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第1話 貰われてきた男爵令嬢について。

「…やっぱりねえ。あの無駄なことが嫌いな旦那様が、娘が欲しいなんて理由で養女を取るなんておかしいと思っていたのよ。しかも男爵家からでしょう?」

「でしょ?やっぱり、抜け目がないっていうか…先が見れるって言うか…旦那様はさすがだわね。いよいよ王子様の婚約者探しが始まるんでしょう?今、どこにいってもその話だものね」


(ん?これは間違いなく私の話題だわね?)


…と思いながら、生後半年になる義弟をおんぶして寝かしつけていたモニカは子供部屋のカーテンの陰から出るタイミングを逸してしまっていた。

外は穏やかな春の景色が広がっている。義弟のアロイスにその景色を見せながら、お話をして…ようやくさっき眠ったところだ。


「まあ、ここの商会も王家と縁づけばまた大きくなっちゃうわね?」

「旦那様が華国と本格的に交易したいらしいと聞いたから…なるほどいいタイミングよね?」


(なにが?)

モニカは二人で話しながらも手際よく掃除を進めているらしいメイドたちの話に聞き耳を立ててしまった。


「モニカお嬢さまもちゃっかり者だし…あのアレクシス様を手なずけたしねぇ…ねえねえ、あの小説読んだ?」

「読んだわ!あれでしょう?【婚約破棄から始まる騎士の溺愛】」

「いいお話だったわよねえ…婚約者だった公爵家令嬢の女主人公が悪役令嬢に仕立て上げられたと思ったら、ぽっと出の男爵令嬢に王子様を奪われて…まさによね?」


話が盛り上がったあたりで、子供部屋の掃除が終わったらしく、替えたシーツを持ってメイドたちが楽しそうに話しながら部屋を出て行ってしまった。

モニカは持ち歩いている小さなメモ帳を取り出すと、忘れないうちにメモを取る。


【婚約破棄から始まる騎士の溺愛】


こういう時におんぶは便利だ。両手が空くから。

義弟はよく眠っている。ホカホカした背中から寝息が聞こえる。


先ほど乳母から泣きじゃくる義弟を預かって寝かしつけていた。

小さな子供は誰かのぬくもりを感じるとおとなしくなるし眠くなる。

高位貴族ではおんぶも添い寝もしないらしい。それを聞いた時も驚いたが…。


うちは子沢山の男爵家、と言っても、村長と呼んだ方がいいような家だった。小さい領地に小さい家。子供は7人。いつも誰かをおぶって家の仕事を手伝っていたし、いつもぎゅうぎゅうの寝床に寝ていた。嫁に行った姉さんたちもたまに顔を出してくれる。


一番下に弟が生まれて、跡取りの予定だった一番上の姉は隣の子爵家に嫁に行った。

「いい?礼儀作法は覚えておいて損はないわ。」

そう言って、淑女のための礼儀作法、と言う本をくれた。


二番目の姉は商家に嫁に行った。

「大事なのは読み書き計算よ!女だからって頭空っぽだと苦労するからね?」

そう言って分厚い算数の本をくれた。


三番目の姉は侯爵家の侍女に出た。

「本を読みなさい!この世で大事なのは情報よ!世渡り上手が一番だからね?」

そう言って小さなメモ帳をくれた。


そして…四女だった私はどうしたことか…とてもとても遠い遠縁のヘルケ伯爵家に養女に貰われてきた。当時7歳。


ヘルケ伯爵家では義父にも義母にも、二つ上の義兄にもかわいがられた。…もう子供は諦めていたらしい義両親に、養女に来て3年目にこの背中に眠っている義弟が生まれた。お義母様とお義兄様によく似た、銀色の髪に緑の瞳。可愛らしいったらない。


これを機に、よくあるおとぎ話のように私はメイドの仕事でもするようになるんだろうと思っていたら…そんなことは全くなかった。


十分すぎる衣食住。

商売をやっている義父は義兄と一緒にあちこちに連れ出してくれて商売のノウハウを教え込んでくれたし、義母に礼儀作法を習い、勉強は義兄がつききりで教えてくれる。義弟もかわいい。


なぜ?と、思ったことがないわけではないが、まあいいか、と思っていた。


(理由があったのか…)








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