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第3話 兄の憂鬱。 

「王城からモニカ宛にお茶会のお誘いが来ているんだがな?」


久しぶりにお義父様が領地から戻られて、お義母様もご機嫌です。

家族そろっての晩御飯です。と、言ってもアロイスはもうねんねしましたが。

デザートに入るころになって…お義父様が切り出した。


「まあ、あなた?じゃあ、いよいよ第一王子の婚約者選びが始まるのね?」

「ああ、そうだ。お茶会には婚約者のいない伯爵位以上の…王子に年齢的に釣り合いの取れる令嬢が呼ばれる。モニカの一つ上、だな。今回のお茶会は顔合わせ、のようなものだ。モニカが嫌だったらお父さんが断ってやるぞ?」


なんてことないようにお義父様が言う。とんでもない!待ってました!私の力の見せ所でございますね?


「僕は反対です。まだモニカは子供なのに、大人の都合を見せつける必要はありません」

義兄上が、顔も上げずに反対した。ものすごく不機嫌そうだ。でも…。


「私、参りますわ!頑張ってきます!なかなか、王城に行く機会もないですし。楽しそうですわ!」


「モニカ?」


心配そうに義兄上が私を見るが…このために養女に貰われてきたのなら、ここで頑張らなくてどうしますか!大丈夫です。任せて下さい!傾向と対策もばっちりです!ただ、婚約者に選ばれるかどうかはわかりません。選ばれなかったら…。どうやってヘルケ伯爵家にご恩を返せばいいでしょうか?


「まあ、王命だからなあ…庭を見てお茶を飲んで、美味しいお菓子を食べて来ればいいさ。王立図書館に寄ったりな?」


…王立図書館!?それはぜひ行ってみたいですね?


「まあ、じゃあモニカに素敵なデイドレスをつくらなくちゃね?いつですの、そのお茶会?」

「…6月の第二日曜日だ。」

「まあまあまあ!では急ぎましょうね!」

お義母様は楽しそうだ。自分のことのように楽しんでいらっしゃる。


相変わらず不機嫌そうに食後のお茶を飲んでいたお義兄様に、お義父様が言った。


「それと…アレクシス?」

「…はい?」

「お前に、第一王子の家庭教師をお願いしたいそうだ。学院の午後の授業は免除になる。どうも殿下が家庭教師を次々に辞めさせてしまって…もう後がないらしい。年も近いからいいだろうと…陛下直々のご命令だ。」

「は?」

お義兄様はものすごく嫌そうな顔ですが…さすがですわ!お義兄様!



*****


モニカはやる気だ。そのやる気にアレクシスは深いため息をつく。

殿下の家庭教師など、さほど大きな問題ではない。



本屋から帰ってしばらくして、モニカが夜な夜な読んで勉強している本をこっそり読んだ。いつも自分が寝る前にモニカの部屋を覗く、そのついでに。ホントに、ついでだ。

【婚約破棄から始まる騎士の溺愛】

出しっぱなしになっていたいつものメモ帳も読んだ。どうも今、メイドの間で流行っている小説らしい。


王子と婚約している公爵令嬢。

そこにまとわりつく男爵家から伯爵家に養女に来た、あざとかわいい頭悪そうな娘。

まんまとほだされた王子が、こともあろうか学院の卒業パーティーで、公爵令嬢に婚約破棄を告げて、あざとかわいい娘を選ぶ。


…んなことあるか!!!


と、僕は絶叫しそうになった。次期国王がそんないい加減なことしたら誰も支持しねえだろう!!!

僕は読んでいた本を床にたたきつけそうになって…うっかりモニカを起こしてしまうところだった…。気を取り直して続きを読む。


小説自体はその婚約破棄から始まる公爵家令嬢と騎士の恋物語がメインのようだが…モニカが丁寧に赤線まで引いて勉強しているのは…公爵令嬢を婚約破棄し、男爵家出の令嬢を選ぶまで。モニカのメモによると…


【①髪型はツインテール。首をかしげる。斜め45度。

②だってぇ、と、語尾を伸ばす。口をとがらす。

③えーわかんないですぅ、と無知が売り。胸の前で手を組む。

④なんかこの人怖ーい。と、公爵令嬢から何か指摘されたら王子の後ろに隠れる。もしくは泣く。

⑤過剰なスキンシップ。

⑥常識を知らないところがかわいいらしい。そうなんですかぁ?と言う。

⑦③と⑥を考えると、勉強はできない方がいいらしい。


※常にあげあしを取って、お相手令嬢を悪役令嬢に仕上げる?難しそう。

 …逆に…全てのことを逆説的にとらえるとなると、お利口なのでは?

※王子の前で転んでみる??難しそう。護衛騎士に切られたりしないのかしら?

 …タイミング?王子が一人の時に転んでたりしたら、怪しい人だわよね?

※お菓子やお昼ご飯を作って持って行って、一緒に食べる?え?毒見係はいないのかしら?そもそもそんな簡単に持ち込んだものを王子が簡単に口にする??

※スキンシップ?って…家族以外に?

 …お義兄様はよく私の頭を撫でてくれるけど、あんな感じ?王子の頭を撫でる???いや違うな、庇護欲をそそる?そういうことね。

……            】


モニカ?何カンガエテンノ?


幸せそうに眠るモニカを眺めてから寝るのが習慣になっていた。

ほら、だって、いきなり貰われてきたんだし、夜泣いていたりしたらどうしようと思って…。これは本当。まあ…最初の頃は父親の迷走なのかと思っていたけれど。関わらないようにしようとしてたけど…。


アレクシスはそっと本を閉じて、モニカの頭を撫でてランプを消した。




あれを実行に移すつもりか?

お茶会になんか行ったら…そんなことしたら…モニカが一番かわいいに決まっているだろう!!!


父の話に…殿下とのお茶会に妙に前のめりなモニカを眺める。

大体この子…婚約者というのが、王子の婚約者になるってどういうことなのかきちんと理解しているんだろうか?


王妃になるんだよ?


僕と…中々会えなくなるんだよ??










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