の席になった。あまり人見知りをしない方らしく、
「モニカちゃんのお兄さん、凄いわね?シスコン?ほら、モニカちゃんがお茶会に来たときだって、紹介以外は話をする暇もなかったものね?二人でお茶を飲んで、二人で王立図書館に行っちゃったでしょう?」
「ああ…そうでしたね」
「大事にされているのねぇ…私も兄がいるけど10歳以上も離れているからあまりかかわりもなくてね。羨ましいわ!まあ、私にはそのかわりにカミルがいるからいいんだけどね」
カミル君は同じクラスの子爵家の次男坊。寡黙な男の子。アリーセ様の護衛兼侍従らしい。この二人もいつも一緒にいる。護衛兼侍従なら、なるほど、である。
「この前、殿下の前でモニカちゃんが転びそうになった時も、お兄様が後ろから支えてくださって…かっこよかったですわ!」
「……」
あれはびっくりした。せっかくのチャンス到来だったのに!!
教室移動の時に正面方向から歩いてくる殿下を見かけて、頑張って転びかけた私…ふわっと後ろから抱え込まれて…お義兄様…何してくれてますの?そうこうしているうちに殿下は通り過ぎてしまったし。なぜそんなタイミングで廊下にいらっしゃるの?お義兄様?
しかし、そんな毎日に転機が訪れた。
1年生からの生徒会役員にと、私とアリーセ様とカミル君が呼び出されたのだ!




