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第12話 立ち話。

「なあ、君はどう思う?」


アカデミアで講義を受けて、その足で王城の殿下の勉強部屋に向かっていた僕は、白髪のおじいさまに呼び止められた。殿下のじいやさんだ。


殿下の部屋に続く長い廊下は、臙脂の絨毯が敷き詰めてある。足音もしない。ところどころに警備の兵が控え、等間隔にランプの灯が入れられている。静かなもんだ。


出来れば気が付かない風を装って、通り過ぎたかった。


アレクシスはいろいろ諦めて立ち止まる。


「どう、とは?ブリアの姫の件ですか?」

「うーん。さすがに話が早くて助かるよ」


にこにこ笑いながら僕を足止めしたこの人は…並んで歩きだした。


「何か仕掛けてくると思いますね。しかも正妃の姫ではなく第3王女と言ったら、かなり低い身分の側妃の姫でしたよね。捨て駒、だと見るのが正論かと。」

「うん。それで?」


二人で並んで、殿下の部屋までゆっくりと歩く。傍から見たら、たまたま同じ方向に歩いているようにも見えるだろう。


「かといって、王女は王女。無下に扱えば言いがかりをつけられるでしょう」

「うん。そうだね。それで?」

「一足早く殿下の婚約者を決めてしまうという手もありますが、それをめがけてくるのがわかっていては、その手も使えません。」

「うん。そうだね。ねえ、これは秘密なんだけどね…ブリア国は王女とうちの殿下の婚姻が整ったら、ほら、あのもめている土地についてブリア国は何ももう発言をしない、という、素敵な持参金話を書簡で送りつけてきたんだよ。もちろん玉印は本物。うふふっ。」

「……」

「素直に聞いたら、この婚姻で仲良くしましょうって聞こえちゃうよね?」


いやいや…国境沿いに広がる山で良質の鉄鉱石が見つかって以来の両国のにらみ合い。かつては争いごとも頻繁に起きた。今のところは両国とも様子を見ている態だが。文書一通で解決できるなら、こんないいことはない…が…。


「こんなことを申し上げていいかどうか…」

「うん。いいよ」

「その王女は、このゲルト国内で…殺されるんでしょうね。火種どころか…放火みたいなもんです。婚約者になってもならなくても、殺す気でしょう。この国内でブリアの姫が、死んだ、と言うことが先方さんとしては大事ですよね?」

「それは困るよねえ」

半ば…楽しそうな口調で、じいやさんが合いの手を入れる。


「で?」


ひとつため息をついて、僕がそれに答える。


「殿下の婚約者の正式決定を伸ばして…その方を観察できるように留学の名目で学院で保護するのがよろしいかと。その間に不安材料を排除する。外部の者が入れない学院は割と安全です。王城に置いておいてはかえって危険ですからね。幽閉されたと騒がれかねませんから。ブリアの間者がいないとも言い切れませんしね。」

「そうか。うん、そうしようか」


殿下の部屋の前でアレクシスが振り返ると、もういらっしゃらなかった。


はあああっ…。早く帰りてぇ。


…早く帰って、モニカで癒されたい。


アレクシスは今来た長い廊下をぼおっと眺めながら、一つため息をついた。









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