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第11話 テオドール殿下。

分厚い貴族年鑑を片手に、アリーセ様が生徒会室に現れた。授業中にも見ていた。


これは…義兄が言っていた、あれ、を探しているのね?


モニカはカミル君をちらりと見る。愛おしそうな眼差しでアリーセ様を見ている…。はいはい。ご馳走様。でも、前途多難なのよね。


「殿下。どなたか養子を探していらっしゃる方はいませんか?」

ページをめくっていたが、直接聞いた方が早いと判断したんだろう。アリーセ様が書類にハンコを押していた殿下にストレートに聞いた。


「なんだ…今度は養子に行く気か?」

「そうなんです。その方が早いかなあ、と思いまして」


はーっとため息をついて、殿下が立ち上がって水槽の金魚に餌をやっている。

どうもストレスが多いらしく、ついに、心を落ち着けるために、と殿下が生徒会室にペット(?)の金魚を持ち込んだのは先週のこと。


「アリーセ様?それよりもぉ、功績を上げて領地と爵位を貰う方が早いかもしれませんよぉ?」

モニカがそう言うと、アリーセ様が目を大きく見開いて喰いついてきた。

「そうね!モニカちゃん、何をすればいいかしら?」

「何…なんでしょうかね?」


黙ってやり取りを聞いていらしたエルヴェーラ様がぽつりと言う。

「そうですわねえ、領地付きで爵位となると…殿下の暗殺を止めるとか?」

「……」

エルヴェーラ様がにこやかなので…冗談なのか本気なのか判断に迷う。

エルヴェーラ様はアリーセ様の一件以来、私に対しての態度が少し柔らかくなった、気がする。


「はあああっ…お前ら…不敬だぞ?なあ?」

金魚に向かって同意を求める殿下も、どうかとは思う。


「そもそも、君たちは私の婚約者候補だという自覚はあるのか?数多の希望者の中で家柄と才覚、で選ばれたというのに…。普通の令嬢なら泣いて喜ぶところだろう?」


…泣いて?喜ぶ…のか?


「あ、そのことなんですが、」

アリーセ様が小さく挙手して言う。

「私のことは表向きはそのままで、外してください。理由はご存じですものね?エルヴェーラ様にお任せいたしますので。」

アリーセ様が貴族年鑑をパタリと閉じる。

「品位、仕草、佇まい…全てにおいて殿下の婚約者はエルヴェーラ様がふさわしいと思います。しかも殿下とは小さいころからの幼馴染でいらっしゃるんでしょう?いいですね、幼馴染婚。羨ましすぎますわ!」


「……幼馴染、ねえ…」


金魚に餌をやっていた殿下が、ハンカチで手を拭きながらぽつりとつぶやく。

アリーセ様の提案を聞いていらしたエルヴェーラ様がほんの少し困った顔で答えた。


「…まあ。ありがとうございます。ただ、殿下の婚約者候補が秋にもう一方お越しになることになりまして…その方に決定するかと。」


「え?6歳年下のカトリナ様ですかぁ?今…10歳では決めかねますよね?」


私がそう言うと…殿下がまた深々とため息をついた。


「隣国、ブリアの第3王女だ。9月に…私の誕生祝にこの国に来ることになった」

「……」


ブリア国か…これは殿下が金魚に癒しを求めたくなるのも納得するしかないか。


表立っては平和に見えるが、ここゲルト国とブリア国の国境付近には今は中立地帯となっている土地がある。どちらの国も領土権を主張していて…平行線のままもう何十年もにらみ合っている。もちろん、両国は経済レベルでは交易もあるし、人の出入りもあるけれど、どうもその一点だけが火種になりかねない。ブリア国は好戦的な国柄だ。今のところ、均衡を保ってはいるが。


「あ、でも、殿下とその王女が結婚することになったら…和平がしっかりした物になるのでは?」

アリーセ様が、ポンッと手を打ってそう言うと、

「ああ。普通ならそう考えるよな。来るのは側妃の姫だ。同じ年の正妃の姫もいるんだがな。なめられたもんだなあ」

「……」


アリーセ様の発言に返した殿下が、遠い目をした。


殿下の金魚が、ぽちゃん、と跳ねた。








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