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第21話 2月。

2月になっても、義兄は家に帰れないようだ。

中旬を過ぎる頃になると、王都はピリピリし出した。近隣の王族や諸侯が続々と入ってくる。


お忙しいのだろうに、義兄が私宛にドレスを贈ってくれた。

箱をそっと開けると…緑色の綺麗なドレスだった。

「あら、まあ!綺麗なグリーンですわね!」

侍女が自分のことのように大喜びしている。


そう言えば…12月の舞踏会でも義兄と踊ったなあ…。ついこの間のことのようでもあるし、随分前のことにも思える。

そんなことも今回が最後になるのか。そう思うと、ほんの少し寂しい。トルソーに着せられておかれたグリーンのドレスは、義兄の瞳の色によく似ている。

ずっと変わらない自分の部屋だって、見慣れた窓からの景色だって…

「モニカおねぇちゃーん!」

ほら、こうやって部屋になだれ込んでくる義弟や義妹も。

そうか…本物の兄妹だったとしても、お嫁に行く前って、こんなふうに寂しいに違いない。モニカは自分で自分にそう言い聞かせる。マリッジブルー?だっけ?


はっ!そうか!この寂しさは、世に言う、マリッジブルー!

モニカは急いでポケットからメモ帳を取り出すと、”マリッジブルー”と書き込む。

少し納得した。


***


生徒会では3年生の卒業パーティーについて詰めている。生徒会長の殿下が不在なので、エルヴェーラ様が仕切っている。ここのところものすごく調子がいいようだ。カミル君は事務官試験に合格したので、今回の王城のイベントの準備に駆り出されていて、1月から学院に来ていない。


「エルヴェーラ様?何かいいことがありましたか?」


アリーセ様が今日もストレートに聞いている。

「私?うふふふふっ。これよ!」

左手をぱっと広げて見せてくれたエルヴェーラ様の薬指に…婚約指輪?

「えええええっ!いつの間に!羨ましいです!!」

アリーセ様が、心底羨ましそうな声を上げる。

「どなたと?」

にまにましたエルヴェーラ様ににじり寄るようにアリーセ様が聞く。

「大公家の、ハーロルト様よ」

「え?確か…今、中等部の2年生ですよね?」

「ええ…そうよ」


…あ…12月の舞踏会でエルヴェーラ様と一緒に踊っていらした方?

大公家の嫡男殿と言ったら、殿下の従弟?


「あの方は、殿下の妹君の婚約者候補、でしたよね?」

「……そうね」

「しかも…エルヴェーラ様の4つ下!!!」

「…そうよ」


「いやーん!素敵!」


…アリーセ様が頬を染めて身をよじる。


「なんか…エルヴェーラ様はここに行けと言われたら黙って嫁に行くタイプなのかと勝手に思っていました。秘められた恋があったわけなんですね!」

「…そう、ね。私たち、幼馴染だったの。私が殿下の婚約者候補になったときに、一度は諦めたんだけど」


そう言って微笑むエルヴェーラ様は幸せそうに見えた。

アリーセ様ではないが…羨ましい、と思う。


アリーセ様は春から王城の事務官になるカミル君が出世するのを待つことにしたようだ。学院を出たらアカデミアに進んで時間を稼ぐらしい。なるほど。一番現実的な方法かもしれない。


「そう言えば、モニカちゃんは?浮いた話無いの?」

「え?私ですか?」

アリーセ様の矛先が急に私に向かったので、驚いたが…


「私も16歳になりまして…春には義父がお相手を決めると思うので、場合によっては学院をやめることになると思います」


「え?」


「まあ…。私、あなたが一番自由に生きていきそうだって思っていましたのに。」


エルヴェーラ様がそんなことを考えていらしたとは。驚いた顔でおっしゃった。

「えへへっ。どこに嫁いでも頑張りますよ?」

「…そうね…もちろんアレクシス様はご存じなのよね?」

「それが、義兄とは全然会えていないので。でも、まあ、義父の決めることですから」

「……そう、ね。まあモニカちゃんだから大丈夫ね?」

「うんうん。モニカちゃんならどこに行っても楽しそう」

アリーセ様も励ましてくれる。


「まあ。ありがとうございます。」


そう言われれば、そんな気もする。なんとかなるか。

意外と私ってついてるし。

心残りは…ここにいるうちに、すっぽんの養殖は成功させたかったなあ。

長年の懸案事項だったが…。


「あら、そう言えばね。私たちクロディーヌ王女のために頑張ったので、褒賞が頂けるようなのよ?なにがいいか聞かれたんだったわ。」


エルヴェーラ様が場の空気を換えるように明るい声で言った。


「はい!私、領地が欲しいです!」

間髪入れずに、挙手したアリーセ様が大きな声で言った。








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