第5話 いざ!学院へ。
「いよいよですわ!」
早々に自室に引っ込んだモニカは、何年か前に書き込まれたメモをまた見返している。十冊以上になったメモ帳は、年代別に整理してある。
参考書の恋愛小説も読みなおした。
いよいよ明日から待ちに待った学院生活が始まると思うと…期待と不安が半分ぐらいずつ押し寄せてくる。高等部の制服は侍女がブラシを綺麗にかけてくれて、ハンガーにつるされている。指定の靴も並べられている。
4月に入学してから、王子の誕生日まで…10月には婚約者を決める予定らしい。半年しかない。いや、待て…婚約者が決まったからと言って、最終決定ではない。どんでん返しも待っているかもしれない。あの小説のように。
「お義父様も、お義母様も…きっと期待していますね…」
よし。練習した通り、明日から頑張ろう!そう心に決めて、モニカは毛布を引き寄せた。
モニカは貴族用の学院は中等部から行くつもりだった。
義兄上が大反対して、高等部からの入学になった。中等部相当の勉強は義兄上が毎日教えてくれている。養女である私が決められるものでもない。…それもあるし、お義母様が義妹を産んだことで、アロイスが赤ちゃん返りしたことも大きい。ビアンカと名付けられた義妹はお義父様似のふわふわ金髪で、これまた天使のように可愛らしい。
アロイスとビアンカの教育も私が請け負った。
義兄は高等部に進んだ。今は午後からアカデミアの聴講生になっているが、殿下の家庭教師も続けているので、帰りが少し遅くなった。お疲れのようで、帰って来ると甘えん坊になる。
「おかえりなさい。お義兄様」
「疲れたよー。モニカ…」
出迎えした私にすりすりしてくる。
大型犬みたいでもあるし、アロイスみたいでもある。
ゆくゆくは殿下の側近になってほしいと王室から要望が来ているらしい。さすがお義兄様だ。
義兄が大忙しなので、義父の仕事の手伝いはほとんど私が行っている。領地のことも、義父の商会も。華国との交易も本格的に始まって、なかなか忙しかった。華国語を学んでいて、お役に立ててよかった。今はすっぽんを国内外に流通できないか試行錯誤している。この国では冬期間すっぽんは冬眠に入ってしまうので、市場に出すのに5年ほどかかってしまう。ここが問題だ。利益が出ないのなら、商売としては無理だから。いい方法を探している。
あのお茶会に参加していたご令嬢方を、義兄が一人一人紹介してくださった。みなさん、正真正銘のお嬢さま方。私のようなエセ令嬢はいない。
公爵家のエルヴェーラ様が本命らしい。王子の同じ年。まあ、妥当な線だ。ウエーブのかかった金髪に碧眼。正統派お嬢様らしい。
大穴で、ホルガ侯爵家のカトリナ様。殿下の6つ下。全然問題ない。当時は4歳だ。可愛らしい。
ゲラルト侯爵家のアリーセ様は私と同じ年。
他にも侯爵家からお嬢さまが来ていたが、5歳。
伯爵家からのお嬢さまは6歳。大きくなったら4つ違いなら十分範囲内。
もう一方伯爵家からおいでになっていたクラーラ様は婚約者がお決まりになったらしい。
そのほかにも、わざわざ婚約を解消してまで参加なさったご令嬢が6名近くいらしたらしい。
あの後も何度か王城でのお茶会は開催されたようだが、なんだかんだとモニカは…不思議とタイミングが合わず、出席できなかった。
急に領地に行くことになったり、急にお義兄様の具合が悪くなったり…。
メモをそっと閉じて…
「よっしゃ!やるぞ!」
気合を入れ直して、モニカは寝ることにした。




